アナログ人間の独り言~阪神タイガース・映画・サブカルチャー・旅行等々
71年7月、日活は映画製作を中断。
8月にはダイニチ映配から離脱、大映と袂を分かちます。
11月には「日活ロマンポルノ」の公開が開始。
しかしながら日活はこの苦境の中にあっても、年数本の大作一般映画の制作を企画します。
「青春の門」「ええじゃないか」「復活の日」…
これらの企画は残念ながら日活での実現はなりませんでしたが、唯一「戦争と人間・第三部」だけは二年のブランクを置いて始動します。
ただ日活の資金不足の為、当初の4部構想は解消となり、この第三部は完結編として公開される事となりました。
それでもこのような体制下でこの作品の制作が実現したのは奇跡と言って良いでしょう。
当時のマスコミ批評も、作品そのものに対する評価より、ロマンポルノ体制の日活がこの超大作を作り上げた実績に対する注目の方が大きかった様です。
しかもその内容たるや、まさに映画会社・日活の意地とも言える堂々たるものでした。

作品内容は原作第三部「劫火の狩人」とほぼシンクロしておりますが、既に当時刊行されていた第四部「裁かれる魂」の一部冒頭部分も映像化されています。
ただ原作の完結延長による映画への影響は如何ともし難く、三部で強引に完結させるために山本監督は前作まであれ程丁寧に描き込んでいた登場人物の多くをバッサリ切り捨ててしまいます。
一方で完結後も原作に拘らない形での続編制作を考えていたらしく、主要登場人物の運命も原作から離れて描かれるようになります。
因みに山本監督は続編において、東京裁判と財閥解体を描きたかったそうで、これは原作者の五味川純平氏の初期構想と方針はほぼ一致しています(五味川氏は東京裁判で天皇が裁かれなかった事に憤りを感じており、このシリーズ完結への意欲を失った原因となった様です)。
映画は73年8月公開。
この時点で原作は太平洋戦争・ガダルカナル島の激戦を描く15巻刊行直前でした。

昭和12年7月28日、日本の支那派遣軍は北京・天津付近で中国軍への一斉攻撃を開始。
8月13日、第二次上海事変勃発。
11月5日、上海戦援護の為、柳川兵団(第10軍)杭州湾上陸。
上海の占領を完了するも、柳川中将は中支方面軍司令官の命令を無視、独断で首都南京へ侵攻。
11月20日に設置された日本の大本営が南京攻略を正式に命令したのは12月1日だった。
12月13日南京占領。国民政府は首都を漢口(武漢)に移す。
その直後に大惨劇が引き起こされた。
日本軍による中国人虐殺は1ヶ月に及び、犠牲者は30万を超えるとされる(ナレーションより)。
今もって日本が決して認めようとしない「南京大虐殺」である。

東京の伍代家。
長女の由紀子がウエディングドレスを着ている。
東亜銀行頭取雨宮の子息との政略結婚である。
由紀子は俊介と順子がこの結婚を祝福していない事を知っている。しかし「自分の青春は終わった」と自分自身に言い聞かせるしかなかった。

標耕平は工員として働いていた。
しかし左翼活動家として監視の目は厳しく、上司や同僚からも敵視されていた。
入営の日が間もなく迫って来ている。

順子は父に女友達との旅行に出掛けると言って屋敷を出る。
しかし俊介と共に向かった先は耕平の下宿だった。
俊介はそこで二人の婚姻届けを作成してやる。
その夜は三人だけの結婚式であった。
俊介は耕平に新婚旅行の為の列車の切符と金を渡し、「死ぬなよ」と言う。

旅先の宿で寛ぐ耕平と順子。
順子は初めて耕平と出会ったパーティの日を思い出す。
夜中、耕平は出征前に兄と過ごした夜の夢にうなされ目覚める。
順子は「帰って来るって約束して」と抱きつき、耕平は「大丈夫だ」と答える。
こうして耕平と順子は結ばれたのであった。

俊介は旅先で貧農の娘・苫に出会う。
鉱山の工場長をしていた画家の灰山に呼ばれ、俊介はこの地に来ていたのだ。
未曾有のの大不況は特に日本の農家を直撃しており、苫も他の娘達の例にもれず遠からず身売りされる運命にあった。
快活な苫の境遇を憐れんだ灰山は、何とか伍代家で雇ってもらえないかと俊介に頼む。

苫は伍代家に住込み女中として働く事になる。
夕食の席上、初めての給仕で粗相を由介に注意されながらも、しっかりと働く苫。
相変わらず喬介は由介に軍人を利用しての事業拡大を主張するが、そこへ順子が旅行から帰って来た。
夕食の席を準備させようと苫に指示する由介だが、順子は話があるという。
俊介を交えたその席で、由介は怒っていた。
「標耕平君と結婚したと言うんだね?」
父・由介に対し、届は自分がしたと俊介が言う。
順子は姉・由紀子の様な生き方は自分には出来ないと答える。
自分と敵対する立場の人間を由介は認める訳にもいかず、順子には今夜は家に泊まって明日出て行きなさいと告げる。
「これからは標順子として生きて行くんだ」
父の言葉に従う順子。
女中頭のお滝は何とか止めようとするが、逆に順子に諫められる。

その夜、東亜銀行頭取雨宮が伍代家を訪れる。
政府が密かに画策している「国家総動員法」の要綱を入手したのだ。
それを読んで驚愕する由介と喬介。
国家総動員法は明らかに対ソ・米・英戦を想定したものであり、事態が日中戦争だけでは終わらない事を意味していた。
由介は慌てて行動を開始する。

翌朝、一人屋敷を出て行く順子を、俊介が見送る。
「頑張れよ」
兄の言葉に微笑み、一人道を歩いて行く順子。

満州へ戻る準備をしている俊介の手伝いを苫がしている。
俊介を慕う苫は、「満州について行きたい」とせがむ。
しかし俊介はそれを拒否し、苫に金を渡そうとする。
苫は拗ねて荷造りを続ける。

昭和13年1月。
近衛首相は「以後、国民政府を相手にせず」と発表。これにより日中和平は潰えた。
国家総動員法が提出され、由介は軍人相手に民間保護の必要性を説いて回る。
伍代産業は戦時体制に大きく舵取りをはじめた。

東北・陸軍歩兵連隊。
標耕平はそこに居た。
雪山の行軍で脱落兵の小島の荷物を担いでやる耕平。
その夜、就寝時間後当番上等兵がやって来て、初年兵全員を叩き起こしビンタを食らわす。
ストーブの中に煙草の吸殻が入っていたというのだ。
「誰だ当番は?前に出ろ!」
しかし当番の小島は怯えてしまい動けない。
他の兵の申告で小島の当番が露見し、上等兵は彼を殴りつける。
それを見た耕平は「小島二等兵はちゃんと炉内を清掃した」と申告する。
「では古参兵がその後で捨てたと言うのか?」
耕平に詰め寄る上等兵。そこへ古参兵の一人が口を出す。
「俺に任せてくれんか?」
受け継いだ上等兵が耕平と小島に対抗ビンタを命ずるが、耕平が応じない。
耕平の態度に怒った上等兵が、耕平を袋叩きにする。
耕平は殴られながらも軍法を暗唱し、私的制裁の禁止と罰則をただひたすら列挙する。
逆上した上等兵は狂った様に耕平を殴り続けるが、一向に止まない耕平の念仏の様な暗唱に次第に恐れを成して行く。
騒動に気付いた将校がやって来て仲裁に入る。
上等兵に「いい加減に寝かせてくれ」と命じ、耕平にも「顔を洗って寝ろ」と言う。

新兵達の家族が集う面会日。
順子は黙々と食事をする耕平に「その傷はどうしたの?」と尋ねる。
銃剣術の訓練でケガをしたと答える耕平だったが、順子はその嘘を直ぐに見破る。
「殴られたのね」
「僕だけじゃない」
君の方が辛いだろうと耕平が言う。何の不自由も無かった生活から一転、下町の貧しい環境への激変を耕平は心配していた。
「敵地に出発するかもしれない」
耕平は最近耳にした噂を言う。
もしそうなったら、二人はもう会えないのだ。

4月、新京・伍代産業満州支社。
日本軍の全戦全勝に沸く社員たちは「流石に蒋介石も手を挙げるだろう」と喜ぶ。
しかし俊介は「勝ってますか?」と疑問を投げ掛ける。
「まさか負けていると言うんじゃないでしょうね」
驚く同僚たちに、俊介は蒋介石が後退作戦を続けている事、そして米英介入を待っている事を説く。
「そんな考え方は…」
「非国民だと仰いたいのですか?」
しかし数字を精神論で膨らます事は出来ないと俊介は言う。

支社長室へ呼ばれた俊介は喬介に叱られる。
「お主は余程兵隊に行きたいらしいな」
喬介に渡された原稿は俊介が「興亜経済」という革新系の雑誌に寄稿した論文だった。
内容は満人労働者の賃金を上げるべきだというもので、付箋がびっしり貼られてある。
「こんな物を活字にしたら、興亜経済は発禁処分。あなたは逮捕だ」
部屋の隅に居た男が立ち上がる。支那服を着たそれは一目で特高の刑事だと判った。
「あのような時局認識に欠けた連中の所へ出入りすべきじゃない」
男はやんわりと俊介に忠告する。

興亜経済・編集部。
編集長の田島は関東軍参謀本部から依頼された戦略分析の仕事を受けると俊介に言う。
そしてその報告に付き合わないかと俊介を誘う。
俊介が下宿に戻ると、苫がいた。
実家から金銭の無心があり、伍代家を辞めて満州に来たと言うのだ。
このまま満州で苦界に身を沈めるつもりなのだ。
何とか帰そうとする俊介だったが、苫は彼にしがみつく。
「今晩一晩だけ、おいてください…」

朝、俊介が目覚めると、既に苫はいなかった。
早朝の新京の街を独り歩いて行く苫。
屋台で買った揚げパンを頬張りながらにこやかに歩く姿は、何もかも吹っ切れた様子だった。

関東軍司令部。
参謀の辻少佐に喬介が対ソ戦強行をそそのかしている。
笑って「自分はまだ死刑にはなりたくない」とはぐらかす辻少佐。
その階上には東条英機がいた。
「あの人が軍中央に出れば、あなたの思う通りになるかも知れない」
辻参謀が喬介に言う。

関東軍参謀に分析報告をしている田島。
しかし日本に不利な事実分析に参謀達は不快感を露にする。
すると隣席に居た俊介が「数字に国籍はありません」と反論する。
俊介が並べ立てた数字による日米の国力の差は、誰の目にも明らかであった。
突然、俊介の話を辻参謀が打ち切る。
彼は数字も事実だが、皇軍不敗も歴史的事実だと俊介に言う。
参謀相手に持論を展開した俊介を笑いながら部屋を出て行く辻参謀。
しかしこれで俊介は関東軍から目をつけられたのは確実だった。

居酒屋で酒を飲む俊介と田島。
俊介は出過ぎた真似をしたと謝るが、逆に田島は感謝する。
あれは本当は自分が言いたかった事だと田島は言う。二年前、特高に捕まってからすっかり勇気を失ってしまったのだと。
その様子を刑事達がこっそり窺っていた。

4月、戦争の早期終結を図る為、日本軍は徐州作戦を決行する。
しかし中国軍は既に撤退しており、その目論見は完全に外れる。

華北・山西省。
そこに派遣された日本軍駐屯部隊に標耕平がいた。
初年兵達が並べられ、共産ゲリラとされる捕虜達がその前に縛り付けられている。
真剣による銃剣訓練である。
「早い者勝ちだぞ」
士官が顔色を変える新兵達に怒鳴る。
「標、貴様銃剣術は得意だろう?模範を示すんだ」
士官の命令で最前列に移動して銃剣を装着する耕平。
号令一下、兵達は捕虜に殺到。銃剣を突き刺す。
しかし耕平は目隠しを外した捕虜に直視され動けなくなる。
「標!何してる!突け!」
傍らの谷田上等兵が怒鳴る。
耕平は歯を食いしばって銃剣を繰り出すが、その剣先は捕虜の身体をすり抜けてしまう。
「この馬鹿野郎!しくじりやがって!」
谷田は耕平を殴り倒し、銃床で袋叩きにする。

気絶していた耕平は兵舎で目覚める。
看病していた初年兵の一人が谷田上等兵の出自に触れ、「だからこんな人間が出来ない様な事が出来るんだ」といった瞬間、後ろから何者かに殴り倒される。
そこには谷田が立っていた。
「貴様、生きて内地に帰さんぞ」
初年兵を睨みつける谷田。

谷田は耕平をパトロールに連れ出した。
脚を引きずりながら歩く耕平に、「我慢しろ」と谷田が言う。
「もし俺が殴っていなかったら、お前はもっと酷い目にあっていた」
「判っております。有難うございます」
「もし連れ出さなかったら、お前は一人で銃剣突きをやらされていたぞ」
感謝する耕平。
谷田は耕平に自分の噂を聞いているかと訊く。気にはならんのかと。
耕平は谷田に何を気にしているのかと問い返す。自分はアカの弟だと言われ投獄もされたと。
谷田は全て知っていた。
やがて二人は共産ゲリラのビラを発見する。
日本兵に共闘を呼び掛けるものであった。敵は日本の天皇であり資本家であると。

俊介は逮捕された。
支社長室で会った特高刑事が牢の外から笑い掛ける。
「だから言ったでしょう。徴兵猶予も取り消しだ」
前の牢には田島が居た。
拷問を受け血塗れで帰って来る田島。
「伍代、出ろ!」
自分の番が来たと、おずおずと牢を出る俊介。
「釈放だ」
驚く俊介。
「田島さんは?」
「釈放はお前だけだ。お前は伍代だからな」
田島は俊介に別れを告げる。今度は頑張れそうだと…。

軍人会館で財界人相手に演説をする東条英機中将。
中国だけでなくソ連も叩く事で今事変の根本的原因の解決を図ると言うのだ。
伍代由介は憮然とした表情でそれを聞いていたが、隣の英介は心酔し切っている。
伍代家の雨宮を交えた席で由介は東条の発言は軽率だと言い放つ。
雨宮もソ連との国力差があり過ぎると同意するが、英介は父親の考え方が欧米的過ぎると批判する。
そして引退して跡を自分に任せろと進言するのだった。

パトロールしていた耕平の部隊がゲリラに襲撃される。
耕平は敵を倒し何とか助かるが、谷田が重傷を負う。
谷田を背負い帰路を急ぐ耕平。
谷田はこの戦争への疑問を愚痴りながら、耕平に背負われて死んでいく。

由紀子は下町の順子の職場を訪ねて来る。
そこは託児所と病院であった。
由紀子は帰って来るように順子を説得するが、「自分はもう伍代の人間ではない」と順子は拒否する。
託児所の子供の一人は伍代産業の過失で父親を失った孤児であった。
順子は新しい人生を歩み出していたのだ。

耕平の部隊はゲリラの拠点とする村を襲撃する。
徹底的に破壊の限りを尽くし、略奪、殺人を行う日本兵達。
逃げ遅れて追い詰められた老人と少女を撃てと、古参兵が耕平と小島に命令する。
小島は老人を撃ち殺すが、耕平は少女を撃てない。
上等兵は耕平を殴りつけるが、そこへ八路軍が突入して来る。
形勢が一気に逆転した日本兵は我先に逃げ出す。
小島は気絶した耕平を運び出そうとするが、古参兵に「死んだ奴はほおっておけ」と言われ仕方なく耕平を置いて逃げて行く。

東京の順子に耕平の戦死通知が来た。
仲間達に「心配しないで」と気丈に振舞う順子であったが、自室に戻ると耕平の写真を前に咽び泣く。

昭和14年4月。
俊介はハイラルの第23師団にいた。
狙撃手としての腕を見込まれた俊介は、特別訓練を受ける事になる。
ある日、俊介は柘植の訪問を受ける。ソ満国境に配属されたので打ち合わせで寄ったのだと言う。
俊介は柘植に今の情勢を尋ねる。
東条英機の支那・ソ連の二正面発言は本当なのか?
柘植は今の軍中央は威勢の良い事を言う者だけが中心になると言う。
俊介は耕平が北支で戦死したと告げる。
「あの青年も戦死したか」
伍代家のサロンで論議した昔を懐かしむ二人であった。

伍代家の屋敷でピアノを弾いている由紀子。
彼女は由介に、家に戻りたいという。
全てを打ち込んでいる順子の姿が羨ましく、今の自分の生活が虚しく思えるのであった。
由介は武居が持って来た喬介の電報を受け取り、雨宮のソ満国境で何か起こりそうだと伝える様に由紀子に言う。

