アナログ人間の独り言~阪神タイガース・映画・サブカルチャー・旅行等々
私が小学校に入学した頃、親に初めて買ってもらったSF小説が当時集英社から出版されていた「ジュニア版・世界のSF」の中の一冊、「なぞの宇宙物体X」でした。
そう、あの映画「遊星からの物体X」の原作「影がゆく」のジュブナイル版翻訳本です。

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こんなものを初めてのSF本に選んで子供に与える親も親ですが(多分よく判らなかったのでしょう)、読んだ当人はえらいトラウマになり、ホークス版「遊星よりの物体X」なんか観た事もないのに、やたら夢の中で物体Xに襲われたものでした。

この「ジュニア版・世界のSF」、全20巻という小ぶりながらもそのセレクトセンスは当時の全集物の中でも群を抜いており、以降も随分お世話になりました。
「夜明けの惑星(創世記)」「地球さいごの日(地球最後の日)」「タイタンの妖怪(人形つかい)」「火星人襲来(宇宙戦争)」「アンドロメダ星雲」「宇宙の群島(宇宙島へ行く少年)」「宇宙船ビーグル号の航海」「銀河パトロール隊(レンズマン)」「滅びゆく銀河帝国(ファウンデーション)」「火星のプリンセス」「消えていく海(海が消えた時)」「地底の冒険(地底旅行)」…。
後に完訳版を読む事になっても未だに初めて読んだこのシリーズでの印象が強く、このジュブナイル版のストーリー・文体こそが私にとってのオリジナルとなってしまっています(訳者も錚々たるメンバーでした)。
その中の一冊、シリーズ1刊目に「宇宙大作戦」という作品がありました。
ジェームズ・ブリッシュによる「スタートレック」オリジナルシリーズのノベライズで、早川書房から出版されていた「宇宙大作戦・1」の子供向け訳本でした。

23世紀、惑星連邦の一員として理想的な繁栄を続けている地球。
人類未踏の宇宙を調査する為、最新鋭の巨大航宙艦エンタープライズは数百名のクルーを乗せて出発した。
彼らは未知の生命・文明・現象に遭遇して行く…。

アメリカのテレビシリーズ「スタートレック」は、日本ではまず第1シーズンが「宇宙大作戦」のタイトルで日本テレビ系列にて放送され、その後数年のブランクを置いてフジテレビ系で第2シーズン以降が放送されました。
そしてフジテレビでの放送の際は、編成上1話を前後編30分番組に分割、子供番組として「宇宙パトロール隊」のタイトルで放送されます(ただ吹替え内容は大きな変更はなく、メインキャストもほぼそのままでした)。
集英社の本を買った頃はまだフジテレビでの放送再開前だった筈なのですが、私はテレビシリーズとしてのこの作品の存在をそれ程知らず、小説でのスケールの大きな世界観と紹介ページでの白黒スチールから、本当にこんな内容の作品が映像化されたのか疑問に思い、「いつか観てみたいなあ」と憧れる大人のSF番組になって行ったのです。

私が小学校高学年になると、「宇宙大作戦」が関西テレビの深夜帯で繰り返し再放送されるようになります。
さすがに小学生では深夜番組の鑑賞は無理だったのですが、夏休みに母親の実家がある小豆島に遊びに行った時、何と平日昼の3時から「宇宙大作戦」が放送されているではありませんか!
初めて見た「スタートレック」、そのエピソードは第47話「単細胞物体との衝突」。
一貫したポリシーで統一された未来世界美術、超光速航行時の宇宙空間描写、光学撮影の多用による素晴らしい特撮。
子供には少し難しい内容でしたが、カラーで観たその映像は実に美しく、それまで抱いていたイメージを遥かに凌駕するビジュアルに衝撃を受けたものです。
そして子供心にも、シャトル「ガリレオ」で巨大な極彩色の宇宙生物に突入して行くスポック副船長の姿が心に残りました。

小学校6年の時、関西テレビは第1シーズンのみ日曜正午から再放送してくれました。
この時が初めてレギュラーで「宇宙大作戦」を観た体験となったのです。
中学生になってからは深夜帯の再放送も見れるようになり、その頃から関西テレビの再放送もほぼエンドレス化し始め、私はどっぷりその世界に浸かって行く事になります。
以後、関西テレビは「新スタートレック(TNG)」以降のシリーズ国内放送をリードし続けるという実績を作り、それは最終作「エンタープライズ」まで続きます。

とにかく主役三人のキャラクターが秀逸でした。
船長のカーク、皮肉屋の船医マッコイ、宇宙人=地球人のハーフで冗談の通じないスポック副船長。
彼らの繰り広げる人間ドラマは作品のSFプロットよりも遥かに面白く、見応えのあるものでした。
傑作エピソードとしても名高い「危険な過去への旅」を上げるまでもなく、優秀なSF作家達によって描かれた脚本は現代でも観る者を唸らせます。

中でも感情の無いバルカン人と地球人のハーフ・スポック中佐は非常に魅力的なキャラクターでした。
主役はあくまでカーク船長ですが、感情を否定し論理を重んじるが故、自身の地球人の血筋の由来と人間性との対峙による葛藤等、スポックの存在感は作品中でも圧倒的なものがありました。
演じるレナード・ニモイ氏の魅力、そして吹替えの久松保夫氏の感情を押し殺した声質共々、実に見事なキャスティングであったと言えるでしょう。

レナード・ニモイ氏は他にも「スパイ大作戦」にもレギュラー出演、映画版「スタートレック」シリーズでは遂に監督業にも乗り出します。
監督2作目である「スタートレックⅣ・故郷への長い道」は同シリーズでは定番である時間旅行ネタをテーマに、制作費は抑えながらも地球の危機と環境保護を上手く扱い、結果的にはシリーズ最高傑作の評価を得るまでになりました。

一度は俳優業引退を宣言しながらも復帰、スタートレック最新作にもスポック役で出演されていました。
それだけに急な訃報には本当に残念でなりません。
ご冥福をお祈りします。


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【2015/03/01 01:24】 | 映画
【タグ】 スタートレック  スポック  レナード・ニモイ  宇宙大作戦  
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