アナログ人間の独り言~阪神タイガース・映画・サブカルチャー・旅行等々
明けましておめでとうございます。
どうか今年は穏やかな良い年になりますように…。

年明け早々、ケーブルテレビでとんでもない映画を観てしまいました。
幻の湖
数年前、DVDが発売されるまで、文字通り「幻の映画」だった作品です。

1982年、東宝は創立50周年を迎えるにあたり、様々な記念事業を行いました。
「東宝半世紀傑作フェア」と題して開催された名作のニュープリント上映会は大変好評で、ビデオソフトもまだまだ充実していなかった当時、特に黒澤作品とクレージーキャッツのプログラムは大人気だったそうです。
しかし、実は最も人気を博したのは「ゴジラ」「ラドン」「モスラ」の3本立てを実現させた、特撮映画のプログラム。同時上映された特撮予告編集もさることながら、この時の勢いがそのまま84年のゴジラ復活へ繋がったと言っても良いでしょう。
自分的には「日本の誕生と最期を特集した」とする、「日本誕生」と「日本沈没」の2本立ても入れ込んで百又ビルへ観に行ったのですが、こちらはそれ程人は入っていませんでした。

一方、肝心の「東宝創立50周年記念映画」ですが、この時期に東宝系で上映されていた邦画は片っ端からこのタイトルを被せられており、逆に企画力の貧困さと製作体制の弱体化を知る事になりました。
「海峡」「ひめゆりの塔」「南十字星」といった大作もそのラインナップに加わっており、実際に観たいと思ったのは森谷司郎監督の「海峡」位だったのですが、他に一際異様なオーラを放つ作品がもう一つありました。それが「幻の湖」だったのです。
まず注目したのはあの橋本忍が、製作・監督・脚本・原作をやっているという事。
「海峡」の森谷司郎監督とは、「日本沈没」「八甲田山」で組んでメガヒットを飛ばした名脚本家であり、黒澤作品を始めとした数多くの日本映画の名作の脚本を担当して来た人です。これが面白く無い筈がありません。
同じ頃、あるスポーツ紙の芸能欄に、最近東宝撮影所で撮影された「幻の湖」のラストシーン、宇宙飛行士が地球と対峙するシーンの苦労話記事が掲載され、それを読んで「?」と思いました。
幻の湖」とはどんな映画だ?SFなのか?特撮映画なのか?
当時、本格的な東宝特撮は絶えて久しく、この記事は私にとってちょっと注目に価しました。
しかしながら、事前の作品解説や批評を読む限りでは、何が何だかイメージの全く掴めない映画であり、かなり難解な作品だという事だけは何となく伝わって来ます。
ストーリーは、愛犬を殺された風俗嬢の復讐劇と、戦国時代の伝説に纏わる秘話が絡む壮大な話だとの事。宇宙の話など特に触れられておらず、その内あの記事は何かの間違いだったのかなと思い込んでしまうようになったのです。
それどころか公開前から何となく爆死臭がぷんぷん漂い始めており、どうやらこれはトンデモ作品なのではという気がして来ました。批評の中には「大ヒットか、大コケか」という予測もされており、大方の予想は「大コケ」だったようです。
極め付けはオンエアされたテレビCM。
髪を振り乱した狂女が包丁を片手に土間から飛び出し、叫びながら男を追いかけるというそれだけの15秒スポット。
何が何だか、さっぱり判りません。

公開されて直ぐに観に行かなかったのがアダとなり、気が付いたら僅か1週間で上映が打ち切られていました。
莫大な製作費が費やされたにも関わらず、一説によると興行成績は5千万にも達しなかったとか。
これはしまったと思い、周囲の人間に映画を観た人はいないか聞いてみると、何と友人の一人が「観た」と言うではありませんか!

「どんな映画やった?」
「訳が判らんかった」

これでは埒が明きません。

「面白かった?」
「だから、何かよう判らんかったって」

そこで、一番訊きたかった事を尋ねました。

「スペースシャトル、出て来たか?」
「出て来たような気がする」

…謎は益々深まるばかりです。

当時、どういう訳か2番館での再上映も全く無く、劇場鑑賞出来る機会はなかなか巡って来ません。
そこで橋本氏自身が執筆した原作本を読む事にしました。

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ストーリーは前述の通り。
映画は戦国時代の話も映像化されているらしく、この部分で結構製作費が掛かっている模様。
主人公のヒロインはかなり独り善がりの性格で、共感出来るようなキャラクターではありませんでしたが、しかしその行動と感情の異常性には一応彼女自身の境遇で裏打ちされており、正直復讐劇としてはつまらなくはありません。
ただ、戦国時代の話は全く不要だと思いましたし、宇宙飛行士の話はそれ以上に無駄のような気がします。
全体としては公開された映画ほどの電波は感じられないものの、何でこのような構成になっているのか、著者は何を語りたいのか、全く理解出来ませんでした。