夕焼けの工場街。
放心した様に佇む順子。

憲兵が順子の部屋を捜索している。
帰宅した順子に仲間達が憲兵の事を順子に知らせる。
部屋に入ると班長が順子に手紙の束を突き付ける。
「標からの手紙はこれだけか?」
どこかに見られてはまずい物を隠しているだろうという班長に、順子は不審があれば探せばいいと突き返す。
「手紙以外の方法で標から連絡は無かったか?」
順子はハッとする。
「あなた方はどうして今になって戦死した人の事を調べるんですか?」
「誰か連絡して来ただろう?」
「耕平さんに何かあったんですか?」
その時、憲兵が書棚の中から未検閲の手紙を発見する。
「余程大切な手紙らしいな。読んでみろ」
班長が強要するが、順子は応じない。
すると班長が手紙を読み出す。
それは耕平が入隊を決意した理由から書かれていた。
しかし実際に入隊し、その現実に絶望するに至り、班長の声は消えて行く。
だが順子はその文面を暗記していた。
班長の跡を継ぐ様に暗唱を始める順子。
…お前は何の為に戦うのか?
「止めろ!」
怒鳴る班長を無視して暗唱を続ける順子。
今は侵略軍の中に身を置いてしまった自分の過ちに後悔している…。
「止めんかっ!」
しかし順子は止めない。
「もし、生きて軍隊から逃れる事が出来たら、今度こそ僕はこの愚かしい戦争を終結させる為に、命を掛けて戦おうと思います!」
「この手紙を投函したのは誰だ!?」
顔を上げる順子。
「…耕平さんは生きているんですね?」
睨みつける憲兵がニヤッと笑う。
部屋の中を伺っていた仲間達の表情がサッと明るくなる。
「耕平さんは生きているんだわ!」
順子が喜びに叫ぶ。
「この非国民めがっ!」
班長が順子を怒鳴りつける。
「それであなた方は耕平さんの行方を捜しているんですね!?」
班長が順子に平手打ちを食らわす。
「そんなに知りたければ教えてやる。標は負傷したのを幸いに軍を脱走し敵に投降したのだ!」
憲兵たちは手紙と写真を押収し去って行く。
順子はベランダから耕平の名を泣きながら叫ぶのであった。

耕平は満州の農道を、荷馬車に揺られて移動していた。
八路軍兵士たちがもうすぐ司令部だと耕平に告げる。
そこには同じ日本人もいると言うのだ。
長閑な青空を見上げる耕平。

昭和14年5月15日。
ノモンハンで第23師団が偵察隊を突入させる。
喬介は辻参謀に兵站のアドバイスをしていた。
一方、陸軍省では板垣大臣が関東軍の対ソ戦を黙認する発言をする。
これにより関東軍の独断専行が追認される。

兵舎で翌日の狙撃手の任を言い渡された俊介は、兵達が街で抱いた娼婦の話をしているのを聞く。
東京の富豪の家に居ながら、惚れた男を追って満州まで来た女だと言う…。

ハイラルの街を行軍し、俊介の部隊が出撃して行く。
見送る女達の中に苫の姿もあった。

7月1日、安岡支隊攻撃開始。
7月2日、師団主力部隊はハルハ川渡河。
7月3日、ハラ高地占領。
世界初の戦車戦は圧倒的にソ連軍が有利だった。
日本の戦車砲ではソ連戦車の装甲を破壊出来ず、火焔瓶によるエンジン攻撃に切り替えられる。
砲撃の中を戦車隊に擦り寄って行く肉弾戦である。
狙撃手の俊介も火焔瓶を手に、敵戦車に立ち向かう。
しかしソ連軍は満州奥地まで攻め入って来なかった。
これはあくまで国境紛争であり、全面戦争にする意図はソ連には無かったのである。

ハイラル陸軍病院。
多数の負傷兵で大混乱の院内で、苫は臨時看護婦として働いていた。
介護していた重症兵の一人から俊介の消息を聞く苫。
俊介はまだ生きているのだ。
その事を知り、喜ぶ苫。

野戦司令部の参謀達の前で、柘植少佐は辻参謀に対し今回の戦闘の無謀さを非難する。
しかし辻参謀はこの戦闘は引き分けだと言う。
柘植はソ連軍がその気になったら、日本軍は完膚なきまでに粉砕されていたと主張するが、辻参謀は将兵の士気は彼我の実力の差を補って余りあると反論。逆に作戦には口を出さず、前線指揮官の職務に専念せよと柘植に言い返す。

野戦砲兵第3旅団、独立野戦重砲兵第7連隊、第6軍、ノモンハンへ移動。
軍用列車の中には徴兵された灰山がいた。
俊介達の部隊は塹壕掘りに駆り出され、8月決戦に備えた。
ソ連軍は擬音をスピーカーで流し、密かに三個師団を移動させる。
更に電話による偽暗号通信で日本軍にソ連軍の撤退を信じ込ませた。
厳冬のノモンハンは戦闘不能になるので、ソ連は越冬準備に入ったと辻参謀は考えたのだ。

哨戒中の俊介は接近して来るサイドカーに気付く。
「伍代一等兵ではないか?」
サイドカーの将校は柘植少佐であった。
お互い7月の戦闘を生き延びれた幸運を喜び、また東京の伍代家のサロンで会いたいものだと柘植は言う。
「死ぬなよ」
柘植は煙草を一箱俊介の胸ポケットに押し込み、サイドカーで去って行く。

独ソ不可侵条約締結により、ヨーロッパの脅威を政治的に取り除いたソ連であったが、日本の政府・軍部はまだその事を知らなかった。

8月28日。
遂にソ連軍の総攻撃が始まる。
塹壕の中から銃で反撃する俊介達。
迫り来る巨大な戦車に発狂する兵士。
戦車は塹壕をものともせず、俊介達を乗り越えて行く。
死体の下に隠れた俊介はソ連兵から逃れる事に成功する。

ソ連軍の火力は圧倒的で、日本軍は一方的に蹂躙されていくが、後退の要請をする柘植に辻参謀は前線の放棄を認めない。
包囲された日本軍は壊滅を続け、軍旗を焼いて連隊長達が次々と自決して行く。
柘植少佐は最早これまでと軍刀を抜き、最後の突撃を敢行する。
彼が壮絶な最期を遂げたその瞬間、東京の伍代家では何かに憑かれた様に由紀子がピアノを弾いていた。

前線は遥か後方となり、俊介達は取り残されてしまった。
同じ部隊の生き残り・沢田と会った俊介は戦場を彷徨う。
放棄された水冷機関銃の水で渇きを癒していた時、砲弾が飛んで来て沢田は死亡する。
独り自陣を目指す俊介はソ連軍戦車の包囲を掻い潜り、川の水を飲みながら死体が転がる荒野を歩く。
全滅した陣地に辿り着いた時、死体だらけの塹壕の中で水を求めて呻いている負傷兵がいた。
灰山であった。
彼は右腕を失っていた。
俊介は灰山を背負って歩き始める。
一台のサイドカーが二人を追い抜き、停車する。
そして側車から降りた参謀将校は俊介に何処から来たのかと尋問する。
所属部隊が全滅しましたと答えると、参謀はまだ貴様が生き残っているではないかと叱咤する。
「お前のような奴が勝手に陣地を放棄するから作戦に齟齬を来すのだ!さっさと持ち場に戻れ!その負傷兵は後で衛生兵が収容するから置いて行け!」と怒鳴る参謀。
これに逆切れした俊介は、灰山を降ろすと参謀に小銃を向ける。
「お訊きしますが少佐殿、自分の部隊は何処ですか?」
にじり寄る俊介の形相に後ずさる参謀。
「全滅した自分の部隊は、今何処にいますか?」
怯えた参謀は側車に逃げ込み、運転手に出発を促す。
運転手は俊介に水筒を投げて寄こし、敬礼するとサイドカーを走らせる。
残された水筒から灰山に水を飲ませる俊介。
「灰山さん、死ぬなよ。俺だって死なない。こんな馬鹿げた戦争で殺されてたまるか!」

昭和14年9月16日、モスクワでノモンハン事件に関する停戦協定が締結。
日本人死者、1万8千余名。
しかしこの後も軍律による殺人が続く事になる。
関東軍首脳は生還した指揮官達の責任を問い、次々と自決を強要する。

ハイラルに続く敗走兵達の列。
ボロボロになった俊介もヨロヨロと歩いて行く。
灰山はトラックで運ばれて行った。
娼館の女達が兵隊達に飲み物を提供している。
その中の一人、苫が幽鬼の様に棒立ちになり、じっとこっちを見ている俊介に気付く。
苫は俊介に近寄り、湯飲みを渡す。呷る様に飲み物を飲み干す俊介。
湯飲みを苫に帰すと俊介はまたゆっくりと歩き出す。
苫は大声で「あたしの所に遊びに来なよ、兵隊さん。うんと可愛がってやるからさ」とその背中に声を掛けるのであった。

無数の戦死者が火葬されている。
軍人勅諭が流れる。

一、軍人は忠節を尽くすを本分とすべし
一、軍人は礼儀を正しくすべし
一、軍人は武勇を尚むべし
一、軍人は信義を重んずべし
一、軍人は質素を旨とすべし

ノモンハン停戦前の9月1日、ナチスドイツがポーランドに侵攻。
9月3日、英仏がドイツに宣戦布告。
ここに第二次世界大戦が始まった。
ヨーロッパに始まったこの動乱はアジアにも飛び火し、日中戦争から戦火は太平洋へと拡大して行く。

監督・山本薩夫
脚本・武田敦
    山田信夫
原作・五味川純平
企画・大塚和
    武田靖
    宮古とく子
撮影・姫田真佐久
美術・横尾嘉良
    大村武
音楽・佐藤勝
録音・古山恒夫
照明・熊谷秀夫
編集・鈴木晄
助監督・岡本孝二
     後藤俊夫
制作担当者・天野勝正
        青木勝彦
スチール・井本俊
色彩計画・田島輝行
軍事指導・木島一郎
応援監督・河崎保
       ニキタ・オルロフ
協力・アエロフロート・ソ連航空
現像・東洋現像所

この作品で最も注目すべき点は、クライマックスでもあるノモンハン事件の戦闘シーンでしょう。
このシーンは実際にソ連陸軍(赤軍)の協力を得て、ボルゴグラード(旧スターリングラード)近郊の平原で撮影されました。
全二作で使用された特撮は今回は一切な無く(一部モス・フィルム作品からの流用あり・多分「ヨーロッパの解放」)、全てごまかし無しの実写です。
この第三部で描かれるノモンハン事件は世界最初の戦車戦でもあるので、制作に戦車の登場は大前提でした。
もしこれまで通り国内で撮影するなら自衛隊の協力が絶対必要でしたし、それでも当時の車両が現存しない今、戦闘の再現は難しかったでしょう。
それに映画の内容から自衛隊の協力は絶望的で、山本監督は最初からソ連に協力を求めるつもりでいました。
山本監督はソ連共産党に独自のコネで折衝を続け、遂に許可を得ます(流石赤いセシル・B・デミル!)。
流石に当時の戦車はソ連にも無く、出来るだけ古い戦車を10両程全土から搔き集め、ソ連兵のエキストラを使って撮影されたそうです。
日本軍戦車は装甲車を3台借りて適当に偽装し、でっち上げました。
日本からのスタッフは必要最低限に止め、出来るだけ現地スタッフを使用したそうですが、流石に社会主義国だけあって8時間以上は働きたがらず、監督も相当困ったそうです。

日活の体力が尽きた為、完結編となった本作。
多くのキャラクターの運命が原作から変更になります。
その中でも一番大きな変更があったのは標耕平と伍代順子の運命です。
原作では二人は結ばれる事無く、耕平は出征先で戦死。順子は東京大空襲で顔に大火傷を負うという悲劇的結末に至りますが、映画では二人は結婚し耕平は戦場で生き延び、八路軍に投降します。
意見の分かれるところかも知れませんが、映画版は希望のある終わり方だと思います。

本作は原作に無いシーンも多く、特に憲兵隊の捜索を受ける順子のシーンは実に感動的なオリジナルシーンになっています。
健気な順子のささやかな抵抗も凛々しく、耕平の左翼思想バリバリの文面が多少鼻につきますが、音楽の佐藤節独特の盛り上げ方もこれまた素晴らしく、絶望的な状況から一転する名シーンとなっています。

反対に原作にありながらも映像化されなかったシーンもあります。
最大のものは冒頭の南京事件のシーンでしょう。
原作では南京に留まった医者の梁思生が、予想に反して凶暴化した日本軍の襲撃に会いその惨劇を目の当たりにするだけでなく、病院の看護婦を守る事も出来ず自らも重傷を負います。
映画ではオープニングのメインタイトルのバックでそれらしい遠景が映るだけで、後は真偽の定かでない記録映像が繋がるだけです(死者も30万って言っちゃってるし…)。

南京事件については、現在もまだ論争が続いています。
中国側が主張する犠牲者数は年々増え続け、今では一体当時の南京の人口は何人で日本兵は一人当たり何人殺したのか、訳が分からないところまで来ています。
虐殺肯定派の主張する数字は、反日プロパガンダの影響が非常に大きいでしょう。
しかしながら虐殺は全く無く、事件は幻に過ぎないという説にも無理がある様に思えます。
五味川氏は原作において、問題視すべきは数字ではなく起こったと言う事実であるとしています。
厳格な軍紀で律せられている筈の軍隊が、如何にして暴徒化し捕虜や民間人を虐殺したのか、問題の本質はそこだと言うのです。

当時の日本人には間違いなく中国・朝鮮人に対する侮蔑的心理がありました。
加えて済南事件・通州事件といった中国人による日本人を標的にした虐殺事件を経て、その蛮行に対する当然の報復との論理が働き、死地を潜り抜けて南京に辿り着いた将兵たちの戦利的特権意識もあったとする説もあります。
現在、中国での反日暴動や日本での対中・対韓感情悪化等、時局は戦前のあの頃に少し似て来ていると思います。
日本人がこの事件に対し、もう少し冷静に分析・研究を続ける価値は、やはりあるでしょう。

当時、大部分の日本人は戦争に賛成し、軍の方針を支持しました。
言論弾圧が過酷を極めたとはいえ、戦争反対を叫んだ人はごく僅かだったのです。
理由は飢餓を引き起こすほどの貧困、世界的な大不況でした。
農家が娘を売らなければ生きて行けないという、今の我々には考えられない想像を絶する困窮です。
当然、当時の殆どの日本人は、日清・日露戦争で得た権益があると信じた中国大陸にその活路を求めます。
大陸開発こそ正義であり、それを妨害する国民政府・共産党、ソ連・欧米は悪だった訳です。
無策無能の政治家、利益主義の資本家は右翼のテロの対象となり、5・15、2・26とクーデターが発生する度に軍は「民意の代表」として権力を拡大させて行き、誰も反論出来なくなって行きます。
将来、我々の社会が同じ様な危機に直面した場合、私達日本人一人一人は冷静に政治的判断を下す事が出来るでしょうか?
民主主義の盟主である筈のアメリカやイギリスですらあの有様です。
その意味でもこの作品は、今こそ読むべき小説、観るべき映画だと言えるかも知れません。

原作の第四部「裁かれる魂」は太平洋戦争開戦に始まり、映画では遂に映像化されなかった物語の終局が描かれています。
しかしながらその内容は、意外な事に「つまらない」ものでした。
映画のファンであった私は非常に期待してこの作品を読み続けたのですが、事四部に関しては全くの期待外れで登場人物の末路の確認という以外には何の意味もありませんでした。
あれだけ生き生きとしていた登場人物たちの描写が急に生彩を欠く様になり、特に悪人達の活躍が全く無くなります。
長大な文章は膨大な資料に裏打ちされた事実の羅列に過ぎず、合間で展開される人間ドラマも歴史的事実に沿って行動しているだけで、何の意外性も感動もありません。
結局映画三部作は原作の最も面白い所のみ映像化し、竜頭蛇尾に終わる原作とは結果的に一線を画す事の出来た幸運なシリーズだったと言えます。
小説「戦争と人間」は文学史においては堂々たる大作であるにも関わらず、最終的には傑作になる事は出来ませんでした。
破滅的な総力戦に突入するに至り、個人的なドラマ描写が不可能になった訳ではありません。
五味川氏の創作意欲が明らかに低下しているのです。
自身の病気、夫人の他界に加え、どうしても五味川氏が拘った天皇の戦争責任をこの歴史小説という形では描けない事がはっきりしたからでしょう。
やる気の失せた人が描いたものほどつまらない物はありません。
最後の数冊を読むのに、私は相当苦労しました。

私も子供の頃、不思議に思いました。
枢軸国の中でなぜ日本だけ、国家元首が戦争責任を追及されずに戦後も無事でいられたのか?
朝鮮南北分断の遠因は日本にあるのではないか?朝鮮・韓国人はもっと怒っても良いのではないか?
学校で教わったのはGHQによる占領政策での天皇制保持。
しかし日本における天皇制の本当の存在意味は、学校で教わった文章だけでは決して計り知れないものでした。
ポツダム宣言受諾に至る日本政府の国体護持への拘りと、無条件降伏が決して「無条件」では無かったという、まさに日本独自の「負けるが勝ち」戦法。
日本の政治・官僚システムは誰も責任を負わなくて済む様になっており、それは天皇制も同じである…。
この事は作中でも五味川氏は触れられています。
天皇についての描写は比較的公正だったと思います。
軍の暴発がある度に昭和天皇が不快感を表明され、厳正な処罰を求めた事は作中にもちゃんと描かれています。
ただ当時の日本人の大半が信念をもって「天皇の名において」死地に赴いた一方で、そうでなかった人達にとってはやはり天皇の戦争責任の処分は釈然としないものがあったのでしょう。

日清・日露両戦役においては、日本は「勝つ」戦争では無く「負けない」戦争をしようとしました。
帝国主義世界の中で日本はあくまで謙虚に、欧米列強から優等生として見られようと振舞ったのです。
戦場で他の列強国軍が非行を働いても、日本軍は比較的紳士的に行動したと言います。
しかし皇軍不敗という伝説が出来上がってしまい、いつしか「勝って当たり前」という鼻持ちならない優越感が支配的になります。
特に「悲壮な敗北」を美徳とする風潮のあった陸軍は、人命軽視も甚だしく補給を全く無視した戦争を全世界に仕掛けます。
今の我々はどうでしょうか?
世界を相手に根拠の無い信条に囚われてはいないでしょうか?
今年で戦後72年、次の戦後が無い事を願います。

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【2017/08/15 23:58】 | 映画
【タグ】 五味川純平  山本薩夫  戦争と人間  日活  
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1969年11月、「戦争と人間 第3章 劫火の狩人・第4部(12巻)」刊行。
しかし続く「第4章 裁かれる魂・第1部(13巻)」が刊行されたのは71年の1月でした。
映画化が実現して、その完結に向けて拍車が掛かるかと思われた原作でしたが、年4~3冊ペース(68年のみ1冊)で刊行されて来た発行頻度が、明らかにダウンします。
最大の原因は原作者の五味川純平氏が、他のノンフィクション本等の執筆で多忙になって来た事。
加えて物語が太平洋戦争に突入するに及んで、少なからず著者の創作意欲の低下を感じます。
この4部作の最終章は五味川氏自身の病気、夫人の他界といった不幸が重なったこともあって、16巻と17巻の間には6年という空白期間も生じてしまい、65年に開始したシリーズ全18巻が完結したのは82年の12月でした。

戦争と人間 第二部・愛と悲しみの山河」は71年6月に公開されました。
メインスタッフ・キャストはほぼ前作と同じ。ただ、1作目では子役だった何人かのキャラクターが青年化しており、北大路欣也・山本圭・吉永小百合・和泉雅子といった当時の若手スター達が主役に躍り出ます。
サブタイトルこそ変わってはいますが、内容は原作第2章「髑髏の舞踏」とほぼ同じもので、忠実に映画化されています。
見所は特に若い彼らの成長・遍歴と時代の変遷が如何に大きく関わって行くかという点でしょうか?
一方で日活の財務状況は1作目製作時よりも更に悪化して来ており、ダイニチ映配も公開後の8月には解消されてしまいます。
邦画界が激変に飲み込まれつつあった時代、本作を取り巻く環境も予断を許さない状況へなりつつありました。

昭和7年5月15日。
海軍青年将校達が総理官邸の犬養首相を襲撃・殺害。5・15事件である。
昭和8年1月。
ドイツ・ヒトラー内閣成立。
2月、日本、国連(国際連盟)離脱。
5月、京大滝川事件発生。
7月、神兵隊事件発生。
昭和9年3月。
満州国帝政実施。
11月、陸軍士官学校事件発生。
昭和10年2月。
満州、徐在林が率いる抗日パルチザンの一団が輸送隊を襲う。彼らは冬の山野を住みかとし、日本の商隊や軍の補給隊を襲い、略奪を行っていた。
襲撃は成功し、徐在林は戦友で恋人の全明福と共に勝利の歌を歌いながら意気揚々と引き上げて行く。
しかし、関東軍の追手は確実に彼らに迫っていた。

3月。東京・伍代家。
青年に成長した耕平と俊介が庭で剣道をしている。
そこへ美しく成長した順子がお茶の支度が出来たと嬉しそうにやって来る。順子は耕平に想いを寄せており、俊介もそれに気付いていた。
俊介の部屋で耕平は、彼が描いた女性の肖像画を見る。女性の名は久慈温子。かつて俊介の兄・英介のフィアンセだった人物である。
「その女性は幸せそうには見えない」という耕平に、俊介は伍代の金で学校へ行くつもりはないかと尋ねる。
自分で出来るところまではやりたいと断る耕平に、俊介はこの話は順子が父・由介を説得して進めたものである事を伝える。

特高警察の取調室。
逮捕された灰山と陣内が過酷な拷問を受けていた。
絵の代金や原稿料で得た資金の流れを、刑事達は執拗に取り調べる。
俊介はお滝と共に面会に訪れるが、刑事からは「灰山は病気だ」と追い返されそうになる。
待合室から出て帰ろうとする俊介は、廊下の窓越しに血塗れの灰山を見つける。
「余計なものを見るな!」刑事に叱責される俊介。

俊介は「狩野」の表札が掛かった家を訪問する。
結婚して姓が変わった久慈温子に会いに来たのだ。
兄の英介に捨てられ、墜ちる様に狩野と結婚した温子を慰める俊介であったが、二人は惹かれ合っていた。
温子は夫の留守中の再会を、俊介と約束する。

伍代産業の本社では伍代財閥を糾弾する右翼団体に囲まれた英介が、彼らの持参したビラを法外な価格で買い取ろうと申し出る。
意表を突かれた運動員達に、英介は平然と「他の団体にも同様の対応をしている」と告げた。
右翼にさえ札ビラで頬を叩く、英介のやり方であった。
英介が伍代家に戻ると、満州の喬介から由介に手紙が来ていた。
関東軍の動きが顕著な満州から、喬介が由介に誘いの便りを寄こしたのだ。
満州へ同行しないかと娘の由紀子に尋ねる由介。それを聞いた英介は「満州には柘植大尉がいる」と笑う。
柘植は関東軍の特務機関にいたのだった。

日曜に再び温子のもとへ訪れた俊介。
深みにはまって行く関係に苦悩した温子は、由紀子に相談する。
由紀子は俊介に、もう温子に会わない方がいいと諭す。
しかし俊介は逆に、なぜ柘植大尉に会いに行かないのかと由紀子に反論するのだった。

満州四平衡の関東軍交通中隊。
その中には石井部隊(731部隊)の研究所があった。
上官と共にそこを訪れた柘植大尉は、捕らえた共産ゲリラに施される残虐な人体実験を目の当たりにする。
柘植大尉は上官に実験の正当性を尋ねるが、逆にその態度を戒められる。

昭和10年5月。
天津の日本租界内にて、次々と親日中国人ジャーナリストが暗殺される事件が起きる。
そこに暗躍する伍代公司の鴫田。
鴻珊子は喬介に、事件の裏で糸を引いたのかと当て推量をはかる。関東軍の勢力拡大による日本の中国支配の強化に便乗し、喬介が伍代の事業拡大を図っていると考えたのだ。
そこへ凄腕の用心棒に成長した雷太がやって来る。彼は立ち聞きから、高畠の部下の白が共産党のスパイである事を知ったのだった。
白を問い詰める雷太だったが、女学生に成長した邦が白を庇う。
それに嫉妬した雷太は憲兵隊に通報し、その事を喬介に密告する。
喬介は白の正体を知っていた。しかしあえて彼を利用する事で、敵に漏れる情報をコントロールしていたのであった。
事ここに至っては止む無しと白を見限った喬介であったが、高畠はこっそりと白に資金を提供して逃走させる。
白を連行しに来た憲兵隊は、その白を逃がした高畠を逮捕しようとするが、喬介の計らいで高畠は難を逃れる。
邦の父で同僚の梅谷は喬介の便宜を讃えるが、高畠は冷ややかに「自分にはまだ利用価値があるからだ」と言ってのける。

満州の特務警察に配属された柘植は、夜のハルピンでアヘンルートの密偵を行っていた。
飲食店で梁恩生が怪しげなロシア人と密会しているのを、気付かれぬ様に窺っている柘植。
捜査本部でアヘンの強制捜査会議を開く柘植。その最中、関東軍の倉庫が大爆発を起こす。
犯人は抗日ゲリラに合流した白であった。
白は協力者の趙瑞芳と共に馬車で逃走を図るが、柘植の率いる警察隊と銃撃戦になる。
辛くも脱出に成功した二人であったが、白は手傷を負う。

瑞芳の父であり大商人の趙大福の邸宅に、伍代由介がやって来た。
由介は喬介と共に、伍代の満州進出の為に大福の協力を得ようと画策するが、大福はのらりくらりと彼らの要求をかわす。
帰路、車中で由介は関東軍の独断専行を批判するが、喬介は「時代が違う」と兄の考えを戒める。

アヘンルートを捜査中の柘植に怪しげなロシア人が接触して来る。
彼はアヘンの密売所を柘植に密告するが、そこは満州伍代の鴫田が愛人に経営させている売春宿であった。
早速強制捜査を行う特務警察であったが、宿には鴫田がふんぞり返っており、ガサ入れを行う柘植に対し伍代の権威を盾に「止めた方がいいんじゃないですか?」と凄みを効かす。
アヘン押収に成功した柘植は意に介さずそのまま鴫田を連行するが、翌日捜査本部に喬介が怒鳴り込んで来る。
即時鴫田は釈放され無罪放免となる。
憤る柘植に喬介は説教をする。
満州国の収益はアヘンに支えられており、ソ連から日本を防衛する為にはどうしてもこのやり方が必要なのだと。
それでも柘植は公然と喬介に対して、伍代産業に対する疑問を主張する。
喬介は「お主の出世の邪魔はしたくないが…」と暗に脅迫を匂わせる。

柘植は陸軍省参謀本部に帰任した。
武居からそれを聞いた由紀子は、しかし素直に柘植に会いに行けなかった。
柘植からの電話を受けてようやく彼と会う決心をした由紀子であったが、その日永田鉄山軍務局長が省内で惨殺されるという事件が発生する。
陸軍省皇道派相沢中佐による「相沢事件」である。
柘植は由紀子に電話で会えなくなった事を詫びるが、由紀子は一方的に電話を切ってしまう。

同じ頃、英介は温子と料亭で密会していた。
温子は事業の失敗で困窮する夫を救う為、英介に援助を求めて来たのだ。
英介の下心は見え見えだったが、温子には如何ともし難かった。
しかし料亭を出る二人を俊介が待ち伏せていた。
俊介の非難に温子は逃げ出し、英介は「学生のくせに人妻の後を追い回すな」と俊介を叱る。

標耕平が俊介の留守中伍代家を訪れる。
俊介の部屋に通された耕平は書棚を探し回るが、目的の書物が見つからない。
そこへ順子がやって来て自分の部屋へ耕平を誘う。
彼女が自室で耕平に差し出したのは、耕平が俊介の書棚に隠していた左翼機関誌であった。
驚いた耕平は順子にこれ以上関わらない様に諭す。
耕平を慕う順子は、彼の役に立ちたい一心で行動した事を明かす。
「日本は戦争の邪魔になる人間を探し出そうとしている」と危険を訴える耕平。
しかし順子は「あなたの事をもっと知りたい」と、聞く耳持たぬ一途さで縋るのであった。

昭和10年2月。
冬山に追い込まれた中国共産ゲリラ達。
同じく追い込まれた農民たちも飢餓に瀕し、餓死者が続出していた。
ゲリラ内では白を中心にした中国人グループと徐在林を中心にした朝鮮人グループの対立が顕著になって来た。
徐在林は下山して打って出る事で、一気に事態の解決を図ろうとするが、白永祥はグループ内に女子供もいる事を理由に反対する。
自分の方針が尽く否定される中で、徐在林は「自分が朝鮮人だから」受け入れてもらえないのだと曲解する。
結局徐在林は白と決別、長白山の金日成率いる抗日パルチザンと合流する為に馬で脱出する。
しかし下山途中、日本の掃討部隊を目撃した彼らは、共産ゲリラを守る為陽動作戦に出る。
逃げる徐在林達を掃討部隊が追撃する。
そしてその最中、徐在林の恋人・全明福が撃たれてしまう。
敗走するゲリラたちの中、全明福を抱いて冬山を逃走する徐在林。
彼は戦場を離脱し、全明福を背負い雪山を独り彷徨う。
全明福は既に死んでいた。
徐在林も力尽きようとしていた。
泣いて謝りながら全明福の死体を雪原に埋める徐在林。
沈む夕日に向かって、彼は再び歩き出す。

昭和11年2月11日。
青年将校による政府要人襲撃事件が発生。「226事件」である。
首謀者は全員処刑。
耕平と俊介はこれからの事を話し合っていた。
俊介は大学を辞め、満州へ行こうと思うと耕平に告げる。
戦争で稼ぐ伍代産業に嫌気が刺したこともあったが、温子の事もけじめをつけたかったのだ。
しかし耕平は俊介に「贅沢な悩みだ」と言う。

雨の中、梅谷邦が靴を抱えて裸足で走って行く。
就職した邦は買ったばかりの靴が汚れるのが嫌で、裸足で泥から守っていたのだ。
彼女は途中、日本人の中年男性と青年が言い争っているのを見る。
青年は満州へやって来た俊介であった。
人力車の日本人客が中国人車夫に料金を払うの渋り、見るに見かねて口を出したのである。
中国人を完全に見下した日本人客は、俊介の物言いに憤慨するが、小銭を泥に投げ捨てると俊介に名を尋ねる。
俊介が名乗ると日本人客は納得した様に立ち去る。
車夫は怒って俊介が拾ってやった料金も受け取らずに去る。
邦は俊介との再会を喜ぶ。
二人は並んで歩き出す。

内地では治安維持法による左翼一斉検挙が始まっていた。
大学を辞め工場で働く耕平は、兄と同じ本格的な左翼活動家として行動を始めていた。
その耕平を訪ねて工場へやって来た順子は耕平が休んでいる事を知るが、その同僚から刑事が来た事を聞かされる。
慌てて耕平の下宿へ向かう順子。
下宿では耕平が書籍や書類を火鉢で焼いていた。
耕平は順子に間違いなく自分は逮捕されるので、もう忘れる様に告げる。
しかし順子はいつまでも待つと答える。

特高警察に逮捕された耕平は牢に入れられる。
同室の学生・島津は酷い拷問を受け、夜中に高熱でうなされる。
耕平は看守に治療を要求するが、「明日になったら医者に見せてやる」と相手にされない。
耕平はトイレから運んで来た水を島津に飲ませ、壁にじっと当てて冷やした手で島津の額を冷ましてやる。

逮捕された耕平を助ける為、順子は父・由介に援助を求める。
しかし由介は、私は秩序を守る立場の人間であり、標耕平は破壊する立場に回ったと冷徹に言い返す。そしてなぜ順子がそこまでして耕平に肩入れするのか尋ねる。
「気の毒な境遇でしょう」と同情を露にする順子に、「気の毒は男の売り物にはならん」ときっぱり切り捨てる由介。
自分でした事は自分で始末をつけなければならないと順子に言い、この上は順子自身一生消えないレッテルを貼られない事だと忠告する。

