アナログ人間の独り言~阪神タイガース・映画・サブカルチャー・旅行等々
スーパードラマTVで、イギリス製SFドラマ「スペース1999」の再放送が始まりました。

スペース1999」は、「サンダーバード」「キャプテンスカーレット」といった特撮人形劇で有名なジェリー・アンダーソン(私などは未だにゲーリー・アンダーソンと言ってしまいます)が製作したTVシリーズで、彼が「謎の円盤UFO」に続いて人間の俳優を使って撮影した特撮ドラマシリーズ第二弾になります。

イギリスのTV業界において人形劇というのは独特の地位にあるらしく、日本におけるアニメに匹敵する地位を占めているそうです。「きかんしゃトーマス」なんてのもその延長線上にあるらしいのですが、子供向け番組が凝り出すと大人も唸らせる物が出来上がるのは世の東西を問わないらしく、最初は低年齢向け番組だったアンダーソン作品も「宇宙船XL-5」あたりから人形劇離れした特撮演出を見せ始め、「海底大戦争」以降はアメリカや日本の本格的特撮作品をも凌駕する映像を追求して行きます。

アンダーソン自身はあくまで映画製作者になりたかったらしいのですが、手掛けた人形劇の思わぬ成功でその将来性に希望を見出し(当時の莫大なマーチャンダイジング収入の影響もあって)、この特撮人形劇を作り続ける事になります。
しかし「サンダーバード」である意味頂点を極めた彼は、以降の作品では人形のプロポーションやその造形にリアルさを追求し、人間の俳優と共演させるなどライブ志向を模索し始め、最早人形劇である必要すらなくなってしまいます。

アンダーソン作品最大の魅力は、その精密なミニチュアを使った特殊撮影でしょう。
初期作品から特撮監督を務めたのは、デレク・メディングス。
イギリスのクラフトマンシップの本領を発揮した緻密な特撮は、方向性を同じくとする日本の特撮にも大きな影響を与えます。
間違いなく当時の世界最高レベルにあったそのミニチュアワークは、しかしながら人形劇というミニチュア映像世界の中にあって始めてその魅力を2倍にも3倍にもしたのかも知れません。

「サンダーバード」撮影中、アンダーソンは映画監督のスタンリー・キューブリックのオファーを受けます。
「2001年宇宙の旅」の製作をイギリスで企画していたキューブリックは、アンダーソンのスタッフに眼を着けたのです。
しかしまあ、そこは強烈な個性を持った二人の事、すんなり話がまとまる筈もなく、アンダーソンのスタッフを使いたいだけのキューブリックと、「2001年」のプロジェクトから何とか利益を得たいアンダーソンの思惑は見事に外れ、接触直後にこの話は物別れになってしまいます。
その時、メディングスの第二班監督を務めていたブライアン・ジョンコックがキューブリックに引き抜かれ、「2001年」の特撮チームに参加する事になります。

デレク・メディングスは「謎の円盤UFO」までアンダーソン作品の特撮監督を務めてきましたが、その後フリーとなり、「恐竜の島」「007シリーズ」と映画界で実績を積み「スーパーマン」でアカデミーを受賞します。
その後も「ネバーエンディングストーリー第二章」「バットマン」という作品を手掛け、遺作になる「007ゴールデンアイ」でも素晴らしいミニチュアワークを見せてくれています。

一方、「謎の円盤UFO」以降、アメリカを始めとする世界市場を虎視眈々と狙っていたアンダーソンは、更にスケールアップしたライブアクションを企画します。
当初、それは「UFO」の続編として企画されましたが、出資者であるイタリアのTV局が納得せず、これは月を舞台にした宇宙SFへ大きく路線変更がなされます。

メディングスが去った後、アンダーソンは新しい特撮監督としてかつてキューブリックに引き抜かれたブライアン・ジョンソン(ジョンコック)その人を迎え入れました。
「2001年」以降、イギリスに戻り比較的地味な映画・TVドラマの特撮を手掛けていた彼は、それでもメディングスの流れを汲む精密なミニチュアワークに徹し、特に「メデューサタッチ」の高層ビルへ旅客機が突入するシーンではその真骨頂を見せ付けました。
アンダーソンの月世界を描く新シリーズにおいてブライアン・ジョンソンが創造した特撮は、「2001年宇宙の旅」をTVというメディアで再現するという作業に他ならなかったと言えるかも知れません。

日本で第一シーズン全24話が放送された時、私はまだ中学生でした。
雑誌の新番組情報等で知り得た内容は、「月が突然の大事故で地球周回軌道を外れ、その影響で地球は大変動に襲われる。生き残りをかけた科学者達の物語」というもの。今から思うと全く的を得ていない解説ですね。
番組のスナップ写真も、倒れている宇宙服を着た人を他の宇宙服の人物が見下ろしているといった、何だかシュールな画像でした(これは今から思うとこの作品らしい画です)。ただ、新聞に載った特集記事では、良く使われるマーチン・ランドーとバーバラ・ベインのツーショットが掲載されていましたが…。