数年前、初めてケーブルテレビでこの映画を観た時、ある程度構えて観たものの、やはりその内容の異様さには驚きました。
雄琴のストーリーは兎も角、戦国時代のエピソードも絡めて延々と続く因縁話、そして唐突に訪れる宇宙空間でのラストシーン。
これで感動しろ!と言わんばかりの宇宙飛行士の台詞とエンドタイトルの音楽には、もう何で東宝の内部にこれを止める人が誰もいなかったんだと不思議に思えてなりませんでした。

この作品を最後にして、橋本忍氏は映画界から事実上引退状態となってしまいます。
興行的な大失敗は、たとえ巨匠といえども抹殺してしまう…と言うより、この場合の理由は作品の異様な内容にあったと見るべきでしょう。
誰もが巨匠の手掛けた名作だと期待して観た作品内容が独善に溢れた異常な展開に終始していたら、そりゃあ次回作のリスクに怯えるに違いありません。
幻の湖」は、橋本忍氏が映画界で長年に渡って築き上げて来た名声を、たった一撃で木っ端微塵にしてしまうだけの破壊力を持った作品だったのです。

それにしても、橋本氏はなぜこのような作品を作ったのでしょう?
…いや、仮に歴史的な伝奇ロマンと現代劇のサスペンスを最終的には宇宙的規模のスケールの大きさにまで昇華させたかったとして、世界的な名脚本家が単に映像化に失敗したとして片付けて良いものなのでしょうか?
作品の構成は明らかに素人丸出しのような感じですし、SFとしても宇宙での描写は結構いい加減な具合です。
何故、このような物が出来たのか、橋本氏自身にも説明出来ないでしょうし、これは今後も邦画界最大の謎の一つであり続けるでしょう。
…多分、原作と監督まで兼任したのが間違いだったのだと思いますが。

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【2013/01/01 03:06】 | 映画
【タグ】 幻の湖  橋本忍  日本沈没  八甲田山  中野昭慶  森谷司郎  
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謹賀新年です(^-^)/
イワンチョ
aki先輩、うちのブログに来ていただいて、ありがとうございます。
早速、おじゃましにきましたが、相変らずの熱い文章ー(^-^)/
ゆっくり読ませていただきます!
しかし、先輩がこんなにタイガースに熱かったとは。
藤波君、楽しみですねー。

Re: 謹賀新年です(^-^)/
aki
いらっしゃい、お待ちしておりました。
お懐かしいですね。
長々と駄文ばかりで読み辛いと思いますが、まあ暇な時はいつでも遊びに来て下さい。
最近は漫画の描き方も忘れてしまったので…。

期待を裏切る低迷が続く阪神には去年もガッカリさせられっぱなしでしたが、シーズンが始まるとまた甲子園へ行ってしまうんでしょうな。
85年に日本シリーズへ行った時が、本当に懐かしい!

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コメント
この記事へのコメント
謹賀新年です(^-^)/
aki先輩、うちのブログに来ていただいて、ありがとうございます。
早速、おじゃましにきましたが、相変らずの熱い文章ー(^-^)/
ゆっくり読ませていただきます!
しかし、先輩がこんなにタイガースに熱かったとは。
藤波君、楽しみですねー。
2013/01/08(Tue) 18:54 | URL  | イワンチョ #-[ 編集]
Re: 謹賀新年です(^-^)/
いらっしゃい、お待ちしておりました。
お懐かしいですね。
長々と駄文ばかりで読み辛いと思いますが、まあ暇な時はいつでも遊びに来て下さい。
最近は漫画の描き方も忘れてしまったので…。

期待を裏切る低迷が続く阪神には去年もガッカリさせられっぱなしでしたが、シーズンが始まるとまた甲子園へ行ってしまうんでしょうな。
85年に日本シリーズへ行った時が、本当に懐かしい!
2013/01/08(Tue) 21:47 | URL  | aki #TMInTtVg[ 編集]
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