耕平が初めて取り調べを受ける。
取調官にカツ丼を勧められる耕平。
入れられた茶に手を伸ばし、「頂きます」と口に含んだ瞬間、「読書会にはいつ入ったんだっ!」と猛烈な平手打ちが飛ぶ。
隣の部屋では向かいの牢に居る朝鮮人の朴が逆さ吊にされ、竹刀で滅多打ちにされている。
重箱の隅を突く様な陰湿な取り調べが続き、今までに読んだ書籍の類、天皇制に対する思想等が徹底的に追及される。
耕平は何も喋らなかった。
入院した島津の代わりに、拷問を受けて重傷となった朴が耕平と同室になる。
朴は耕平に「頑張ったか」と訊く。
頷く耕平。
「えらいぞ」朴は耕平の横に横たわる。「君たちは大変だな。ここから出たら直ぐに軍隊だ」
「喋っちゃいかん!」看守の怒鳴り声に沈黙する二人。
筆談でどうせ死ぬなら朝鮮で死にたいと訴える朴に、耕平は家族はいないのかと尋ねる。しかし朴の家族は関東大震災の朝鮮人虐殺の犠牲となっていたのだった。
「死ぬなよ」と耕平が言う。「朝鮮があんたの手に戻って来るまで、殺されたって死ぬな!」

かつて満州事変を実行した張本人・石原大佐が関東軍本部にやって来た。
石原は板垣参謀長ら関東軍幹部に、戦線の不拡大と中央の命令厳守を訴えに来たのだが、誰も相手にしない。
喬介は会席の場で、「あんたを模範とした」と石原に言うが、逆に石原は東京の軍本部も伍代由介も、これ以上中国に深入りすべきでないという意見であると答える。

大連で生活している俊介のホテルへ、一人の日本人中年男性が訪れる。
かつて人力車の料金の件で俊介と口論になった男だった。
彼の名は狩野市郎。温子の夫である。
伍代財閥に巣食おうと、俊介に纏わり付いて来たのだ。
狩野は温子をこの部屋へ呼ぼうと言う。
俊介は狩野を侮蔑し、部屋から追い出す。

俊介から来た手紙を持って由紀子に相談する温子。
手紙には温子に満州へ来る様に書かれていた。
由紀子は既に温子の心が決っており、既に引き戻せない事を悟っていた。

大連で俊介は温子を迎える。
二人は楽し気に今後の事を話し合う。
俊介はロシア語の翻訳でもして生活費を稼ぐつもりだと言うが、間もなく兵役が来る事を気に病む。
その様子を狩野はじっと見ていた。
狩野は俊介に「私は離婚しませんよ」と言い放つ。
俊介は喬介の下に行き、金を無心する。
「色恋沙汰でみっともないと思わんか?」と呆れる喬介だが、条件付きで俊介に金を渡す。
天津で高畠と協力して工場用地を探せというのだ。
ホテルに戻った俊介だったが、温子は姿を消していた。
その頃、彼女は夫と共に更に奥地行きの列車に乗っていたのだった。

12月11日、西安。
張学良の指示により、蒋介石拉致計画が実施される。
西安事件である。
西安飛行場には周恩来・葉剣英ら共産党幹部が降り立ち、事態は国共合作へ向けて大きく動き出した。

趙大福の屋敷で西安事件を話し合っている服部医師・趙延年・瑞芳・梁思生。
瑞芳は服部医師を誘い出し、自分の身に危険が迫っている事を告げる。
対日テロの犯人として間もなく逮捕されるというのだ。
驚く服部は香港への脱出を勧めるが、瑞芳は日本人に化けてホテル住まいを続けるという。
その頃、父の趙大福は関東軍憲兵隊に逮捕されていた。

奉天の街で、服部は工作員の接触を受ける。
瑞芳の無事を確認しに来たのだ。
彼は服部に、三日後亡命するよう瑞芳に伝えて欲しいと頼む。そして蒋介石が南京に戻り、第二次国共合作が成立した事も伝える。
服部は瑞芳にその事を伝えるが、彼女は亡命せず抗日活動を続けるという。
そこへ突然、鴻珊子が部屋へ入って来る。
彼女は喬介の差し金で瑞芳の手配書が間もなくこのホテルにも回って来る事を知ったのだった。
瑞芳の亡命を多額の報酬で請け負ってもいいと服部に提案する鴻珊子。

下宿に戻った服部を待っていたのは、大塩雷太だった。
彼は瑞芳をつけ狙っており、服部が彼女と関係している事に感付いていたのだ。
服部を脅す雷太だが、服部は逆にこれ以上中国から奪ってもいずれ奪回されるだけだから諦めるよう伍代恭介に伝えろと言う。
雷太は捨て台詞を吐いて立ち去る。

奉天駅で張り込んでいた雷太を撒く服部。
しかし検問中の官憲に捕まってしまう服部は、到着した瑞芳と鴻珊子を見つける。
官憲達の注意をひくため、派手な脱走を試みるがあえなく捕まってしまう服部。
しかしその傍らを瑞芳と鴻珊子は無事通過出来たのだった。

昭和12年7月8日。
北京近郊・盧溝橋にて日本軍と中国軍の間で戦闘発生。
盧溝橋事件である。
日本は新たに中国へ三個師団の派遣を決定。
それに対して蒋介石は対日戦の決意を表明。

外出中の由紀子は、車中から偶然柘植を見掛ける。
車を降り、柘植に寄り添う由紀子。
再び戦場へ赴く事になった柘植に、由紀子は結婚したのかと尋ねる。
柘植は金沢で一度結婚したが、女はいつまでも待てないと言われたと答える。そしてこの戦争が終わるまで待って欲しいと言い残し去って行く。

釈放された耕平は、下宿で順子と抱き合っていた。
既に入営が決っている耕平は、徴兵に応ずるか、拒否して投獄されるか、逃亡するか、未だ悩んでいる。
戦死した兄が行った左翼活動が正しかったかどうか判らないが、愛する人を不幸にする悩みからは免れた様だと順子に言う耕平。
順子は「私、不幸じゃありません」と答える。「どうするかはあなたが決めればいい。私はあなたがなぜそうしたかを理解したい。あなたには生きてさえいてくれればいい」
しかし耕平の表情に、その生存こそが最も難しい事だと気付く順子だった。

天津の街頭、抗日デモを横目に俊介が高畠に話している。
「関東軍特務機関でロシヤ語の通訳をすれば、兵役を免除される。あなたならどうしますか?」
その側を馬車が通る。
乗っているのは狩野、御者は鴫田であった。

奉勅命令下る。
天皇の全責任において、軍の出動が命令されたのである。
宣戦布告なき開戦。
8年間にわたる日中戦争の始まりであった。

監督・山本薩夫
原作・五味川純平
脚本・山田信夫
    武田敦
企画・大塚和
    武田靖
    宮古とく子
撮影・姫田真佐久
音楽・佐藤勝
美術・横尾嘉良
    深民浩
編集・丹治睦夫
録音・古山恒夫
スクリプター・土屋豊
助監督・加藤彰
     小島義史
照明・岩木保夫
制作担当者・柴垣達郎
スチル・土屋豊
色彩計画・内田周作
       佐藤重明
史料考証・澤地久枝
言語指導・古場重幸
       宋元旲
軍事指導・木島一郎
特殊撮影・日活特殊技術部
特撮美術・成田亨
現像・東洋現像所

この第二部はそのタイトルからも判る通り、男女間のラブストーリーと悲劇にスポットライトを当てており、第一部に比べるとかなりソフトな感じになっています。
柘植(高橋英樹)と由紀子(浅丘ルリ子)、耕平(山本圭)と順子(吉永小百合)、俊介(北大路欣也)と温子(佐久間良子)、そして三部での波乱を予感させる俊介と邦(和泉雅子)。
他にも瑞芳(栗原小巻)と服部(加藤剛)、徐在林(地井武男)と全明福(木村夏江)…。
因みに原作では大連で俊介と別れた温子は、夫と共に北京郊外の通州に赴き、そこで不幸にも通州事件に遭遇し、中国人の暴徒達に虐殺されてしまいます。
山本監督の構想では、続く三部は俊介と邦の壮大なラブストーリーになる筈だったのですが、結局シリーズの短縮決定でそれは叶わず、邦の設定はこの二部限りで消滅してしまい、三部のヒロインは苫(夏純子)に奪われてしまいます。
原作において邦はシリーズを通して非常に存在感のあるキャラクターだっただけにこれは残念です。彼女の消滅に引きずられる様に雷太も消滅、そしてあろう事かあの悪の権化・鴫田(三國連太郎)まで消えてしまったのですから。
瑞芳と服部の運命も、原作では終盤731部隊での悲劇的な再会に続くのですが、やはり邦同様この二部で完結となってしまいます。

この作品で最も強烈な個性を放っていたのは山本圭演ずる標耕平ではないでしょうか?
左翼青年=山本圭のイメージはこの作品で確立したといっても良いと思います。
叔父の山本監督の演技指導の賜物でしょうが、特高の拷問や軍内部のしごきにもひたすら耐え、自分の信念のみで生きて行くその様は実に凄まじい物があります。
でも個人的にはあまり好きではないのですが、この映画版の耕平は…。余裕が無いというか、理屈っぽくて人間性を否定している様で。
順子演じる吉永小百合は相変わらずの可憐さで、第三部の公開直前には実生活でも結婚されるのですが、映画では原作とは違うヒロインの運命を演じて行く事になります。

さて、斜陽が続く邦画界の中、日本最古の映画会社である日活は本作公開後、大映とのダイニチ映配を解消。
追い詰められた経営陣と労働組合が選んだ道は、何と成人映画路線への完全転向という、想像の遥か斜め上を行くものでありました。
大手メジャースタジオが低予算ポルノ映画製作に専念するという前代未聞の事態に、本シリーズも制作方針の大きな転換を迫られます。
専属俳優の離脱、スタッフの流出等、危機的状況の中で完結編は製作されます。


【2017/08/15 23:15】 | 映画
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映画「戦争と人間」の第一部は、1970年の夏に公開されました。
65年に刊行が開始された原作本は、既に前年までには第3部最終巻(12巻)が発売されており、当初日活が予定していた全4部構成の映画製作完了には、十分完結が間に合う見込みでした。
ただ映画業界の斜陽が非常に深刻化して来たのもこの時期であり、特に経営母体が脆弱でスター俳優の流出が続いた大映と、同じくスター俳優の流出、ヒット作に恵まれなかった日活が連合を組み、配給網を「ダイニチ映配」に統合。
邦画5大メジャーの2社がそれぞれの劇場でお互いの作品を上映するという異例の事態の中、この超大作は公開されたのです(公開館は洋画系)。

昭和3年1月。
陸軍士官学校の大講堂で居並ぶ士官候補生を前に演説をぶつ教官。
「満蒙は我が日本帝国の生命線である!」
巨大な中国・満州地方の地図。
時は弱肉強食の帝国主義が吹き荒れる時代。力がものを言う軍人の時代。そして世界恐慌を迎えつつある暗黒の時代であり、日本人の誰もが日清・日露両戦役で「権益」を得たと信じる大陸への進出を夢見た時代でもあった。

中国長春郊外で寒村を回診中だった在満邦人の不破医師は、突然匪賊の襲撃に出くわす。
満州は今、勢力拡大を図る日本軍に対抗する抗日ゲリラと、それに呼応するが如く裕福な農家を襲う匪賊で無法地帯と化していた。
略奪と破壊で大混乱の村の中、不破は身を隠して難を逃れる。
満州は暴力と阿片が支配する地と成り果てていたのだ。

その満州で日本の新興財閥「伍代産業」の現地法人「伍代公司」幹部・鴫田が暗躍する。
暴力と殺人、阿片で満州を征服しようというのだ。
「伍代公司」社長・伍代喬介は闇の仕事は鴫田に任せ、匪賊や現地人と和する仕事は同じく幹部の高畠に任せようとする。
その喬介は、軍事力による満州支配を考えていた。

日本・東京。
標拓郎は弟・耕平とと二人暮らしで左翼活動を続ける、伍代産業勤務の労働者であった。
その拓郎が「315事件」で警察に逮捕される。
治安維持法が改悪され、あらゆる反国家的な言動が弾圧の対象となりつつあった。最早国民に言論の自由は無かったのだ。

東京の伍代家では長男・英介の渡米送別会が行われていた。
子供のいない伍代産業幹部技師の矢次は、部下である拓郎の弟・耕平を保護者としてパーティーへ連れて行く。
矢次は伍代家長女の由紀子と不倫関係にあった。しかし由紀子は彼女の挑発に乗らない矢次の優柔不断さに業を煮やしていた。
伍代家のサロンでは英介と喬介、そして伍代家の当主・由介が満州における日本の軍事行動の可能性について意見を戦わせている。
「軍人さんの出番なんだよ」在留邦人の保護と権益の確保に外交の限界を感じている喬介は、参謀本部・佐川少佐の前できっぱりと断言し英介も同調する。
その中で未成年ながら反戦的な意見を臆せず述べる次男・俊介。喬介はその態度を頼もしく感じる反面、将来に対する不安を感じる。
耕平はこのパーティーで、俊介と伍代家次女・順子と運命的な出会いをする。耕平は俊介がブルジョアらしからぬ平和主義的な理想の持ち主である事に驚き、順子の無邪気で純粋な心に惹かれた。
佐川少佐と共に会に同席した柘植中尉もまた、由紀子との劇的な出会いでその男勝りの気性に惹かれる。由紀子は満州における日本進出の本質を見抜いていたのだ。その由紀子も実直な柘植に好意を持つ。
そのサロンに風雲急を告げる伝令が飛び込んで来る。
中国山東省済南で蒋介石率いる国民軍と日本軍の衝突が決定的になったというのだ。

済南事件は国民軍の一部が現地在住の日本人を襲撃したもので、そこには鴫田の姿があった。鴫田は中国人をそそのかし、日本人を襲わせていたのだ。
しかし日本軍との正面衝突を嫌った蒋介石は済南を迂回、戦火は辛うじて拡大せずに済んだ。

「伍代公司」の高畠は喬介の密命を受け、部下の白永祥と共に匪賊の大頭目と命懸けの交渉を行っていた。
略奪で人民の恨みを買うのではなく、物流に通行税を掛けて穏やかに利益を得ようと言うのだ。そしてそれは農民達の安寧に繋がる。
中国に野心を抱く関東軍(日本陸軍中国関東州守備隊)と伍代財閥の方針に高畠は賛同しなかったが、現地の人々と共に生きる平和的な交渉は願うところであった。
高畠の交渉は成功し、伍代公司は匪賊から通行手形の割符を得る。
しかし万が一、裏切りが発生した時には恐るべき報復が待っていた…。

喬介は女スパイで愛人の鴻珊子との密談中、奉天総領事館員篠崎の訪問を受ける。
篠崎は行方不明の高畠の妻の依頼で、その上司である喬介に会いに来たのだ。
関東軍と気脈を通じ大規模侵攻を画策する喬介は、その為に必要な奉勅命令(天皇の命令)を得る算段を練っていた。
篠崎は喬介の計画を批判するが喬介の眼中には外交官の存在は全く無く、「あんたらに任せても満州の夜明けは来ない」と逆に反論する。
篠崎は「あなた達のやり方では、満州の夜明けは血で染まりはしませんかね?」と皮肉る。

素子が宿に戻ると、そこに高畠がいた。
任務を終えて生還して来たのだ。
素子は今後、二度と高畠と離れない事を誓う。

東京では耕平が矢次の下を離れて一人住まいを始め、拘置所の拓郎に時折面会を求める生活を送っていた。
その耕平は俊介と共にプロレタリア画家・灰山の部屋を訪れる。俊介は灰山の作品に感銘を受け、貧乏作家・陣内の悪態に傷つきながらも、父・由介に灰山の作品を買って欲しいと頼み込む。
しかし由介は俊介の考えを「偏った思想」と断じ、貧しさを嘆くのではなく、貧しさを無くさなければならないのだと俊介に説く。その為には「日本に当然の権利がある」満州を開発しなければならないのだと…。

5月、奉勅命令が出ないまま関東軍は旅順から奉天へ移動する。
河本大佐による独断専行であり、その動きを察知した喬介は「伍代公司」の荷馬車の全てを奉天へ送り込む。
その関東軍が待ち構える奉天近郊へ、満州軍閥の張作霖を乗せた列車が近づいていた。

奉天では不破医師が友人の奉天医大医師・服部と共に医学生・趙延年の屋敷を訪問していた。
彼らは延年の妹・瑞芳を交えて麻雀を楽しむ。しかし二人は趙家訪問の直前、闇夜の中で見知らぬ日本人の男・鴫田から「城内から出るな」と脅迫まがいの警告を受けていた。
…日本の特務機関が何かやる気なのだ。
趙兄妹は満州での日本の暗躍を冷静な目で観察していた。延年は瑞芳が日本へ留学すれば良いと二人に言う。日本へ留学した中国人は間違いなく反日派となると言うのだ。
服部は瑞芳に好意を感じ、日本人相手の婚約者候補に冗談半分で名乗りを上げる。
ちょうどそこへ兄妹の父・趙大福がやって来て、この夜中に張作霖を駅まで迎えに行くと言う。

