アナログ人間の独り言~阪神タイガース・映画・サブカルチャー・旅行等々
ファミリー劇場で1974年版テレビドラマ「華麗なる一族」の放送が始まりました。
映画のイメージが強過ぎてこの山村聡主演のドラマはあまり印象に残ってないのですが(夜遅くの放送でしたし、再放送も殆ど無かったと思います)、1時間全26回に渡って製作された番組は映画版やキムタク版よりも原作に忠実に映像化されているのではとこれからの放送が楽しみです。

山本薩夫監督の東宝配給映画「華麗なる一族」は、確か「日本沈没」の直後に公開された作品だったと思います。
考えてみればこのような重厚な超大作が矢継ぎ早に公開されていた事自体凄いと思いますが、斜陽とは言え映画産業のシステムにまだまだマンパワーが残っていた時期でもあったのでしょう(両作品の音楽を担当した佐藤勝氏も大変だったのではないでしょうか?)。
この作品、さすがに小学生だった私は劇場では観ておらず、水曜ロードショーでの前後編2週放送で初めて観る事が出来ました。
当時、水曜ロードショーでは同じ山本監督の「戦争と人間」3部作の放送も積極的に行っており、こちらも私はテレビで全作を鑑賞しました。
山本薩夫氏の代表作と言えば、まずこの「戦争と人間」が上げられるようですが、残念ながら未完で終わっており、やはり代表作の一つとされている山崎豊子原作「白い巨塔」「不毛地帯」も結末まで描かれていません(もっともこの2作はそれぞれ大映と東宝が続編を山本薩夫に撮らせるという事で完結させる予定はあったらしいのですが)。
一方でこの「華麗なる一族」は一応原作のラストまで描かれており、完結した作品としては最後まで安心して観る事が出来ます。

神戸を拠点に関西財界に君臨する「万俵財閥」。
その中核企業である「阪神銀行」のオーナー頭取である万俵大介と彼の一族がこの物語の主役である。
押し寄せる金融再編成の波の中、大手都市銀行への吸収合併という危機感を背景に、「小が大を食う」銀行合併を仕掛ける万俵大介。
親子の泥沼の様な葛藤と政財界の様々な人々の思惑を織り交ぜながら、グループ企業「阪神特殊鋼」の高炉爆発事故を契機に物語は一挙にクライマックスへなだれ込んで行く。

主役の大介役を、映画版は佐分利信、ドラマ版は山村聡が演じています。
どちらも都市銀行頭取の貫禄と財界に君臨する怪物性を演じ抜かれておられますが、山村氏はたまに見せる笑顔に人柄の良さがチラホラ見え隠れしており、やはり山本薩夫監督作品「傷だらけの山河」の電鉄会社社長役の時もそうでしたが、然程憎々しくは感じません。
一方の佐分利氏は居ながらにして相手を威圧する迫力もさることながら、長男鉄平に対する冷酷な態度は山村氏の比どころか原作のイメージすら凌ぐもので、人を巻き込みその犠牲の上に財を成す独裁的リーダーを体現しています。
ちょっとした微笑にも腹に一物有りといった感じで、油断も隙もあったもんじゃない雰囲気満々の流れの中、最早見ている者にはうかうかと騙される側の二谷英明や西村晃に対して同情すら湧きません。
更にその怪物を捕って食おうとする政治家や官僚を冷徹に演じる小沢栄太郎、田宮二郎、平田昭彦も凄いのですが…。

モデルになったのは神戸・岡崎財閥と岡崎家が創業した神戸銀行と言われており、阪神特殊鋼破綻は姫路の山陽特殊製鋼倒産がその原型と言われています。
神戸銀行はその後実際に太陽銀行と合併して太陽神戸銀行となり、更には三井銀行と合併して太陽神戸三井(さくら銀行)に、今世紀に入ってからは住友と合併して三井住友銀行というメガバンクへ変貌を遂げましたが、遂には行名からその痕跡すら無くなってしまいました。まさに物語の主人公達の末路を暗示したような顛末です。

旧岡崎邸は原作や映画・ドラマのように岡本の山手ではなく、現在の須磨離宮公園にありました。
阪神高速を挟んだ東側の植物園がその敷地だった部分で、残念ながら威容を誇った洋館は阪神大震災で倒壊してしまい、現在は庭園にかつての面影を残すのみです。
万俵家があったとされる岡本・天王山は多分今の素盞鳴神社を中心とした広大な山林の事でしょう。
実際に岡本~御影から海岸の方を見下ろせば、原作の様に神戸製鋼所の巨大な高炉や火力発電所の聳え立つ煙突を擁する灘浜臨海工業地帯を一望に出来ます。
因みに同じ東灘のウチの近所(阪急御影駅前)には旧大林邸(大林組)という大きなお屋敷があり、ここで「華麗なる一族」の映画やドラマのロケ撮影が実際に行われました。

映画版を監督した山本薩夫氏はかなり左翼的な思想の持ち主で、戦後の東宝争議の際も組合側で中心的な役割を果たしました。
またその作風も反体制的な色合いが非常に濃く、社会派巨匠として知名度を上げて行きます。
ただ、重厚なドラマ作りの手腕は見事なもので、硬いテーマにも関わらずどの作品も娯楽超大作として完成しており、故に一連の山崎豊子作品や既にロマンポルノ路線に突入していた日活の「戦争と人間」3部作を任せられるに至ったのでしょう。
華麗なる一族」に関して言えば配給収入だけで5億弱、この年の邦画ベスト4位にランクされ、莫大な製作費が掛かっていますが興行的にはヒットしたようです。

映画後半部分の最大の山場である溶鉱炉爆発の特撮シーンですが、映画が東宝の子会社だった芸苑社の製作だったという事もあり、所謂「東宝特撮」ではなく円谷プロの流れのスタッフによる日本現代企画の撮影となっています。
ミニチュアと合成によるオーソドックスな数カットなのですが、かなり大きなセットを組んだ様で結構な迫力があります。
実際、家の近所であんな爆発があったらえらい事でしょうし、石屋川か都賀川らしい辺りを救急車が走り回るシーンは、住んでいる人間にとってかなりリアルな体感になります。

残念ながらキムタク版のドラマは、全話観る事が出来ませんでした。
上海ロケや豪華な美術等、非常に製作費の掛かった番組だとは思いましたが、キャスティングや画作りにかなり違和感を感じましたので…。
大介役が映画版の四々彦君・北大路欣也で、別に迫力が無いという訳ではありませんが、佐分利信山村聡の怪物ぶりにはとても敵いませんでしょうし…。

最後に…この映画を観て(原作を読んで)、鰻重を食べたくなるのは私だけでしょうか?

関連記事
スポンサーサイト

【2013/01/11 01:11】 | 映画
【タグ】 山崎豊子  山本薩夫  華麗なる一族  佐分利信  山村聡  円谷プロ  佐藤勝  
トラックバック(0) |
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿
URL:

Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック