アナログ人間の独り言~阪神タイガース・映画・サブカルチャー・旅行等々
 3時間を超える超大作です。
 最近の邦画には珍しく中盤には休憩時間もあり、1日に3回転が限界のようでさぞかし観客効率の悪い作品だろうと思いましたが、結構動員は良い様です。
 私は日曜の映画の日、1回目の上映に行きましたが、ほぼ満席の状態でした。
 観客層も自分と同年代か、やや年配の方が多かったみたいで、逆に言うと観て来た映画のバリエーションが多く誤魔化しの効き難い観客相手に、非常に健闘していると考えても良いかも知れません。

 実を言うと観る前は若干の不安がありました。
 試写会等の反響ではそれほど否定的な感想は無く、何しろ久し振りの山崎豊子原作の新作映画という事で大いに期待したのですが、今回の監督の代表作とされる「ホワイトアウト」が自分的にはなんだこりゃ映画だったので、何となく過度な期待は避けようと思いながら観る事になった訳です。
 「白い巨塔」「華麗なる一族」「不毛地帯」、山崎豊子の所謂社会派ドラマ超大作は、いずれも山本薩夫の演出により映画化されました。
 ある意味これらの作品は、山崎豊子作品というよりも山本薩夫作品と言うべきかも知れません。見るからに左翼思想に貫かれている演出にも関わらず、非常に重厚かつ娯楽性を兼ね備え、一級のエンターテイメントに纏め上げる力量は、「戦争と人間 3部作」「金環食」「皇帝のいない八月」「ああ野麦峠」といった作品群にも共通して見ることが出来ます。
 ただ、「白い巨塔」は続編まで描かれませんでしたし、「不毛地帯」の映画化も前半のみで、作品的には見終わった後、多少の消化不良を感じる部分があり、自分的には「華麗なる一族」が最も好きな作品ではありました。

 山本薩夫の他界後、残念ながら邦画界で山崎作品を映画化出来る監督はなかなか出て来ず、何よりも邦画界そのものも低迷を続け、このような社会派映画の超大作を世に送る力を失ってしまいました。
 「沈まぬ太陽」も多くの映画人が映画化を試み、旧大映が東映と合作を企画してから実際に映画化されるまで約10年近く掛かりました。

 作品的には見事な出来栄えです。
 流石に脚本の決定稿を出すまでに相当時間を掛けただけあって、あの長大な原作を単純なダイジェスト版にすることなく、全体の構成は非常に良く出来ています。
 また監督の演出もかつての山本作品のように大時代的でなく、適度に今風でテンポも良く、それでいて骨太な作風を忘れないようにしっかりと、丁寧に撮られています。
 感心したのは前半、ジャンボ機墜落事故をいきなりタイトル前に全て見せ、それとアフリカ編を交互にフラッシュバックさせていますが、観てる方は全く混乱しない非常に上手い作り方で、主人公の境遇と舞台になる航空会社、そして周囲の環境を一気に無理なく説明しています。
 キャストも実力派揃いで、かつての山本作品のような強烈な個性俳優ばかりという訳では無いものの、特に主役の渡辺謙の鬼気迫る演技だけでも一見の価値ありです。
 個人的にはかつてこの手の映画には欠かせなかった神山繁が出ていたのは嬉しい驚きでしたし、出来れば龍崎役は仲代達矢を起用して欲しかったです。あと、鈴木瑞穂もどこかで出て欲しかったですね。
 三浦友和の悪役は、あまりにも線が細かろうと思いましたが、前半のキャラクターを引き摺っての豹変振りを見ると、これはこれで納得出来ます。

 権謀術策が渦巻き、スッキリと終わらないのが山崎豊子映画の常ですが、この作品も同様です。
 まあ、全てハッピーエンドで終わっていれば、今の日本航空の窮状も無い訳で、それでもある程度悪い奴らにはそれなりの報いが訪れて映画は終わります。
 何となく不完全燃焼気味でラストシーンを御覧になられた方も多いでしょう。結局、再度アフリカへ左遷され夕陽を眺める主人公ですが、原作ではさらりと流されていた宇津井健演じる老いた遺族のエピソードを上手く映画のテーマと絡め、手紙という形で纏め上げていたのには思わず「上手い!」と感心してしまいました。

 山崎豊子の小説は、実在の団体や実際に起こった事件をモデルにされているものが多く、膨大な取材を基に執筆されている訳ですが、あまりにリアルに書かれている為に、モデルの人物や会社がはっきりしてしまい、よく騒がれたりします。
 「沈まぬ太陽」はその最たるもので、小説の連載中から映画化に至るまで、日航や関係者の間で随分と問題になりました。
 労働運動・経営問題・政財界の癒着・墜落事故…、小説や映画を見て単純に楽しむ分には罪が無いかも知れませんが、この作品については様々な人が多様な意見を持っている事をある程度知っておくべきかもしれません。
 そういう意味でも、もし山本薩夫がこの作品を監督していたとしたら、全く違った作品になっていたような気がするのです。