1999年9月13日、月に捨てた地球の不要核物質が突然爆発した。
月は地球の周回軌道を離れ、人類の宇宙基地ムーンベースアルファを載せたまま、果てしない宇宙を彷徨い始めた…。

壮大なスペクタクルで始まるこのシリーズは、イントロの第一話におけるこの設定そのものが素晴らしいSF的な着想と言え、その展開には正直度肝を抜かれました(放浪する月が物語の舞台になるとは予想していませんでしたので)。一緒にチラチラ見ていた親は、シリーズ途中まで地球上の基地が舞台だと思っていたくらいです。
更に、そのビジュアルは圧倒的でした。
イーグルに代表される魅力的なメカニック、終始統一されたムーンベースの大規模な美術、センスのいいシャープな映像…、恥ずかしながら第一話の途中まで、これがアンダーソン作品であるというのに全く気が付きませんでした。それ程、この作品の特撮は洗練されていたのです。

最初に気が付いたのは音楽でした。
冒頭部分からそれらしい旋律があるにはありましたが、途中決定的と言えるバリー・グレイのフレーズが聞こえ、ああこれは…と納得した次第です。日本版オープニングのクレジットにあった「プロデューサー ジェリー・アンダーソン」とは、あのゲーリー・アンダーソンの事だったのか…、と。

大阪では毎日放送が水曜深夜に放送を始めました。
しかしこれがMBSに良くある不定期放送の洗礼を受け、放送順は無茶苦茶、突然日曜の夕方に放送されたりと、さんざんな扱いを受けました。TBSも後半かなり駆け足の放送になったと聞きますが、MBSで放送されたのは結局私の知る限りでは13話程度です。

ストーリーの内容はこれも非常に評価の分かれるところです。
当時、私の友人達の間でも、美術や特撮に文句を言う者はいませんでしたが、ストーリーは「訳がわからない」「退屈だ」「面白くない」といった意見が多勢を占めていました。
私もエピソードによってはもっともだと思います。実際、アンダーソン作品を全話制覇するには、相当な根性が必要だと思いますし(あの「UFO」ですら)。
登場人物のキャラクターも不自然で、どことなく人間らしさの無いそれこそ「人形劇」のような展開が、素晴らしい美術に圧倒される形で続きました。

それでも私にとってこの作品は特別な作品でした。
日本はおろかアメリカでさえまともなSFドラマが枯渇していたこの時期、これだけの規模の特撮を展開してくれたシリーズが他には無かったのです。

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当時、三笠書房から出版されていたノベライズ翻訳本。
全三巻が刊行されましたが、内容はどういう訳か第二シーズンのノベライズでした。
三笠書房はこの頃、「刑事コロンボ」のノベライズで外国ドラマの新書本シリーズというジャンルを確立しており、他にも「バイオニック・ジェミー」「600万ドルの男」「チャーリーズ・エンジェル」「華麗な探偵・ピート&マック」といったシリーズを出版していました。

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地上波での再放送では荒木一郎作曲のテーマが流れる日本版OPが放送されますが、現在は本放送時にはあったこの日本語タイトルが削除されています。
代わってイーグル船団が寸足しに挿入されており、今では微妙に音楽と画面のカットの切り替わりが一致していません。
「宇宙大作戦」第一シーズンの日本版OPも失われてしまったそうですが、何かと批判の多い洋劇日本オリジナルOPの数々…今見直すと結構味があって面白いものです。
特に「スペース1999」の日本版OPは本家より出来が良いと思うのですが…。

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イマイ科学から発売された初版イーグル
プロポーションは悪くありませんが、細部に誤魔化しが多く、イマイお得意のゼンマイ走行でもあります。

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エアフィックスから発売されていたイーグル
未開封なので良く判りませんが、フレーム部分の再現にはかなり無理があるようです。
アメリカ製のプラモデルと同じ金型らしいです(当時、海洋堂のレジ打ち兄ちゃんから聞きました)。

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同じくエアフィックスのマークⅨ・ホーク。
未開封ですが、これもMPCと同じ金型らしいです。

輸入プラモデルは他にも「ムーンベースアルファ」そのものや、作品には登場しない「エイリアン」という名のバギーのような乗り物が販売されていました(パッケージに描かれていた宇宙服着た宇宙人が気色悪かった…。海洋堂で見た時、いずれこんな奴が番組に出て来るのかと本気で考えていました)。
どうせならウルトラ・プローブとかグエントやボエジャーなんかも商品化して欲しかった…。

高校に入って、創刊されたSF雑誌「スターログ日本版」の中で「スペース1999」が特集され、第二シーズンの存在とその裏話の数々を知りました。
そして待ちに待った第一シーズンの再放送と第二シーズンの放送。
当時、関西では関西テレビが「宇宙大作戦」を深夜にエンドレス状態で放送していたのですが、その放送を打ち切り、第一話を日曜夕方の特番扱いにして、以降は深夜帯で放送を開始したのです。MBSの本放送から実に4年後の事でした。

続きは後日。
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【2011/10/23 02:15】 | 特撮
【タグ】 スペース1999  ムーンベースアルファ  ジェリー・アンダーソン  ブライアン・ジョンソン  バリー・グレイ  イーグル  
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