疾走する列車が爆破され、張作霖が殺害された。
関東軍の仕業である。
爆破を中国軍の犯行とした関東軍は奉天総領事館に街の防衛を進言する。
しかし総領事に代わって対応した篠崎は、やんわりと拒否するのであった。

麻雀中に事件を知った服部達は事の真相をあれこれ推測する。
日本陸軍のテロ行為を批判する趙延年に対し、服部は「日本ならもっと堂々とやる」と反論し、延年を呆れさせる。

国際社会の注目する中、非難は日本に集中しつつあり、喬介は河本大佐の計画の甘さを怒りながら、次の手を考える。
12月、張作霖の後を継いだ息子の学良が、蒋介石と手を組んだ…。

1年後、昭和5年正月。
長春の不破の家で、服部は新年を不破と二人で祝っていた。
そこへ怪我をした男が乱入して来る。彼の名は除在林。日本人相手に凶悪な犯罪を繰り返し、ここまで流れて来た朝鮮人であった。
除在林は二人に治療を要求し、食事と金も無心する。
脱走囚である彼を追って来た警官隊が屋内の彼に気付き、除在林は「俺の名を覚えておいてくれ」と二人に言い残し、そのまま逃亡する。そしてその際、警官の一人を刺殺してしまうのだった。
殺された大塩巡査の息子・雷太は、その葬儀の場で朝鮮人に対する復讐を誓う。
雷太の幼馴染・梅谷邦は、両親に雷太の保護を求める。邦の父は「伍代公司」の社員だった。

天真爛漫な少女・邦は、高畠の部下・白の小さな友人でもあった。
白は邦に例え話で日本の中国侵略と満州進出の構図を聞かせる。
幼い邦は日本の中国に対する理不尽な行動にただただ憤慨する。
中国人である白は、伍代公司に潜入した共産党員であった。
その頃、社長室では喬介の前で関東軍参謀・石原莞爾中佐が高畠を匪賊に協力した罪で追及していた。
…石原中佐は高畠が開拓したルートを、関東軍の諜報活動に利用出来ないかと考えていたのだ。
喬介は協力に対する対価を引き出す駆け引きを忘れなかった。

5月、間島共産党暴動が荒れ狂う満州で、高畠が徐在林に拉致される。
中国共産党員であった白に救出された高畠であったが、この事は徐在林と白の間に亀裂を生む。
高畠の妻・素子は夫の生還を喜ぶが、その幸せも束の間であった。

東京。
未曾有の大不況に人々は悲鳴を上げていた。
「満州だよ!満州さえ手に入れば何とかなるんだよ!軍人にやらせればいいんだよ!」
屋台のおでん屋で飲んだくれる男の愚痴は、一般庶民誰もが思う本音であった。
その片隅で食事をしている耕平と俊介。
耕平の兄・拓郎は釈放され間もなく徴兵で満州へ出征するが、俊介の兄・英介は伍代の力で徴兵を免除されていた。
耕平は憤慨し、俊介は心を痛める。

仙台の第三師団へ入営した拓郎は、ある夜同僚が寝床の中で泣いているのに気付く。
聞けば彼の妹が身売りに出されたのだという。
不況と貧困は、容赦なく日本の農村を直撃していた。
そしてその鬱積が爆発するまで、そう時間は掛からなかった。

東京の伍代産業で大規模なストライキが発生する。
工場に突入した警官隊が労働者達を弾圧して行く。
それを目の当たりにした俊介は、工場の門扉にしがみ付いて絶叫する。

伍代家では矢次が由介に、従業員の賃上げを嘆願していた。
このままでは生産性も落ち、どんどん効率が悪くなる。極端な円安で輸出は絶好調なのだから、多少無理しても賃金を上げた方が得策であると説得する。
しかし由介にも英介にも取り付く島は全く無く、由介は争議を拒否する。
帰宅した俊介が、由介に泣きながら工場で見て来た事を訴える。
その様子に由紀子は、俊介の中に伍代家の微かな希望を見る。
自室に籠る俊介を、母代わりに彼と順子を育てた女中頭のお滝は、しかし俊介に「お金持ちと貧乏人は決して仲良くなれません」と無情に諭すのであった。

満州に喬介と英介がやって来た。
ホテルに滞在中、服部・不破・延年と会食している瑞芳に目を付けた英介に、鴻珊子は彼女が大地主・趙大福の娘であると教える。
服部は英介の視線に気付いて「失礼な奴だ」と不快感を露にする。そして趙兄弟に彼らが日本の死の商人・伍代財閥の一員であると教える。
延年は「美しい女性を眺める事は必ずしも失礼な事では無い」と理解を示し、英介は強引に彼らと同席する。

夜道を独り、帰路を歩く喬介。
人気の無い街路で、喬介にピッタリとロシア人の男が二人寄り添って来る。
彼らは喬介に危害を加えようとするが、いつの間にか馬車で駆けつけて来た鴫田の拳銃と、喬介の仕込み杖に倒される。
著名な在満邦人の殺害こそ、関東軍出動の大義名分に十分であった。

10月、台湾で少数部族による反日暴動「霧社事件」が発生。
日本軍による鎮圧は夥しい犠牲者を生む。
柘植中尉はその調査の任に着くため、伍代家に挨拶に来る。
そして再び由紀子に会い、お互いの気持ちを確認するのであった。

翌、昭和6年4月。
高畠が開発した伍代公司のルートを進む輸送隊が、突然匪賊の襲撃を受ける。
輸送隊の中に関東軍特務機関の諜報員が紛れていたのだ。
直ちに報復手段として伊通の伍代公司営業所兼高畠の自宅が焼き討ちされ、素子が誘拐される。
異常に気付いた喬介は鴫田に調査を命ずるが、その時血相を変えた高畠が社長室へ飛び込んで来る。
彼は匪賊の襲撃時、丁度不在で無事だったのだ。
高畠は喬介に金と銃を貸して欲しいと頼むが、もう無駄だろうと喬介は言う。
それでも身代金を手にした高畠は、白と共に匪賊の大頭目と会う。
大頭目によると、素子は共産匪が連れて行ったと言う。その共産匪のアジトに向かうと、そこに居たのは徐在林であった。
徐在林は、目を離した隙に素子は自殺してしまい、死体は山の麓に埋めたと言う。
逆上した高畠は「お前たちに出来る事は女を犯し殺す事だけか?」と徐に詰め寄る。
しかし逆に徐は「殺されたくなかったら大人しく日本にいろ」と凄む。彼の家族は「万歳事件(三・一独立運動)」で日本官憲に虐殺されたのだった。
朝鮮独立の凱歌を高らかに歌う徐在林達を後に、高畠は何とか素子の死体を探そうとするが、白の説得で諦めて帰路に着く。

東京では一時帰宅を許された拓郎が、耕平と最後の休暇を楽しんでいた。
拓郎は耕平に「何も信用するな。女でも思想でも、本当に理解出来るまでは何もするな。自分の上に立つ人間がいたら、そいつがどんな人間なのかよく見るんだ」と教える。左翼思想に翻弄され、その組織にまで裏切られた拓郎の苦言であった。
夜中、寝付かれずに寝床で相撲を始める二人。
耕平は泣きながら、兄に死んだら嫌だと言う。
「俊介君の兄さんは兵隊に取られないんだ!」
「伍代の御曹司だからな」
満州事変まであと僅かであった。

6月、蒙古に近い大興安嶺地区で調査活動を行っていた日本軍の中村大尉と井杉曹長が、張学良配下の中国官憲に殺害され物品の一切を略奪されるという事件が発生する。
関東軍の調査で事件の詳細が報道されるや日本国内世論は沸騰し、日中関係は一触即発の状態となる。

柘植中尉が帰国して来た。
しかし霧社事件報告書における日本の植民地政策批判が災いして、金沢へ左遷となったという。
無関心を装う由紀子に、執事兼秘書の武居が柘植を追わないのかと尋ね、彼女の平手打ちを食らう。

関東軍本部。
満州浪人や国士達に囲まれ、対中関係の弱腰を責められている石原中佐。追い詰められた彼は、いざとなれば2日で奉天を撃滅すると断言する。

喬介の満州での根城「田伏旅館」。
その風呂で鴻珊子との混浴を楽しむ喬介。二人は関東軍の動向を語り合っていたが、その様子を大塩雷太が覗いていた。
彼は旅館に風呂焚きとして雇われていたのだ。

9月18日、柳條溝(柳条湖)で関東軍が南満州鉄道を爆破する。
これを中国側の犯行として関東軍は出動の口実とする。
しかし一向に反撃してこない中国軍に、業を煮やした板垣大佐は一方的な砲撃を命令する。

深夜、事態に気付いた喬介は、そのナイフ使いに目を付けた雷太に伍代公司へ行って人を集めさせる。そして、もし逃亡する者がいたら、殺しても構わないと言う…。

殺気立った関東軍本部に森島総領事代理と篠崎書記官が出向く。
血気逸る参謀達を相手に、篠崎は「命令無く外国に戦闘を開始した者は軍法により死刑になる」と言い放つ。
怒り狂った将校の一人が軍刀を抜いて突き付ける。「帰れ!」
怯えた総領事代理が篠崎を連れ出そうとするが、「今、日本の上を決定的瞬間が過ろうとしている。ここで逃げ出せば外交官はその存在意義を失う」と篠崎は森島代理に言う。
しかし板垣大佐を抑える事は最早不可能で、二人は参謀達の罵声を浴びながら本部から立ち去るのであった。

長春南嶺砲兵営攻略戦。
標拓郎はそこに居た。
敵陣からの機銃掃射で、部隊は身動きが取れない。
拓郎の援護で戦友の一人が手榴弾による敵陣地の破壊に成功するが、拓郎自身は敵弾を頭に被弾し死亡する。

雨の東京。
新聞配達を終えた耕平が下宿に戻って来ると、部屋では俊介が待っていた。
黙って紙片を差し出す俊介。拓郎の戦死通知であった。
「馬鹿だな…死んじゃった」静かに泣く耕平。

奉天のホテルは日本軍によって安全が守られていた。
そのバーで関東軍の動向について静かに語らい合っている服部・延年・瑞芳。
彼らのテーブルに一人の満州浪人が寄って来て因縁をつけて来る。
「酌をしろ」瑞芳に強要する大陸浪人。
軍の威力を背景に、日本人はどこまでも現地人に対して傲慢であった。
そこへ英介が現れ、「伍代」の名を語って浪人を追い払う。
彼らに同席した英介だが、程なく離席した瑞芳の後を追って散会となる。

瑞芳の部屋を訪れる英介。
彼は部屋の鍵を閉めるや瑞芳の服を引き裂き、ベッドへ押し倒す。
英介に凌辱された瑞芳は、「ここで私を殺さなければ、人を雇ってあなたを殺す」と復讐を誓う。
しかし英介は嘲り笑うだけであった。
「ふざけるな。ここはもう満州じゃない。日本だ」
部屋を出ようとする英介は、服部医師と鉢合わせする。彼は胸騒ぎを覚えてホテルへ戻って来たのだ。
「出て行け、伍代の御曹司!貴様の様な奴は日本人の恥だ!」
服部は怒鳴る事しか出来なかった。
瑞芳を慰める服部だったが、日本人の彼が何を言っても無駄であった。

英介の不始末を知った喬介は、社長室で英介を殴りつける。
「貴様の様な馬鹿者が後継者では、伍代もこれまでだ!」
憤慨する英介だが、趙大福がその気になればお前なんか簡単に消されてしまうと、喬介は怒鳴りつける。
自分の身は自分で守ると拳銃をちらつかせる英介。
喬介は部屋にいた雷太に指示し、投げナイフで英介を威嚇させる。雷太は喬介の用心棒となっていたのだ。
「この小僧に一晩で三人の男が殺された」
喬介は鴫田に、英介をハルピンに連れて行ってそこで鍛え上げてくれと頼む。
「英介さんに出来ますかね」ほくそ笑む鴫田。
彼らの会話を聞いていた高畠は、「また人殺しの相談ですか」と冷ややかに言う。
「お前、何で伍代辞めないんだよ?」
鴫田の問いに高畠は、自分の部下の妻を殺した人間の末路を見届けたいからだと答えて立ち去る。
鴫田は喬介に、いいんですか?と尋ねるが、喬介は放っておけと言う。
「あんな個人的な感情は、この先戦争に圧し潰されてしまう」

満州事変勃発後、世界は大きく変動し、日本の右傾化は一気に進む。
そして上海事変を契機に、天皇は陸軍の出兵を許可する。

昭和7年、2月。
上海への出征が決った金沢の柘植中尉の下へ由紀子が訪れる。
「私、自分の事は自分で始末出来ましてよ」
柘植はやっと由紀子の気持ちを受け入れたのであった。

由介は帰って来た由紀子に、柘植との関係を問い質す。
結婚するつもりなのか?遊びなのか?
「私は夢中になりたいものが欲しいだけ」
由紀子は父に本心を語った。

戦火は遂に上海にまで及んだ。
戦場に突入して行く柘植中尉。
激動の時代は、まだ始まったばかりであった。

監督・山本薩夫
原作・五味川純平
脚本・山田信夫
企画・大塚和
    武田靖
    宮古とく子
撮影・姫田真佐久
照明・岩木保夫
録音・古山常夫
美術・横尾嘉良
    深民浩
編集・丹治陸夫
音楽・佐藤勝
助監督・加藤彰
     小泉義史
製作担当者・柴垣達郎
        福田慶治
色彩計画・内田周作
       佐藤重明
史料考証・沢地久枝
言語指導・盧星晃
軍事指導・木島一郎
応援監督・磯見忠彦
特殊撮影・日活特殊技術部
現像・東洋現像所
協力・北海道中標津町

長大な超大作ですが、非常に密度の濃い内容です。
公開当時は膨大な製作費にも関わらず大ヒットを記録し、経営危機にあった日活の業績向上に大きく貢献しました。
内容は原作にほぼ忠実で、何よりも登場人物が非常に上手く再現されています。
原作においては登場人物や団体は全て架空の物であり、史実の人物や企業などと直接関わる事はありません。しかし実在の人名も企業名も実名で登場しており、伍代財閥は三菱・三井ら巨大財閥の後に続く新興財閥であり、生き残る為に大陸進出を目論んだという設定になっています(伍代のモデルになった日産財閥も、原作・映画共に名前は登場します)。
映画ではこの点にかなり苦労したらしく、実在の人物が創作されたキャラクターに絡むシーンが幾つも存在します。
ただ、大きな歴史のうねりの中で、各人物がダイナミックに生き生きと動きドラマを組み上げて行く様こそ原作の魅力であり、この点は実に見事に映画化されています。

監督は巨匠・山本薩夫
「赤いデミル」と評される作品全体を貫く左翼思想と娯楽性の絶妙なバランスはこの作品でも健在で、嫌味にならない程度の反戦描写や重厚な人間ドラマ、そして迫力ある軍の戦闘シーン等、映画としての見所満載といった豪華な作品に仕上げています。

脚本は山田信夫。
長年、日活の専属ライターでしたがこの年にフリーとなり、山本監督とは以後東宝で「華麗なる一族」「不毛地帯」といった山崎豊子作品でコンビを組みます。

音楽は佐藤勝。
日本を代表する映画音楽作曲家であり、黒澤映画、8・15シリーズ、東宝特撮シリーズ等、実に多彩な作品群の中において、本作のテーマ曲は氏の代表作と言っても過言ではありません。
3部作全てのタイトルバックに延々と流れるメインテーマは、多分映画を知らない人も聞いた事はあるのではないでしょうか?

