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知る人ぞ知る、東映特撮監督・矢島信男氏の自伝であります。

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出るか出るかと思って待ち望んでいた矢島監督のヒストリー本が、それも御大自らの著作にて出版となりました。
これまでベールに包まれて来た東映特撮の舞台裏、矢島氏の演出意図、そしてスタッフ達のエピソードが膨大な資料と画像と共に紹介されています。

常に日本特撮界の中心であり続けていた東宝(円谷)特撮に対し、徹底して本編の補完としての演出に拘って来た矢島演出による東映特撮
松竹から東映へと渡り歩き、映画界入り当初から特撮演出を志していた矢島氏の仕事は、大予算を前提としそれ自体が売りであり会社の看板であった円谷特撮とは対極にあるもので、徹底した効率化と費用対効果に対する妥協が根底にありました。
東宝撮影所で円谷英二の一番弟子でありながら松竹へ引き抜かれた川上景司に師事。当時の松竹特撮課は東宝から移籍したスタッフが多く、矢島氏の技術の源流がやはり東宝特撮だった事が判ります。
松竹時代は公職追放中の円谷英二との交流も多く、事特撮に関しては技術交流で会社の垣根など皆無であり、自由にノウハウが共有出来たという事ですが、それも各社の社風により技術を生かせる企画が有るか無いかで随分待遇も変わった事だと思います。
東映に移籍後はとにかく要求された映像を効率良く提供する事に徹し、東京・京都の二大撮影所を股にかけて膨大な数の作品を手掛けます。
そしてテレビ番組全盛時代の到来と特撮研究所の設立。
同時期に請け負った他社作品の仕事。特に円谷プロの仕事(「ミラーマン」「ジャンボーグA」「ウルトラマンタロウ」「ウルトラマンレオ」)においては同社へ与えた影響と同時に、大予算での仕事には随分と刺激を受けた様子。
やがて円谷プロ出身の佐川和夫氏を迎えて初期戦隊シリーズの特撮を担当する事と併せ、この他社での仕事は最新技術の特撮研究所への導入と人的コネクションの形成に大いに役立ったと思われ、以降の戦隊シリーズ等に成果が生かされて行きます。

矢島氏の転機となった作品は「宇宙からのメッセージ」だったとの事。
「スターウォーズ」公開を控えての即興企画であったこの作品は、東映らしからぬ特撮を看板にした超大作であり、同時期に公開された東宝の「惑星大戦争」よりも明らかに気合の入ったものでした。
以降も角川や松竹の大作を次々と手掛け、東映のみならず様々な撮影所での体験(ゴジラ演出の話まであったそうな)、その膨大な作品数と内容の多様さは、最早東宝特撮と相対するもう一つの日本特撮史と言えるでしょう。

矢島氏の設立した特撮研究所は、現在大泉の東映東京撮影所内に籍を置き、東映作品を中心に特撮映像を提供しています。
かつては円谷プロや東宝映像が大いに腕を振るい、高い技術を誇っていたこの分野。
今では東宝を含む各大手プロダクションが挙って特撮研究所へ仕事を委託、あるいはその若いスタッフ達が各社で仕事を請け負っています。
その理由は創立以来徹底されて来た効率化によるコストパフォーマンスの良さと、長い年月にわたって培われて来た高い技術にあるのでしょう。
それはコスト度外視で映像に拘り続け、遂には番組の自社製作を始めた円谷英二とは全くスタンスが異なる、矢島信男氏の特撮屋に徹したフィルモグラフィを見れば納得出来ます。

最後に、本著作において劇場作品「宇宙からのメッセージ」が大きく取り上げられていましたが、もう一つ矢島氏の作品歴や特撮研究所の歴史においてテレビシリーズ「大鉄人17」の存在も大きかった筈。
特撮番組不毛の時代に「巨大ロボット」物の決定版として製作されたこの作品は、特撮研究所にとっても常時赤字が計上されたであろう筈の迫真の映像が展開され、後のスーパー戦隊シリーズの基礎にもなった記念碑的作品であります。
残念ながら矢島氏によって「大鉄人17」について語られた部分は余りに少なく、これが残念と言えば残念です。
いつか関係諸氏によるメイキング本でも出れば嬉しいのですが。
また機会があればこのブログでも取り上げたいと思います。


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【2014/12/07 13:10】 | 特撮
【タグ】 矢島信男  円谷英二  東映  東宝  松竹  円谷プロ  佐川和夫  特撮  特撮研究所  
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アームストロング
「宇宙からのメッセージ」は見たことはありません。しかし、登場する宇宙船や戦闘機の模型はすごく精密にできていてカッコイイです。

戦闘機で思い出したのですが
映画「風立ちぬ」は観られましたか?


Re: タイトルなし
aki
こんばんは、アームストロングさん。
コメント有難うございます。

宮崎駿の「風立ちぬ」は観ました。
宮崎氏の飛行機好きが非常によく伝わって来る映画でしたが、過去の作品に比べて派手な飛行シーンも無く、特にアニメとして作られなくても良かったのではと思ったりもしました(それでも大正時代の再現は凄かったです)。
来週、テレビ初放送ですね。
観直すとまた新しい発見がありそうです。

また遊びに来て下さい。

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コメント
この記事へのコメント
「宇宙からのメッセージ」は見たことはありません。しかし、登場する宇宙船や戦闘機の模型はすごく精密にできていてカッコイイです。

戦闘機で思い出したのですが
映画「風立ちぬ」は観られましたか?
2015/02/12(Thu) 23:55 | URL  | アームストロング #TQfDrAoI[ 編集]
Re: タイトルなし
こんばんは、アームストロングさん。
コメント有難うございます。

宮崎駿の「風立ちぬ」は観ました。
宮崎氏の飛行機好きが非常によく伝わって来る映画でしたが、過去の作品に比べて派手な飛行シーンも無く、特にアニメとして作られなくても良かったのではと思ったりもしました(それでも大正時代の再現は凄かったです)。
来週、テレビ初放送ですね。
観直すとまた新しい発見がありそうです。

また遊びに来て下さい。
2015/02/13(Fri) 22:24 | URL  | aki #TMInTtVg[ 編集]
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