アナログ人間の独り言~阪神タイガース・映画・サブカルチャー・旅行等々
大学入ってまだ間が無い頃、映画を安く、多く観る為に、よくLマガジンで名画座の二本立て・三本立てを探して観に行ったものでした。
そのLマガジンで発見した、東宝特撮映画のオールナイト…。
当時、既に実家にはVHSのビデオデッキがありましたが、今のようにレンタル屋も普及しておらず、第一ソフトそのものが全く充実していませんでした。
オンエアされたものは残らずエアチェックするものの、当然トリミング・カット版ばかりですし、何せビデオテープそのものが非常に高価で、当時最も安いとされていたトダカメラでも松下のスタンダード2時間が1本4000円台でした。

怪獣映画やSF映画のオールナイト興行ですが、何故かいつも尼崎東宝新世界東宝敷島の二館。
特に新世界なんぞはああいう場所ですから、オタクっぽい大学生風の男達が何十人も開館を待って行列していると、酔っ払いや労務者風の人達が寄って来て「兄ちゃん、何があるんや」と絡まれたものです(まあ、応える方も真剣に「怪獣映画を観るんです」とやっていた訳で、相手も「ほぉ~、そうか」と理解出来たのか出来なかったのか良く判らない状態で…)。

今ではどの映画をあの劇場で観たのか、良く覚えていません。
ただ、家で一人で観るより異様に楽しかったのは良く覚えています(別に周囲の人達と仲良くなった訳では無いのですが)。
あまりに楽しいので、同好の友人達を誘って行く事もありました。
上映作品は、東宝特撮を各作品満遍なく上映するように番組編成されていたようです。
しかしながら、通い始めて間も無く新世界東宝敷島は閉館してしまいました。あの映画館の最後の瞬間にのみ、私は参加する事が出来たのです。

新世界東宝敷島の興行を引き継ぐ形で、伊丹グリーン劇場が同じオールナイトを始めたのはそのすぐあとでした。
支配人の方が異動されたからだと聞きましたが、本当のところはよく知りません。
番組編成も、主力級の大作と低予算・低年齢向けを組み合わせるといった、出来るだけ飽きさせない内容にしようと苦心されていました。
映画の上映だけではなく、古いポスターやパンフレット、劇場用販促物の販売もあり、やがて上映の小休止でオークションまで行われるようになりました。
またその日の上映作品で最もリクエストの多いものを、最後にもう1回アンコール上映なんてのもやっていました(それが終わると、もう朝の9時です)。

東宝特撮が一通り上映されてしまうと、当然のように大映特撮の上映がはじまりました。
ガメラ、大魔神、妖怪シリーズ等…。

当時、東宝特撮は非常に低調で、ゴジラ映画も新作が作られなくなって久しい状態でした。
一方で新作ゴジラを作る気運が東宝の社内・社外に満ち始め、結果として84年には特撮映画が3本も製作される事になります。
その前夜とも言うべきこの時期、東宝の方針もあったのかも知れませんがこの伊丹オールナイトに特撮映画のスタッフが次々と来場するようになりました。
田中友幸氏、中野昭慶氏、川北紘一氏…今から考えると夢のようです。しかも関西の映画館で…。

田中友幸氏が来演された時は、新作ゴジラの製作がかなり具体化して来た頃だったと思います。
田中氏のトークを聞くのはこの時が初めてでは無かったのですが、とても映画界の重鎮とは思えない、感触の軟らかい人だというイメージを受けました。
マニアからの場違いな意見や質問にも真剣に応えられ、逆にまるで映画に関しては素人であるかのようにあらゆる意見に対して(それがたとえどんなに馬鹿げた荒唐無稽な意見でも)聞き取ろうという姿勢は、その作り上げて来た重厚な作品群(特撮だけでは無く、黒澤、戦争、アクション、文芸等)からは全く想像出来ない、非常に温和で話し易い人柄を感じました。
また、「新作ゴジラの音楽は、伊福部先生にお願いしたい」と宣言されて(残念ながら実現はしませんでしたが)満場の拍手喝采を受けるなど、サービス精神も旺盛で、なるほどこれが一流のプロデューサーかと納得させられもしました。
ただ単にマニアックな舞台裏の話を聞けただけでなく、ベテランの驕りに陥らないプロの仕事の何たるかを知る事が出来た貴重な夜でもありました。

中野昭慶氏は、ああいうファン会のようなものには場馴れされていたのでしょうか実に気さくな方で、関係者口からは入らずに私たちが並んでいる正面入口に突入して来られて、大歓声の中握手攻めにさらされていました。
私もその時、握手をして頂いたのですが、劇場でのトークショーと共に大変貴重な経験となりました。

川北紘一氏は当時「さよならジュピター」「零戦燃ゆ」の特撮をたて続けに手掛け、東宝特撮のエースとして頭角を現しつつあった時期で、質疑応答の場で司会者から「中野監督についてのコメントは無理」と予め場内に説明があったり、既にテレビ界では実力を付けつつあった東映の特撮研究所を持ち上げつつも、その(玩具中心の)商業主義をやんわり批判する等、当時の生々しい現場の雰囲気に触れる事が出来ました。

その他、私は参加しませんでしたが、有川貞昌氏、本多猪四郎氏、佐藤勝氏といったビッグネームが来演されたらしいです(佐藤氏なんて特撮マニアの大会で戸惑わなかったのでしょうか?)。

また、このゲスト来演の時期に合わせて自主製作の特撮フィルムも上映され、「グリーンリボン賞」というコンテストも実施されました。
中には非常に面白いものもあり、入賞作がテレビの深夜番組で放送された事もあります。

やがて地元の伊丹市が立ち上げた「伊丹映画祭」とリンクし、この劇場のオールナイトが新しい段階に入った頃、何となく私はこのオールナイトへ観に行かなくなっていました。
観たい映画はほとんど観てしまい、また「映画祭」という一般のイベントに対して、どことなく敷居を高く感じたからです。

バブルの崩壊と震災を経て、いつの間にか伊丹映画祭も伊丹グリーン劇場も無くなっていました。
映画館はどこもシネコンが中心になりつつあるようです。
シネウェーブ六甲の閉館を思う時、あの伊丹のオールナイトの活気が懐かしくなります。
特撮映画は特殊な例ですが(しかしながら最もパワフルな客層を抱えています)、家庭ではなく大画面で、拍手喝采の中で見たい映画は洋の東西を問わず多い筈。
ああいった一種狂乱のお祭騒ぎが出来る劇場は、もう関西には無いのでしょうか?
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【2011/11/23 00:42】 | 映画館
【タグ】 六甲アイランド  Rink  シネウェーブ六甲  MOVIX六甲  伊丹グリーン劇場  伊丹ローズ劇場  尼崎東宝  新世界東宝敷島  
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Re: 夢の空間
aki
はじめまして、わいさん。
コメントありがとうございます。

あの時の一種異様なエネルギーは一体どこから来たのでしょうね?
多分、中核になった人たちは業界人になったのかも知れません(後で知ったのですが、私の知人が一人スタッフをやっていました)。
youtube等で当時の「中野昭慶監督歓迎フィルム」なんかを観てますと、凄く懐かしくなります。
特撮ものだけではなく、こういったお祭り的な映画祭を恒常的にやってくれる劇場は、関西ではもう無いのでしょうね。
ひょっとしたら、僕達の知らないミニシアターあたりで、何か面白い事をやっているのかも知れませんが。

また気軽に遊びに来て下さい。


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伊福部昭先生も来場されていましたね。
あんなに偉いのに非常に物腰の柔らくて正しく「実るほど頭を垂れる稲穂かな」を地で行くお方でした。

Re: タイトルなし
aki
こんにちは、コメント有難うございます。

そうですか、伊福部昭先生も来場されていましたか。
マニアの集会と言ってもその作品群を何十年も作り続けて来た方ですし、今でも一般に紹介される際の代表作は大抵「ゴジラ」です。
今から考えると、本当に素晴らしイベントでしたね。

また、遊びに来てください。

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2013/08/21(Wed) 15:19 |   |  #[ 編集]
Re: 夢の空間
はじめまして、わいさん。
コメントありがとうございます。

あの時の一種異様なエネルギーは一体どこから来たのでしょうね?
多分、中核になった人たちは業界人になったのかも知れません(後で知ったのですが、私の知人が一人スタッフをやっていました)。
youtube等で当時の「中野昭慶監督歓迎フィルム」なんかを観てますと、凄く懐かしくなります。
特撮ものだけではなく、こういったお祭り的な映画祭を恒常的にやってくれる劇場は、関西ではもう無いのでしょうね。
ひょっとしたら、僕達の知らないミニシアターあたりで、何か面白い事をやっているのかも知れませんが。

また気軽に遊びに来て下さい。
2013/08/22(Thu) 02:30 | URL  | aki #TMInTtVg[ 編集]
伊福部昭先生も来場されていましたね。
あんなに偉いのに非常に物腰の柔らくて正しく「実るほど頭を垂れる稲穂かな」を地で行くお方でした。
2015/03/28(Sat) 21:10 | URL  |  #-[ 編集]
Re: タイトルなし
こんにちは、コメント有難うございます。

そうですか、伊福部昭先生も来場されていましたか。
マニアの集会と言ってもその作品群を何十年も作り続けて来た方ですし、今でも一般に紹介される際の代表作は大抵「ゴジラ」です。
今から考えると、本当に素晴らしイベントでしたね。

また、遊びに来てください。
2015/03/29(Sun) 08:55 | URL  | aki #TMInTtVg[ 編集]
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