キャストも豪華この上なく、しかもどの役もバッチリはまっています。
悠然たる財閥の総帥に滝沢修。
中国大陸に野心を燃やし、ギラギラとした悪の魅力に満ちた喬介に芦田伸介。
小心者ながら支配欲旺盛な長男・英介に高橋悦史。
高貴でありながら自由奔放な長女・由紀子に浅丘ルリ子。
実直で堅物な青年士官に高橋英樹。
底知れぬ凶悪さで悪の権化・鴫田を演じる三國連太郎。
愛らしい中国娘・瑞芳に栗原小巻。
その瑞芳を陰から見守る青年医師・服部に加藤剛。
悩めるブルジョア少年・俊介に中村勘九郎。第二部からは青年となり、北大路欣也が演じます。
兄を失い天涯孤独の少年となる耕平には吉田次昭。第二部からは左翼青年をやらせたら右に出る者はいない山本圭(山本監督の甥)が演じます。
外交官の意地を通そうとする篠崎書記官に石原裕次郎。
そして時代の奔流に逆らえない人間・矢次に二谷英明。

中国ロケなど叶う筈もないこの時代、荒漠たる中国大陸の再現は全て北海道で撮影されたそうです。
一方で奉天の巨大な街並みは日活撮影所内のオープンセットに組んだと言うから驚きです。あの雑然とした雰囲気等は、香港かどこかでロケしたのだと最初に観た時は思ったくらいなので。
日本人が中国人に扮したキャラクターのセリフも随分難があったらしく、かなりいい加減な中国語を喋っているそうです。
特に第二部に登場する大月ウルフ演じるロシア人スパイのロシア語は、当時のソ連人から「あれは無い」とはっきり言われたそうな。

特撮(ミニチュア)を担当したのは日活の特殊技術部。
東宝の特撮に比べると遥かに規模が小さくなりますが、過去においては素晴らしい作品を手掛けています。
中でも怪獣ブームの最中に製作された「大巨獣ガッパ」は、今でもゴジラ・ガメラ・ギララと共に4Gの一角を占める人気怪獣映画となっています(スタッフは株式会社日本特撮映画からの出向が多かった様です)。
本作でミニチュア撮影を担当したのは、ウルトラシリーズで特殊美術を担当した成田亨氏。
列車の爆発シーンや関東軍の砲撃シーン等、第二部に跨ってかなり精密で規模の大きなミニチュアワークが観れます。

大ヒットした第一部を受け、日活はすかさず第二部の製作に取り掛かります。
公開は翌71年6月。
日活の体力が持つか、映画の完結が先か、事態は新たな局面を迎える事になります。


【2017/08/15 22:31】 | 映画
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五味川純平作、「戦争と人間」全18巻読了しました。

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自身の兵役生活を基にして執筆した「人間の條件」が大ベストセラーとなり、戦争文学の第一人者となった五味川氏が、日中戦争前夜における日本の満州進出から、太平洋戦争終結に至る大日本帝国の崩壊までを巨視的に描こうとした野心作であり、文学史的にも文句無しの超大作であります。
まだ原作執筆中の1970年、日活により映画化されてこれも大ヒット。73年までに3部作として製作・公開されました。
監督は巨匠・山本薩夫
「赤いセシル・B・デミル」の異名を持つ筋金入りの共産党員であり、反戦・社会派の重厚な作風を得意としていた山本監督ですが、主義主張と娯楽性のバランスが実に絶妙で、決して説教じみた内容に陥らない娯楽大作のヒットメーカーとして数々の名作を世に問います。
戦後の東宝争議で東宝を離れた山本氏は独立プロダクションを設立してヒット作を連発、やがて大手メジャーの大映を中心に製作活動に入ります。
戦争と人間」の企画は、山本氏が大映で撮影した「白い巨塔」をヒットさせた後、日活から持ち込まれたそうです。
原作がまだ完結していない中、山本氏の構想は五味川氏と同様に激動の昭和史を描く群像劇として膨らんでおり、日活側も当初は莫大な予算を掛けた全4部作(山本氏は5部作)として製作準備を行っていました。

私が「戦争と人間」に初めて接したのはこの映画版、それも小学生の時にテレビで放送されたのが最初でした。
当時の私にとって和製戦争映画といえば東宝が得意とした戦争スペクタクル作品、つまり海軍を中心とした円谷特撮による8.15シリーズであり、ゴジラの延長線上にあるミニチュア艦隊によるパノラマ戦争映画でありました。
なので人間ドラマを中心としたこの作品は実に新鮮で、特に中国大陸における陸軍による日本の謀略の数々、政・財・官・軍・民がこぞって中国侵略へなだれ込んでいった「あの時代」を、邦画でよくここまで描けたものだと、まだ幼かった当時ですら感心したものです。
放送当時は世間的には全く認知されていなかった「731部隊」の人体実験も映像化されており(山本氏の死去直前の次回予定作は「悪魔の飽食」だったそうです)、第三部冒頭では南京大虐殺すら登場します。

残念ながら映画化は日活の経営危機の為頓挫し、第二部が公開された後に4部構成から3部構成へ変更。
第三部は既にロマンポルノ路線へ突入していた日活スタジオで製作されており、かなりの駆け足でストーリーが展開、前作までは丁寧に描かれていたキャラクターも突然登場しなくなったりしていました。
この完結編はソ満国境における軍事紛争ノモンハン事件をクライマックスとして終了となっていますが、この時まだ完結していなかった原作では、その後の日米開戦~太平洋戦争突入へも筆を進めており、映画では描き切れなかった登場人物達の運命も実に冷淡なまでに追求されています。
最も、序盤では成田亨氏の手腕による精密な特撮で、鉄道爆破や満州事変の戦闘シーンを描いていた日活特撮陣も、より壮大な映像が必要となる太平洋戦争は少し荷が重過ぎたのではないでしょうか?

キャストも豪華な顔ぶれで当時の日活オールスターのみならず、演劇界総出演といった感じであり、しかも各俳優が登場人物のイメージにピッタリというキャスティングの素晴らしさ。
以下にその配役を上げて行きます(カッコ内は演じた俳優名)。
映画では描かれなかった物語終盤の登場人物たちの運命を、当時のキャスティングで想像してみては如何でしょうか?

伍代由介(滝沢修)
新興財閥伍代家の当主。
居ながらにして他を威圧する風格の持ち主。時には思い切った捨て金をするが、死に金は使わない計算高い経営者。冷徹な経営戦略を実行出来る人物であり、労働者を弾圧して企業利益を追求する事も辞さない。軍の大陸進出を支持するものの、息子・俊介の予見通り日本が破滅への道を直進する様を見て、次第に政府批判を行う様になる。
原作においては対米開戦後、長男・英介の造反に合い失脚。引退の身として終戦を迎える。

伍代喬介(芦田伸介)
由介の弟であり、満州伍代(四通公司)の経営者。
満州浪人の様な出で立ちで中国大陸を縦横無尽に暗躍し、軍の勢力拡大と共に伍代財閥の中国大陸における勢力拡大を画策する。関東軍と強力なパイプを持ち、配下の鴫田を使って満州国を中心とした強力な物流網を構築しようとする。由介よりも過激な思想の持ち主であるが、同じタカ派の本家長男・英介を完全に見下しており、逆に左翼的思想を持つ次男・俊介に一目置くという奇妙な性格を持つ。
独身で豪快且つギラギラした部分を帯びた男であり、映画版では鴻珊子という女スパイを愛人としている。
作中、大日本帝国中国侵略の象徴的人物として描かれており、肯定的な悪の存在として実に魅力的なキャラクターが確立しているが、原作においてはノモンハン事件の敗戦と対中戦の膠着と共に急速に影が薄くなり、日米開戦後は殆ど登場しなくなる。
終戦直前、ソ連の対日参戦後、外地の日本人居留民が尽く関東軍に見捨てられる中、喬介は満州伍代を解散し従業員に資産を分け与え、自身は防空壕で手榴弾自決する。

伍代英介(高橋悦史)
東京伍代家の長男。
父・由介の跡目を狙う野心家であり、盲目的な軍国主義者で軍事的勢力拡大への便乗にのみ経済的繁栄があると信じ、常に軍との結託を画策している。
悪役としては人物がかなり小物であり、衝動的に中国人商家の娘・趙瑞芳を陵辱して叔父・喬介の叱責を受ける。
中国人(満州人)を被征服民として侮蔑しており、日本軍の力量を過信、中国軍(国民党軍・共産党軍)のみならず、ソ連軍やアメリカ軍に対してさえもその軍事力を軽視している。
それ故、現実的視野に立つ妹・由紀子や弟・俊介からも軽蔑の対象とされてしまっている。
映画版では最終的に父に引退を促して冷笑される。
原作では日米開戦後、社内で勢力拡大した彼の軍信奉者振りを見かねた由介の苦言と政府批判の言葉尻を捉えて父を失脚させ、伍代産業グループを乗っ取る。
終戦後は連合軍による戦犯告発を極度に恐れ、進駐軍相手の商売へ実に身軽に切り替える。

伍代由紀子(浅丘ルリ子)
東京伍代家の長女でヒロインの1人。
絶世の美貌と男顔負けの知性と行動力を併せ持つ。
言い寄ってくる男は絶える事無く、決して軽々しく男に靡く事はないが、思いを決めた相手なら命をも賭ける情熱がある。
ブルジョアの娘らしく男性遍歴は数多く、作中では伍代産業重役技術者の矢次、軍人の柘植らと恋愛関係となるが、父にさえ隠し事をしない大らかな性格で、男性に従属しない気品を持っている。
先見性の無い兄を、財界人としても人間としても評価しておらず、一方で自身の確固たる意思を持つ弟・俊介をこよなく愛している。
映画版では東亜銀行頭取・雨宮の令息との政略結婚に身を沈めるが、やがて離婚を決意する。
原作では満州外遊中に知り合った満州伍代の幹部・高畠と結婚するが、その反体制的な言動故弾圧の対象となった夫を特高警察から助け出す為に当局幹部に身を許し、夫婦関係は破局を迎える。
終戦後は進駐軍将校の情婦となり、兄・英介と伍代産業の為に仕事を調達する役目を担う。

伍代俊介(中村勘九郎【第一部】→北大路欣也【第二部・第三部】)
東京伍代家の次男で物語の主人公の1人。
ブルジョアの出身でありながら貧困層の人々に関心を持ち、やがて左翼的思想を持つ様になる。
伍代産業の労働者弾圧に心を痛め、少年期から父や兄、叔父に対して毅然と反対意見を述べる実直さを持つ。
自分が富裕層の出である事を苦痛に感じ、プロレタリア文学や美術の旗手等と交流を深めるが、思い切った左翼活動に踏み切れない自身を卑屈に感じている。
伍代産業幹部・矢次の部下だった左翼活動家・標拓郎の弟・耕平と親交があり、映画版では親友として妹・順子との結婚にただ1人立ち会う。
その繊細な性格からは想像も出来ない闘争心を持つと同時に体格にも恵まれ、少年期は柘植に剣道で鍛えられて成人後は屈強な青年に成長する。
姉同様、異性からのアプローチは多く、梅谷邦、タマーラ・ボグダーノワ、狩野温子、斯波発子、貧農の娘・苫といった女性達と関わって行くが、その事が返って自身を卑下する結果となる。
叔父・喬介の計らいで召集されずにいたが、満州伍代勤務中の関東軍に対する批判的な言動が災いして応召。ノモンハン事件で九死に一生を得る。
原作では除隊後、満州に復帰し幼馴染の邦と結ばれるが、戦局の悪化と共に再び入営。ソ連軍の満州侵攻と共に必死に敗走するが、惨殺死体としての目撃例が最後の消息となる。

伍代順子(佐藤萬理【第一部】→吉永小百合【第二部・第三部】)
東京伍代家の次女でヒロインの1人。
自由奔放で活動的な姉・由紀子に対して可憐で一途な少女であり、兄の親友・標耕平を慕っている。
母を幼少時に亡くしており、女中頭のお滝が母代わりとして彼女を育て上げた。
耕平が左翼活動家である事を知ってからは積極的に彼に協力しようとするが、むしろ耕平は害が順子に及ぶのを恐れ、彼女を避けようとする。
耕平の学資金の援助に伴う伍代家への住み込みと退学による別居、思想弾圧による耕平の逮捕を経て二人は相思相愛の仲となって行く。
映画版では兄・俊介の立会いの下、召集令状の来た耕平と秘密裏に結婚。父・由介に勘当され伍代家を出る。そして孤児院で働きながら耕平の帰りを待つ順子は、八路軍との戦闘での耕平の戦死通知を受け取る事になる。
原作では出征した耕平を待ち続けるが、東京大空襲で伍代家が被災した際に負傷。顔に大火傷を負う。そして戦後も行方知らずの耕平をただひたすら待ち続ける。

標耕平(吉田次昭【第一部】→山本圭【第二部・第三部】)
俊介の親友で物語の主人公の1人。
幼くして両親を亡くし兄と二人暮らしであったが、伍代産業社員で左翼活動家でもあった兄は逮捕、召集され、満州事変で戦死する。その兄の影響もあって、青年期には左翼活動へ入る。
少年期に知り合った俊介とは家庭環境が違うものの考え方を同じとし、伍代家の援助で進学する。
激烈な思想弾圧により特高警察に逮捕された耕平は長期に渡って拘留され、やがて召集され関東軍に配属される事となる。
映画版では俊介の妹・順子と結婚。中国大陸での八路軍との戦闘で行方不明となり、戦死したと判断される。しかし実際は意識不明のところを拉致され投降しており、それを知った憲兵隊が順子の部屋を家宅捜査する。
原作では順子と相思相愛のまま離れ離れとなり、戦局の変動から中国大陸から南方戦線へ転戦となる。そして地獄のインパール作戦へ参加、敗走中に雨季のチンドウィン川の濁流に呑まれ溺死する。

柘植進太郎(高橋英樹)
陸軍青年将校で物語開始時の階級は中尉。
優秀且つ勇敢な士官であり、軍内部に充満する権勢欲と不正を極度に嫌う。その歯に衣着せぬ言動の為に出世が遅れ、最前線や僻地勤務への左遷が続く。
由紀子と恋愛関係になるが、実直な性格故に彼女と向き合う事が出来ず、度重なるすれ違いの末に由紀子の心は離れて行く。
俊介の良き理解者であり、話し相手でもあった。
映画版ではノモンハン事件で戦死するが、原作では大佐となって南方への転出が決まり由介に別れを告げに伍代家を訪れるが、以後最終的な運命は描かれず仕舞い。

灰山浩一(江原真二郎)
プロレタリア芸術に傾倒した貧乏画家。
俊介と親交があり彼の画才の先導役となる一方、由紀子に絵を買ってもらうという卑屈な描写もある。
当局の思想弾圧の為に投獄され、激しい拷問を受ける事になり、流れ着いた仕事先の鉱山で知り合った農家の娘・苫を俊介に紹介する。
映画版ではノモンハン事件で腕を失う重傷を負い、偶然出会った俊介に助けられる。
原作では友人の文筆家・陣内に恋人を奪われ、激しい拷問の結果信奉していたイデオロギーも失い、失意の内に放浪。苫と出会う事になる。入隊後は最前線で落伍兵として苦労を重ねるが、ノモンハン事件で胸を撃たれる重傷を負い俊介に助けられる。

お滝(水戸光子)
伍代家の女中頭。
妻を亡くした由介の愛人でもある。
控え目で目立たず、由介の後妻の座には興味を持っていない。
伍代家の家事一切を差配し、家族のみならず喬介の趣味趣向も知り尽くしている。
幼くして母を亡くした俊介・順子の母代わりでもあった。

武居弘通(波多野憲)
伍代家の執事兼由介の秘書。
頭が切れ、鋭い先読みで伍代家と伍代産業を支え、株や為替で巨額の利益を上げる。
伍代財閥を支配する野望を持ち、密かに由紀子に執着しているが相手にされていない。
後に独立、財閥のグループ会社の社長となり、英介の造反に加担する。

鴫田駒次郎(三國連太郎【第一部・第二部】)
満州伍代の幹部社員で喬介の懐刀。
本物の悪党であり、広漠たる中国大陸を舞台に存分にその悪魔の様な才覚を振るう。
情報通で悪事に関してはずば抜けた才能を持ち、自らの利益の為なら誘拐・殺人・脅迫・暴行等何でもする残忍な性格の持ち主。
現地人でも気付かない程中国語と満州の生活風習に達者で、地元に溶け込んでの暗躍を得意とする。
満州伍代の物流網に便乗して阿片の密売ルートを構築、独自の犯罪コネクションを持って関東軍にすら対峙する。
喬介から預かった大塩雷太を凄腕の殺し屋に育て上げ、裏の世界で徹底的に鍛え上げた。
映画版第三部には未登場。
原作では喬介同様次第に存在感が薄くなり、終戦後は南京で生き残って雷太の公開処刑を見届ける。

高畠正典(高橋幸治【第一部・第二部】)
満州伍代の幹部社員。
現地人との交渉術に長け、匪賊や共産ゲリラとも協定を成立させる実力を持つ。
満州人と日本人の融合を目指す本当の意味での五族協和・王道楽土を望んでおり、満州伍代や関東軍の方針には尽く反発し、鴫田や雷太と対立する。
しかしその現地人を融和させてしまう無類の才能故、喬介には一目置かれている。
新規物流ルートを開拓する為に現地の匪賊と交渉を行ったが、そのルートを関東軍諜報員が利用しようとして、報復として新妻の素子を殺されてしまう。
映画版第三部には未登場。
原作では満州へ渡航した由紀子と知り合い再婚。商売のコネクションから共産ゲリラとの関係に深入りし、憲兵隊に逮捕され転向、以後は登場しなくなる。

