アナログ人間の独り言~阪神タイガース・映画・サブカルチャー・旅行等々
1982年秋、世界は死滅した。南極大陸に863名を残して…。

小松左京の長編SF小説を原作にした角川超大作映画です。
もう30年以上も昔の作品なのに、今でも頻繁にケーブルテレビでは放送されています。

1983年12月、1隻のイギリス海軍原子力潜水艦が東京湾へ進入する。
原潜は決して浮上することなく、潜望鏡と飛行カメラで市街地を観測、大気サンプルを採取し分析を行う。
市街地には屍骸が散乱し、生きて動くものは何一ついない。
大気分析の結果は陽性。脅威は依然として健在であった。
世界を滅ぼした謎の疫病は、僅かに生き残った人類を無菌大陸である南極に閉じ込め、その復活を拒み続けているのである。

私が初めて原作を読んだのは中学生の時。
小学生の時、勢いで読んだ「日本沈没」よりまだ理解が早かった様に思います。
そして高校生の時、SF雑誌「スターログ」で知った映画化の情報。
当時、映画界不振の中にあって飛ぶ鳥を落とす勢いだった角川映画による超大作映画化。
紹介ページに掲載された数多くのイメージボードは、文庫版で見慣れた生頼範義氏によるイラストそのまま。
もともと角川映画にはそれ程興味が無かった私でしたが、これは期待をするなと言う方が無理でしょう。

角川春樹氏がパブリシティとのメディアミックスによる映画界進出を思い立ったのは、光文社と東宝による「日本沈没」の大ヒットがきっかけだったとか。
当初、角川氏が映画製作に乗り出すに当たり、様々な人の意見を聞いたその中の一人淀川長治氏からの「母子物にしなさい」という助言が効いたのかどうか知りませんが、第一作目の「犬神家の一族」が大ヒット。
大規模なCM広告等による話題先行型の戦略により角川作品は次々とヒットしますが、「復活の日」の映画化は当初からの角川氏の大きな目標でもありました。

監督は東映のエース深作欣二
日本沈没」の森谷司郎監督も候補にあったそうですが、当時角川映画は「犬神家の一族」こそ東宝で配給されましたが以後の作品の殆どが東映配給。
結局出来上がった作品も非常に東映色(スタッフ・キャスト)の強い映画になりました。
深作氏は以後、「魔界転生」「鎌田行進曲」「里見八犬伝」といった角川大作を手掛けて行く事になります。

この作品の大きな収穫の一つに、深作監督と撮影の木村大作氏の出会いがあります。
東宝・黒澤組生抜きのカメラマンである木村氏が参加した事は、この作品にとってとても幸運な事であったと思います。
加えて深作組の常連カメラマンとして以降の活躍は周知の如くで、斬った張ったの深作演出に更なるダイナミックさと繊細さを付加する事に成功したと言えるでしょう。
木村氏はおそらくこの映画の南極ロケ(世界初!)に釣られて参加したのではと思うのですが、木村氏の撮影による南極の映像は実に素晴らしく観る者を圧倒しました。
角川映画特有の金に物を言わせる話題先行の南極ロケ敢行でしたが、結果としてこの作品の価値はこの南極ロケによる木村氏撮影の映像によるところが大なのではないでしょうか?
小松氏がかねてから映画化不可能としていたこの原作の映像化において、実際に南極ロケまで行った事に自身えらく驚いていましたが、仕上がった映像の素晴らしさについてもよく言及されていました。
どう考えても普通には撮影出来ないカメラ位置からの映像、真っ白な氷原の中にぽつんと浮かぶ小さい黒い潜水艦…。
どれも実際の南極でなければ表現出来ない、本物の迫力を持った映像でした。
この映画の印象的な画で、ポスターにもなった夕日をバックに立つボロボロの草刈正雄の人影がありますが、木村氏はまるでPVの様にスタイリッシュな画像を立て続けに見せてくれます。
小松氏にすれば原作者冥利に尽きるというものでしょう。
一方特撮も木村氏自らが演出されたそうですが、「日本沈没」程大掛かりな特撮シーンはありません。

角川映画は「復活の日」公開に先立ち、その年の正月映画で前哨戦とも言うべき作品「戦国自衛隊」を同じ東宝配給で公開します。
これも東映色の濃い作品でしたが、非常にヒットしました。
内容的には観た当時、「やっぱり角川映画は…」と思わせるような薄っぺらな感じを受けましたが、理屈抜きに楽しめる作品ではありました。
復活の日」のCMが大量に流れ始め世間で盛り上がりを見せ始めると、高まる期待と共に一抹の不安も過ぎりました。
細菌によるデザスター映画という「日本沈没」に比べると地味な映像になりかねないテーマに、アクション中心だった深作組が対応出来るのか?
たった数ヶ月で社会が崩壊し世界が滅びていく様をどの様に描くのか?
そして世界崩壊後の南極大陸の描写と主人公の大陸縦断をキチンと映像化してくれるのか?
何よりも人の命を救う筈の医学が人類を滅ぼし、世界を滅ぼす為に造られた核兵器が人類を救うという皮肉をどういう風に表現するのか?

私はロードショー公開時、大阪梅田の「阪急プラザ劇場」でこの作品を観ました。
そして観終わった後の感想は、満足と不満足が半々で入り乱れている状態でした。
予告編でも観た主人公の一人旅は、期待以上の素晴らしい映像でした。
一方で丁寧に撮られている様である世界崩壊の過程は、まだまだ物足りず説得力に欠けるという感じを受けました。
仕上がった作品は時間的に南極を舞台にしたシーンにかなりウエイトを置いている様に思えるのですが、もう少し大災厄の前後の比率を変えても良かったのではと思います。
また原作の医学的テーマ・皮肉も映画的には表現が難しかったのか、最終的なワクチン開発も作中ではサラリと流されているに過ぎません。
私的には脚本=橋本忍、監督=森谷司郎がベストだった様に思いましたし、今でもその思いは変わりません。
でも「宇宙からのメッセージ」と同様、この作品も深作SFとして大好きな映画であります。

当時、毎日放送は土曜の夜10時から、角川映画のヒットにあやかって「横溝正史シリーズ」「森村誠一シリーズ」といった角川文庫作家達の原作ドラマを放送していました。
…「小松左京シリーズ」を密かに期待していたのは私だけでしょうか?


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【2014/03/07 00:31】 | 映画
【タグ】 小松左京  角川文庫  角川春樹  復活の日  日本沈没  深作欣二  木村大作  森谷司郎  
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