 航空機のシーンは、当然の事ながら日航の協力は得られなかった為、ほとんどがCGとミニチュアで再現されていましたが、正直あまり出来は良く無かったです。
 同じ飛行機ものでも特撮研究所が担当した「ハッピーフライト」の方が、特撮は上手く見せていました(そういえばこの映画でも小日向文世が機長役でした)。
 本編の出来が期待以上のものだっただけに、少し残念でした。
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 「白い巨塔」「華麗なる一族」「不毛地帯」、山崎豊子の所謂社会派ドラマ超大作は、いずれも山本薩夫の演出により映画化されました。
 ある意味これらの作品は、山崎豊子作品というよりも山本薩夫作品と言うべきかも知れません。見るからに左翼思想に貫かれている演出にも関わらず、非常に重厚かつ娯楽性を兼ね備え、一級のエンターテイメントに纏め上げる力量は、「戦争と人間 3部作」「金環食」「皇帝のいない八月」「ああ野麦峠」といった作品群にも共通して見ることが出来ます。
 ただ、「白い巨塔」は続編まで描かれませんでしたし、「不毛地帯」の映画化も前半のみで、作品的には見終わった後、多少の消化不良を感じる部分があり、自分的には「華麗なる一族」が最も好きな作品ではありました。

 山本薩夫の他界後、残念ながら邦画界で山崎作品を映画化出来る監督はなかなか出て来ず、何よりも邦画界そのものも低迷を続け、このような社会派映画の超大作を世に送る力を失ってしまいました。
 「沈まぬ太陽」も多くの映画人が映画化を試み、旧大映が東映と合作を企画してから実際に映画化されるまで約10年近く掛かりました。

 作品的には見事な出来栄えです。
 流石に脚本の決定稿を出すまでに相当時間を掛けただけあって、あの長大な原作を単純なダイジェスト版にすることなく、全体の構成は非常に良く出来ています。
 また監督の演出もかつての山本作品のように大時代的でなく、適度に今風でテンポも良く、それでいて骨太な作風を忘れないようにしっかりと、丁寧に撮られています。
 感心したのは前半、ジャンボ機墜落事故をいきなりタイトル前に全て見せ、それとアフリカ編を交互にフラッシュバックさせていますが、観てる方は全く混乱しない非常に上手い作り方で、主人公の境遇と舞台になる航空会社、そして周囲の環境を一気に無理なく説明しています。
 キャストも実力派揃いで、かつての山本作品のような強烈な個性俳優ばかりという訳では無いものの、特に主役の渡辺謙の鬼気迫る演技だけでも一見の価値ありです。
 個人的にはかつてこの手の映画には欠かせなかった神山繁が出ていたのは嬉しい驚きでしたし、出来れば龍崎役は仲代達矢を起用して欲しかったです。あと、鈴木瑞穂もどこかで出て欲しかったですね。
 三浦友和の悪役は、あまりにも線が細かろうと思いましたが、前半のキャラクターを引き摺っての豹変振りを見ると、これはこれで納得出来ます。

 権謀術策が渦巻き、スッキリと終わらないのが山崎豊子映画の常ですが、この作品も同様です。
 まあ、全てハッピーエンドで終わっていれば、今の日本航空の窮状も無い訳で、それでもある程度悪い奴らにはそれなりの報いが訪れて映画は終わります。
 何となく不完全燃焼気味でラストシーンを御覧になられた方も多いでしょう。結局、再度アフリカへ左遷され夕陽を眺める主人公ですが、原作ではさらりと流されていた宇津井健演じる老いた遺族のエピソードを上手く映画のテーマと絡め、手紙という形で纏め上げていたのには思わず「上手い!」と感心してしまいました。

 山崎豊子の小説は、実在の団体や実際に起こった事件をモデルにされているものが多く、膨大な取材を基に執筆されている訳ですが、あまりにリアルに書かれている為に、モデルの人物や会社がはっきりしてしまい、よく騒がれたりします。
 「沈まぬ太陽」はその最たるもので、小説の連載中から映画化に至るまで、日航や関係者の間で随分と問題になりました。
 労働運動・経営問題・政財界の癒着・墜落事故…、小説や映画を見て単純に楽しむ分には罪が無いかも知れませんが、この作品については様々な人が多様な意見を持っている事をある程度知っておくべきかもしれません。
 そういう意味でも、もし山本薩夫がこの作品を監督していたとしたら、全く違った作品になっていたような気がするのです。

 航空機のシーンは、当然の事ながら日航の協力は得られなかった為、ほとんどがCGとミニチュアで再現されていましたが、正直あまり出来は良く無かったです。
 同じ飛行機ものでも特撮研究所が担当した「ハッピーフライト」の方が、特撮は上手く見せていました(そういえばこの映画でも小日向文世が機長役でした)。
 本編の出来が期待以上のものだっただけに、少し残念でした。
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【2009/11/03 04:12】 | 映画
【タグ】 沈まぬ太陽  山崎豊子  
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