服部達夫(加藤剛【第一部・第二部】)
満州在住の日本人医師。
裕福な商家の美貌の娘・趙瑞芳に想いを寄せている。
満州の為に生きていく事を望むが、英介に趙瑞芳が暴行された事を知り、次第に日本の満州政策に疑問を持つ様になる。
映画版では反日活動に身を投じた趙瑞芳を庇い、鴻珊子の手引きで大連への脱出を計画するが、瑞芳を逃がす為に囮となり憲兵隊に逮捕される。第三部には登場しない。
原作では軍に召集された後、最終的にはハルピンの731部隊に配属され、そこで変わり果てた姿の趙瑞芳と再会する事となる。

大塩雷太(福崎和宏【第一部】→辻萬長【第二部】)
満州伍代の社員で喬介の用心棒。
鴫田の悪事における弟子であり、筋金入りの殺し屋。
少年時代に元警察官だった父を匪賊(映画版では徐在林)に殺され孤児となる。その為、中国・朝鮮人を心底憎んでおり、喬介に引き取られた後、鴫田の下で悪の手解きを受ける。映画版第三部には登場しない。
抗日運動家の白永祥や趙瑞芳をつけ狙い、原作では瑞芳を731部隊送りにした。
快楽の為に多くの人間を殺せる凶悪な性格に育ち、兵役も苦にせず除隊後は南京周辺で悪事を重ねる。
梅谷邦の幼馴染であり密かに想いを寄せるが、邦と俊介の関係に嫉妬し暴力で彼女を蹂躙する。
終戦後、潜伏していた南京市内で中国公安部隊に逮捕され、鴫田の眼前で公開処刑される。

梅谷邦(廣田治美【第一部】→和泉雅子【第二部】)
満州育ちの快活な少女で物語のヒロインの1人。
映画版では露出は少なく、第三部には遂に登場しなくなるが、原作では俊介の人生に多大な影響を与える重要人物。
陰日向が無い性格で、喬介も一目置く気丈さを持っている。
雷太の幼馴染で、少年期から皆から恐れられて誰も近寄らない彼と、幼い時から親身になって付き合っていた。
満州へ初めて来た俊介と運命的な出会いをし、以後ずっと慕い続ける。
成人後は満州重工業開発へ入社し、俊介と再会する。
原作ではノモンハンから生還した俊介と結ばれるが、戦局の悪化と共に再び召集された俊介とは二度と会えなくなる。
戦後は日本へ引き上げ、順子と共に帰らぬ俊介を待ち続ける。

梅谷庄吉(山田禅二【第一部・第二部】)
邦の父親で満州伍代の社員で鴫田の部下。
一攫千金を夢見て満州へ来たが、生来の怠惰な性格の為に伍代へ入社しても出世出来ない。
映画版では中堅社員として登場。

鴻珊子(岸田今日子【第一部・第二部】)
中国大陸を股にかけて活躍する女スパイで、喬介の愛人でもある。
原作では鴫田とも関係を持ち、気脈を通じている。
「女」を武器に満州の政・財・官・軍の重要人物と密接に関わり、知り得た情報で共産ゲリラとも関東軍とも駆け引きを行う情報ブローカー。
趙瑞芳の大連への脱出計画の手配をするが、原作では結果的に失敗する。
映画版では第三部に登場せず、原作でも中盤から姿を消す。

白永祥(山本学【第一部・第二部】)
満州伍代の中国人社員で、高畠をサポートする。
邦の相談相手でもあり、友人でもある。
実は共産党の抗日ゲリラ諜報員で、その正体を知る喬介があえて社内に囲い込んでいた。
邦との関係への嫉妬から、雷太が憲兵隊へ密告した為、姿をくらます。
以後、遊撃ゲリラの一員として徐在林らと山岳地帯を彷徨う。
映画版では第三部には登場しない。

徐在林(地井武男【第一部・第二部】)
在満朝鮮人。
幼い頃、万歳事件で家族を虐殺されており、日本人に対して一方ならぬ恨みを抱く。
常に虐げられる朝鮮人の立場に不満を持っており、やがて定職を離れて日本人を標的にした強盗・殺人に手を染め、テロリストとなって行く。
映画版では逃亡中に警官だった雷太の父を殺害しており、雷太が無法者となるきっかけを作る事になる。
抗日パルチザンに参加。中国共産党ゲリラと共闘するが方針が合わず、白永祥ら幹部と対立。金日成の部隊と合流する為に彼らから離脱するが、この時に恋人で戦友の全明福を死なせてしまう。
映画版第三部には登場しない。
原作では次第に日本軍に追い詰められ、厳冬の荒野で悲惨な末路を迎える。

陣内志郎(南原宏治【第一部・第二部】)
プロレタリア文学作家。
灰山の友人で、俊介とも面識がある。
特高の弾圧であっさり転向し、灰山を裏切って彼の恋人を寝取る。
映画版第三部には登場しない。
満州では関東軍の従軍記者として、灰山と再会する。

趙瑞芳(栗原小巻【第一部・第二部】)
満州の大商人、趙大福の娘。
稀代の美貌の持ち主であるが、高い教育を受けており決して男性に頼ろうとはしない。
日本の侵略が本格化する激動の中国大陸で、数奇な運命を辿る事になる物語のヒロインの1人。
日本人医師の服部達夫、不破学とは医学生である兄・趙延年を通じて友人となり、特に服部に対しては特別な感情を持つようになる。
原作では日本人外交官・篠崎とも親交を深め、物語後半では激しくなる抗日運動の中、上海で再会を果たす。
日本軍制圧下にある奉天のホテルで英介に乱暴され、以後抗日ゲリラとして活動していたが父が日本軍憲兵隊に逮捕された後、鴻珊子の手引きで安全地域への脱出を計る。
映画版では日本の官憲に逮捕されそうになるが、服部の囮による犠牲で免れ、以後第三部には登場しない。
原作では逃亡中鴻珊子に見捨てられ、上海で潜伏中に大塩雷太に発見されその手中に落ちる。そして雷太によって憲兵隊に売られ、731部隊の研究所で「丸太」として人体実験を施された後に薬殺される。

趙大福(龍岡晋【第一部・第二部】)
満州の大富豪で、大地主・商人。
伍代財閥の満州進出の受け皿となり、日本の中国侵攻を自らの利益に結び付けようとした。
瑞芳の父親であり、彼女の抗日運動が表面化すると、関東軍憲兵隊に逮捕された。
映画版第三部には未登場。

趙延年(岩崎信忠【第一部・第二部】)
趙大福の息子で瑞芳の兄。
物語当初では医者の卵で、服部達夫、不破学とは友人関係にあった。
関東軍の中国侵略には批判的であるが、ブルジョアの息子らしく比較的冷静である。
映画版第三部には未登場。
医者になってからは実家は没落し、妹は雷太に拉致され身代金を奪われた上、そのまま生き別れとなる。
物語終盤で訪問して来た服部から、瑞芳の残酷な末路を知らされる。

篠崎淳児(石原裕次郎【第一部】)
奉天総領事館の書記官。
柳条溝事件に始まる満州事変の勃発に際し、総領事代理と共に関東軍本部に乗り込んで直接その横暴さを非難するが、逆に外交の非力さを思い知らされ、外務省を辞職する。
映画版は露出が少なく、登場は第一部のみ。
原作では退職後、在満の政治機関紙の執筆に従事。大連では彼を雇用しようとした由介に、日本の中国侵略政策に対して否定的な意見を述べる。
その後は当局からマークされながらも、抗日運動を続ける趙瑞芳と親交を重ねる。

矢次憔夫(二谷英明【第一部】)
伍代産業の電機部門幹部技術者。
部下の標拓郎の理解者であり、その弟・耕平の保護者でもあった。
伍代社員の生活水準を憂いており、由介に待遇改善を進言する。
妻・僚子との関係は冷え切っており、伍代家令嬢・由紀子と一時不倫関係にあった。
社会の矛盾を感じながらも時代に流されてしまう典型的な人物の代表として描かれており、映画版は第一部のみの登場。
原作では軍の要望でレーダー開発に従事。しかし連合軍側との歴然とした技術格差を責められ、日米の工業水準の違いを無視する軍を批判すると特高警察に逮捕される。

不破学(田村高廣【第一部】)
服部医師の友人で、趙延年・瑞芳兄妹の麻雀友達でもある。
新京在住のやはり寒村を巡回する医師であり、幼い梅谷邦の友人でもあった。
映画版では第一部のみ登場。
原作ではノモンハン事件に軍医として再登場。戦場から生還して来た伍代俊介と不思議な縁を持つ事になる。
更に三年後にはガダルカナル島へ軍医大尉として従軍。生き延びた斯波上等兵と出会い、彼と共に内地へ撤退する。

小渕(高畠)素子(松原智恵子【第一部】)
満州伍代幹部社員高畠の妻。
危険な満州奥地にまで夫に同行する恋女房であったが、その事が仇となり匪賊に誘拐され命を落とす。

大頭目(丹波哲郎【第一部】)
高畠の交渉相手であった匪賊を束ねるリーダー。
映画版では日本語を話す。

標拓郎(伊藤孝雄【第一部】)
伍代産業の社員で矢次の部下。
弟の耕平と二人暮らしであったが、左翼活動に身を投じ特高による一斉検挙(315事件)で投獄される。
釈放後、間もなく招集され、満州事変後の南嶺砲兵営攻略戦で戦死する。

佐川少佐(青木義朗【第一部】)
陸軍省参謀本部の情報将校。
柘植中尉の上官で、伍代由介と親交があり伍代家に出入りする。

市来善兵衛(清水将夫【第一部】)
金融事業家で伍代産業の大株主。
大正時代に近代日本の礎を由介と共に築いて来た経済人で、激動の昭和においては由介の相談相手でもある。
物語中、由介に最も近い存在として描かれる重要人物であるが、映画では第一部のみの登場。
由介の娘・由紀子の才覚を高く評価しており、息子・真吾との結婚を心から望んでいた。
対米開戦後は軍の暴走と日本の行く末を憂慮し、失脚した由介と共に静かに終戦を迎える。

市来真吾(簗正昭【第一部】)
善兵衛の息子で由紀子の取り巻きの一人。
善良な人物であるが、由紀子の眼中には無い。
由介の満州出張に同行、経営者としての修行を課せられる。
映画版は第一部のみの登場。
原作では伍代英介と共謀して父親達に対して造反する。

河本大作(中谷一郎【第一部】)
関東軍高級参謀(大佐)。
張作霖爆殺事件の首謀者で実在の人物。

村岡長太郎(小山源喜【第一部】)
関東軍司令官(中将)。
張作霖爆殺事件の首謀者で実在の人物。

大塩忠三(福山象三【第一部】)
雷太の父。
元巡査で、捕らえた匪賊を逃した責任を問われ辞職。妻にも逃げられ、アヘンの密売をしながら雷太と二人で細々と生きていた。
一山当てるために鴫田の話に乗り、アヘンの買い付けに虎林へ向かうが、途中「土匪」に襲われ命を落とし、雷太は孤児となる。
映画版では奉天の現職巡査で、逃亡中の徐在林と格闘中に殺害される。

森島守人(滝田裕介【第一部】)
奉天総領事館の総領事代理で実在の人物。
篠崎書記官と共に関東軍の横暴を制しようとするが、板垣大佐を抑えることは出来なかった。

田伏ふさ(関京子【第一部】)
喬介が満州で根城にしている田伏旅館の女将。
映画版では第一部のみの登場。

真木信三郎(杉江広太郎【第一部・本編未登場】)
富豪の御曹司且つ優雅な遊び人で、由紀子のボーイフレンドの一人。
映画版では第一部のみキャスティングされたものの、登場シーンはカットされた。
定職に就かず、親の財産を遊び潰す事を信条とし、酔狂をもって右傾化する社会にささやかな抵抗を試みている。

花谷正(佐藤京一【第一部】)
関東軍作戦参謀(大尉)。
柳条湖事件の首謀者の一人で実在の人物。

戸越ユキ(吉永倫子【第一部・第二部】
田伏旅館の娼婦で鴫田の情婦の一人だった。
鴫田の黙認の下、雷太の情婦となり、その悪行をサポートする。
映画版では第三部に登場しない。
原作では終盤まで雷太と行動を共にし、趙瑞芳の拉致にも加担した。
最終的な運命は描かれていない。

建川美次(大塚弘【第一部】)
陸軍参謀本部第一部長(少将)。
満州事変勃発に間接的に協力した実在の人物。

張作霖(落合義雄【第一部】)
満州に勢力範囲を置く、中国軍閥の総帥で実在の人物。
奉天付近を列車で移動中、関東軍の謀略により爆殺される。

狩野市郎(西村晃【第二部】)
実業家。
事業に失敗し苦境に立った事から、妻の元婚約者である伍代英介に融資を申し込む。
満州への進出を目論み実行するが、伍代家の弱みを握り貸しを作る為、妻・温子と俊介の関係を黙認する。

狩野温子(佐久間良子【第二部】)
伍代英介の元婚約者(旧姓・久慈)。
一方的に婚約を破棄され、俊介の同情を受ける。
映画版では第二部のみ登場。
狩野と結婚した温子はやがて俊介と不倫関係に陥り、満州留学中の俊介を追って中国大陸へ渡る。
しかし夫の追跡に気付いた温子は身を引くことを決意、俊介に黙って夫と共に去る。
原作ではその後、北京近郊の通州で夫の留守中「通州事件」に巻き込まれ、多くの日本人婦女子と同様に暴徒によって虐殺される。

全明福(木村夏江【第二部】)
在満朝鮮人抗日パルチザンの女戦士。
徐在林の恋人であり、パルチザンに流れ着いた彼の心の拠り所であった。
共闘していた中国共産党の白永祥と対立、徐在林は仲間を引き連れ離脱するが、この時の日本軍との戦闘で落命する。

相沢三郎(玉川伊佐男【第二部】)
陸軍歩兵中佐。
戦前の異様な世相を代表する「相沢事件」の主犯で実在の人物。
5・15事件関係者に同情的であったとされ、陸軍内部の皇道派に対する統制派の首班とされた永田鉄山軍務局長(少将)を殺害、軍法会議後銃殺刑に処せられる。
事件はその後2・26事件の遠因となり、太平洋戦争への直接分岐点とも評されている。

梁思生(前田昌明【第二部】)
抗日運動に参加する中国人医師。
地下活動を行う瑞芳や篠崎を援助する。
映画版には第二部のみ登場。
原作では日本軍の侵攻に抗して南京に残留。暴徒と化した日本軍部隊による大虐殺を目の当たりにし、自らも重傷を負う。

武藤章(藤田啓而【第二部】)
関東軍作戦課長(中佐)。
盧溝橋事件の際に対中国強硬政策を推し進めた実在の人物。

張学良(久野征四郎【第二部】)
関東軍に暗殺された張作霖の長男で実在の人物。
国民党政府副司令として共産軍と戦っていたが、西安事件で蒋介石を拉致、第二次国共合作を実現させる。

雨宮公一郎(加藤嘉【第三部】)
東亜銀行頭取で映画版のみのオリジナルキャラクター。
由紀子が選んだ政略結婚の相手の父親で、国家総動員法の要綱を由介にリークする。

苫(夏純子【第三部】)
東北の寒村に住む貧農の娘。
東京を捨てた灰山が辿り着いた鉱山で働いていた。
飢饉から家族を守る為に身を売っていた苫の境遇を見かねた灰山が、旧知の俊介に頼み込み東京の伍代家に家政婦として住み込む。
俊介に特別な感情を抱くが、英介に弄ばれる様になると、満州伍代で働き始めた俊介を追って渡満。俊介に拒絶されると娼婦に身を落とす。
映画版では第三部のみに登場。ノモンハン事件から生還した俊介を迎える。
原作では俊介と何度も邂逅を繰り返し、南方へ行くと言って俊介のもとを去るが、結局ソ満国境の町・虎林で商人の男と同棲。終戦直前に俊介と再会する。
俊介の強い勧めにも関わらず内地へ避難しなかった苫は、ソ連軍の侵攻で悲惨な末路を辿る。

田島(鈴木瑞穂【第三部】)
満州重工業開発の資料部責任者で、邦の上司でもある。
俊介と同様に統計的数値で日本の国力と戦争継続能力を推察。その反国家的思想から憲兵隊に逮捕される。
映画版では第三部にのみ登場、「興亜経済」という雑誌の編集長を務める。
やはり俊介と意を同じくして、関東軍参謀本部で軍の無計画な方針を批判し、俊介と共に逮捕される。
演ずる鈴木瑞穂氏は全三部に渡ってナレーターも務めた。

佐藤賢了(吉原正皓【第三部】)
陸軍省軍務局課員(中佐)。
衆議院国家総動員法委員会において政府側説明員として演説中、野次に対して「黙れ」と一括した、所謂「黙れ事件」の張本人で実在の人物。
一軍人が国会議員を恫喝した事件として物議を醸し、杉山陸軍大臣が陳謝するに至った。

辻政信(山本麟一【第三部】)
関東軍参謀(中佐)。当時のマスコミにおいて「作戦の神様」と謳われた実在の人物。
映画版第三部にのみ登場、関東軍参謀本部で軍批判を行った伍代俊介を恫喝する。
ノモンハン事件においては指揮系統を無視して独断専行、衝突の拡大を招きソ連軍と本格的な戦闘に陥る。
最前線において柘植少佐が指揮する部隊の撤退を拒否、柘植少佐は決死の突撃を敢行し戦死する。
事件後は各方面隊の指揮官に自殺を強要、捕虜交換による帰還将校にも自殺を強要した。
原作では日米開戦後もマレー・ガダルカナルで無謀な作戦を立案、決行し、多くの犠牲者を出す。

岩畔豪雄(長弘【第三部】)
諜報分野に長けた陸軍大佐。
日本版CIAの設立を目指し、スパイ養成機関「中野学校」を設立した実在の人物。

稲田正純(高橋明【第三部】)
陸軍省参謀本部作戦課長(少佐)。
実在の人物で、ノモンハン事件の際関東軍を抑え切れなかった。

東條英機(井上正彦【第三部】)
陸軍次官(中将)で実在の人物。
映画版では第三部にのみ登場。伍代由介・英介親子を含む経済界の代表を前に、ドイツとの同盟による対ソ戦略の演説をする。

植田謙吉(荻原実次郎【第三部】)
関東軍司令官(大将)で実在の人物。

磯谷廉介(和沢昌治【第三部】)
関東軍参謀長(中将)で実在の人物。

谷田(井上博一【第三部】)
標耕平が配属された関東軍の古参兵長。
被差別部落の出身者で粗暴な性格故に下士官になれず、常に周囲の人間に対し敵対心を持っている。
訓練中、磔になった中国人ゲリラを刺殺出来なかった耕平を袋叩きにするが、彼の素性・性格を見抜いており陰では信頼していた。
偵察行動中の戦闘で負傷、耕平に負われて撤退中に絶命する。

石原莞爾(山内明【第一部・第二部】)
関東軍参謀(中佐)で板垣大佐と共に満州事変を実行した実在の人物。
参謀本部作戦課長(大佐)となった後の2・26事件では一転して鎮圧側に属し、以後関東軍の中国戦線拡大路線に異を唱える。

板垣征四郎(藤岡重慶)
関東軍参謀(大佐)で満州事変の首謀者。
実在の人物で、常に満州における日本の覇権を追及していた。
満州国執政顧問(少将)、関東軍参謀長等を歴任。陸軍大臣(中将)となりノモンハン事件を黙認する。

千田悟朗(映画未登場)
お滝の郷里出身の陸軍青年士官。
貧農の出で苦学して士官学校へ入った。
貧困に苦しむ庶民と国家の行方を憂いており、お滝に挨拶の為に伍代家を訪れた折、標耕平と意気投合する。
2・26事件発生時は首謀者達に同情、戒厳令下の東京で柘植と出会う。
関東軍へ配属後は入隊した雷太の上官となり、彼に煽られて捕らえた中国人捕虜を中隊長命令で射殺する羽目になる。
徐州占領作戦の際、柘植少佐と再会。
日米開戦直前には耕平の中隊へ中隊長(中尉)として赴任、将校より戦略的考察の出来る耕平を重用したが、彼が捕虜を故意に逃がした為、ビルマ戦線へ転属させる決断をする。
最終的な運命は描かれていない。

斯波発子(映画未登場)
青年期の俊介が単身満州へ渡る船上で出会った美少女。
大連の弁護士の娘で、男勝りの勝気な性格と利発さを兼ね備えている。
俊介と相思相愛の仲になるが、狩野温子との不倫関係を知って彼のもとを去る。
その後、関東軍に配属された俊介とは慰問団の女優として戦地で再会。しかし微妙な擦れ違いのまま別れる事になる。
その時の言付を伝える為、発子は邦のもとを訪れている。

斯波努(映画未登場)
斯波発子の従姉弟で密かに彼女を想い続けている。
陸軍上等兵としてガダルカナルへ出征。地獄の様な状況の中、生来のしぶとさと機転の良さで辛うじて生き延びる。

呉文良(映画未登場)
上海で瑞芳を匿っていた中国人の富豪。
経営する商社は重慶政府を支援する抗日組織であり、篠崎とも接触を持つ。

この様に膨大な登場人物からなる壮大な群像劇ですが、その運命は原作と映画では異なるキャラクターが存在します。
また、基本的にストーリーは伍代財閥とその周辺の人々という虚構の中で進みますが、実在の事件・人物も当然登場しており、この扱いが原作と映画とではかなり異なります。
山本氏と五味川氏がそれぞれ目指した「戦争と人間」とは、一体どのような物語だったのでしょうか?


【2017/08/15 16:27】 | 小説
【タグ】 五味川純平  山本薩夫  戦争と人間  日活  
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本日は家族と大阪高島屋へ。

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目的はこれ。
ウルトラセブン・放送開始50年記念~モロボシ・ダンの名をかりて~」
今年のゴールデンウィークに京都高島屋で開催されたイベントが、大阪で開催中なのです(今月末に横浜高島屋へ移動)。

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3年前、佐川美術館のウルトラマン美術展とほぼ同時期に開催された円谷英二展会場だった7階グランドホールが、今回も会場になっていました。
前回は大人向けの展覧会としてかなり専門的な展示内容でしたが、今回はジオラマを中心とした世界観の再現が主で、夏休みという事もあってか子供も楽しめる内容になっています。
ただ当時の撮影に使われた美術等は全く無く、精巧なレプリカか展示用のディスプレイばかりでした。

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会場内は撮影禁止ですが、唯一この巨大ジオラマのみ撮影可能でした。
あまりにも有名な夕景の特撮ショット。
実相寺昭雄監督作品「狙われた街」のワンシーンです。

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中央のドブ川もこの様にちゃんと再現。
当時よりも汚い近未来の下町描写にあの有名なナレーションが重なり、子供の頃一緒に観ていた父親が「えらい皮肉やな」と言っていたのを覚えています。

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隅の方も手を抜かず作り込んでいます。
配置されたフォルクスワーゲン・バスが時代を偲ばせますね。

物販コーナーは、玩具より衣料・雑貨・日用品が中心。
セブンをモチーフにした多数の物品が売られていました。
自分的にはセブンより地球防衛軍やウルトラ警備隊をモチーフにした商品の方が嬉しいのですが、そんな物は殆どありませんでした。

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本日の収穫。
物販コーナーで買った流星ピンバッジ。
ウルトラセブンじゃないけど、思わず買ってしまいました(出来が良い)。
ウルトラマンショップで売っている物らしいのですが、普段そんな所へ行きませんので…。
他の商品がべらぼうな値段で売られていたのに対し、これは税抜き900円。
地球防衛軍のマークやシール、ワッペンがあったら絶対買っていました。

昨年、ウルトラマン50周年を迎え、今年はウルトラセブン
それに合わせてCSファミリー劇場では「ウルトラマン」「ウルトラQ」「ウルトラセブン」と放送を続け、現在「帰ってきたウルトラマン」を再放送中。
近い内に昭和ウルトラシリーズについて書き込みたいと思います。


【2017/08/09 19:03】 | 特撮
【タグ】 ウルトラセブン  円谷プロ  森次晃嗣  
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日本のスーツアクターの大御所。
つまりゴジラの中の人です。

元々は東宝専属の普通の映画俳優だったのですが、スタント役を主とする所謂大部屋俳優であり、1954年の「ゴジラ」で演じた主役のゴジラがあまりにも有名になり過ぎ、以後は怪獣映画の「着ぐるみ俳優」として一世を風靡します。
東宝の主役怪獣はほぼ演じ、円谷英二がテレビに進出すると「ウルトラQ」「ウルトラマン」「ウルトラセブン」といった初期ウルトラシリーズにも参加。
その後氾濫する数々の怪獣達の演技に与えた影響は計り知れません。

円谷英二の死後、怪獣特撮映画の衰退と共に徐々に活躍の場が減り、最後のゴジラ役は「地球攻撃命令・ゴジラ対ガイガン」だったそうです。
現在も映画やテレビで脈々と受け継がれている怪獣達の演技は、架空の生物として考え出された生態というより、中島氏の演技そのものの模写であると言えるでしょう。

暗い闇夜の中、見上げる様な真っ黒の巨体が足元など気にもせず平然と構造物を踏み潰しながら、日本の街並みや山野を歩いて行く。
そんな風景はミニチュアセット+中島氏の演技があってこそ実現したのだと思います。
もうCGでは再現出来ない映像ですね。
ご冥福を祈ります。


【2017/08/08 23:28】 | 特撮
【タグ】 中島春雄  ゴジラ  円谷英二  特撮  怪獣  スーツアクター  東宝  
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昨日と本日、イオンモール神戸北にて開催。

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昨年大好評だったフォルクスワーゲンの体験イベント「Try!Try!Try!」が、今年もイオン神戸北へやって来ました。
既に大阪では7月にイオンりんくう泉南で開催されており(去年はイオン日根野でした)、神戸は全国で3番目の開催地。
実は昨年、このイベントで最も多い人数を動員したのが、この神戸北らしいのです。

最近のフォルクスワーゲン
ティグアン、UP!、ゴルフとモデルチェンジが続き、その安全装備や先端技術の充実度が半端ではありません。
先日、シャランと共に限定台数で発売されたトゥーランのテック・エディションはその最たるもので、ハイラインではあまり必要を感じなかった装備を省き、代わりに安全装備をワンランクアップ。その上最先端のパークアシストや、正規輸入のRラインにさえ装備されていないパワー・テールゲートまで装備。
ナビを含めた価格を考えると、それでも現行ハイラインよりお買い得という価格設定。
車は後になる程、良い物が出て来ますね。

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屋内会場は昨年同様、モール東端の「すずらんコート」。
イベントの受付や商談ブースはここにあり、展示車としてミニバン「トゥーラン」「シャラン」が置かれていました。

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今年は少し西の「すずらんコート」にもブースがあり、ゴルフとビートルが展示。
試乗会の案内がされていました。
試乗会場は昨年と同じ屋外平面駐車場。

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私のお目当てはVW車の試乗会。
正規輸入車の全ラインナップが揃えられ、アンケートに応えればどれでも試乗が可能。
待ち時間は10分程度。
早速「ティグアン」の試乗を申し込んだのですが、この車種だけ「パークアシスト」の実演に回されており、普通の試乗は無理で屋外の会場での申し込みが必要とか。
それで仕方なくシャランを試乗する事に。

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これは屋内展示のシャラン
試乗車は青でした。
デザインはトゥーランとそれ程変わらないものの、大きさは一回り大きく車幅は1900を超えます。
エンジンはトゥーランと同じなので車重が重い分非力さを感じるかも知れませんが、試乗コースの短い会場ではそれ程違和感は無く、トゥーランと同じ安定感を楽しみました。
担当してくれた同乗者はVW宝塚のセールスさん。
トヨタ系のディーラーさんはこのイベントには積極的ですね。
商談ブースで暫く話し込ませて頂きましたが、買い替えの予定も無いのでお邪魔になると悪いと適当なところで退席。
「ぜひ一度来店して下さい」とお誘いを頂きました。
そう言えば去年お世話になった神戸西にも結局行けず仕舞いだなあ。

ティグアンのパークアシスト体験をしたかったのですが、結局午前で終了となり、代わりに試乗車が復活したのでもう一度試乗にトライする事に。
今回の担当の方は東京からイベントの為に来られた方。
「神戸ってこんなに暑いんですか?」と、かなり驚いておられました。
悪いけど暑いのは神戸でなくて、関西自体が東京より夏は暑くて冬は寒いのだよ。
SUVのティグアントゥーランと同じエンジンで馬力も同じ。
車のサイズも似ており、実に運転しやすく、直線ではちょっと踏み込ませてもらいました。

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これは屋外会場に展示されていたトゥーランRラインのイベントラッピングカー。
この内の1台がVR体験車となっており、ゴーグルを使って運転の疑似体験をさせて頂きました。
実際に運転する訳でも無いので、無免許でも子供でも遊べます。
因みに車はトゥーランなのですが、ゴーグルの映像はティグアンというちょっと不思議なイベントでした。

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今日の収穫。
アンケート&試乗でオリジナルグッズプレゼント。
頂いたのはパサートのキーホルダーと、VWバスのホッチキス。
過去のキャンペーンイベント景品の流用の様ですが、去年のバンダナより余程豪華で嬉しかったです。

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これは先日、ディーラーさんで頂いたクーラーバッグ。
甲子園での野球観戦に重宝しそうです。
なかなか実用性のある物を頂けて有難いです。
流石フォルクスワーゲン、国民車メーカーですね。


【2017/08/06 22:11】 | マイカー
【タグ】 フォルクスワーゲン  VW  ゴルフ  トゥーラン  Tiguan  ティグアン  シャラン  
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やって来ました京セラドーム大阪。
対戦相手は最早絶対に取りこぼしの許されない最下位球団「東京ヤクルトスワローズ」。

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台風接近中とは思えない夏の日差しの中、ドーム球場は実に有難いです(何せデーゲーム)。
雨の心配もありませんし、個人的には甲子園より随分楽なのですが…。

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全席予約で完売の筈なのですが、随分と空席が目立ちます。
ヤクルトファンの皆様、負け戦にどうもご苦労様です。

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先発は秋山×小川。
ヤクルトの小川は制球が定まらず、初回いきなり三番福留にソロHRを被弾してしまいます。
阪神、幸先良く1点先制。
更に2回裏には坂本の当たりの悪過ぎる2ゴロの間に1点追加。

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一方の絶好調・秋山。
若干高めだった制球も次第にキレを増して行き、ヤクルト打線を全く寄せ付けません。
常にストライク先行の攻めのピッチングで3回裏、あと1ストライクで三者凡退というその時、完全なボール球で四球となったその投球直後タイムを要求。
突然マウンドを降りてしまいます。

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結局秋山が復帰する事は無く、急遽松田がリリーフ登板。
どうやら脚の違和感で降板した様ですが、絶好調の投球中での突然の交代。
今日勝てば二桁勝利となっただけに実に残念です。
既にローテーションでは無くてはならない存在となっているだけに、大事にならない事を祈ります。

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松田はボール先行のピッチングで、秋山の迫力に及ぶべくもありませんが、それでも4回の絶体絶命のピンチをかわしながら追加援護を待ちます。
すると5回裏には走者を溜めて、新外国人・ロジャースが走者一掃のタイムリー2塁打。
阪神4点。

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こうなったら阪神は盤石の継投リレー。
昨日のメッセの完投で休養十分のリリーフ陣が迫力のピッチングを見せ付けます。
秋山の緊急降板で、松田~桑原~藤川~高橋~ドリスと、結構な人数を注ぎ込む事になりましたが、終わってみれば4対0の完勝。
広島とのゲーム差は全く縮まらず、下の横浜・巨人の動向が気になる現在、こんな所で遊んでいる訳には行きません。
ヤクルトには申し訳ありませんが、この三日間は勝って当然のカードと思っています。

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ヒーローインタビューは福留・ロジャース・松田の三人。
遼馬よ、もっと活躍してくれ!

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祝勝会の応援団も「明日は勝つ」事が大前提でした。
勝ち越しでは駄目です。
3タテです。

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帰りの電車の中、浴衣姿の女性が多いなと思っていると、今日は淀川と神戸の花火大会でした。
流石に帰ってから神戸港へ行くのは疲れるので、今年はマンションのバルコニーからの観覧にしました。
ウチのマンションからは神戸と芦屋の花火が、小さいながらも観れるのです。


【2017/08/05 22:23】 | 野球
【タグ】 阪神  タイガース  甲子園  ライトスタンド  チケット  
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