アナログ人間の独り言~阪神タイガース・映画・サブカルチャー・旅行等々
岸恵子の?…などと言ってはいけない。
本日、109HAT神戸で家族と鑑賞(娘は二度目)。

公開されて半年。やっと観る事が出来ました。
なぜここまで観るのが遅れたのかと言いますと、あまりにも先入観があり過ぎたからです。
話題作でもあまりに大きなヒットを飛ばしてしまうと、見る前に変な先入観が出来てしまい、妙に観辛くなってしまう事があります(実は「アナと雪の女王」も劇場鑑賞していません)。
事前に中途半端な作品情報が入って来るのも考え物です。

遠く離れた見知らぬ高校生同士の男女の人格が、ある日突然入れ替わる。
不定期に訪れる「入れ替わり」は、微妙にお互いの生活に影響を及ぼし始め、それはやがてある大事件へと収斂して行く…。
ここまで聞くと、誰もが大林宜彦監督の「転校生」の焼き直しを想像してしまうでしょう。
もう飽きたよ、この手の弓月光モドキのラブコメは。
しかしながら気になったのは、とても単純な男女入れ替えコメディとは思えない評価の高さと異常な興行成績。
そしてポスターに描かれた大空の二つに割れた彗星でした。

映画が始まると、その作画レベルの高さにまず驚きました。
CG万能とは言え、背景美術や動体描写での効果的な3DCGの使用は、日本アニメ界が常に実写映画に対して持ち続けていたコンプレックスを吹き飛ばしてしまうもので、正直壮大なアクションシーン以外はアニメーションである必要すら感じません。
そしてストーリーの中で「男女」の入れ替わりを作品テーマにしようとしない意外性。
それどころか最初はお互い妙な夢くらいの認識しかなく、入れ替わり中の記憶はどんどん薄れて相手の「名前」も思い出せなくなってしまう…。
身の回りの異常に気付き、初めて二人はノートやスマートフォンといった日常のツールを使って入れ替わり中の事象を記録、やっとお互いの存在に気付く。
この間、畳み掛ける様なテンポと生活感溢れる描写、そしてRADWIMPSの音楽によるリズミカルな展開で物語はどんどん意外な方向へ進んで行きます。

観終わった後の感想は、非常に良質な「映画」を観たという満足感でした。
実に完成度の高い「映画」であり、「SF」であり、「ファンタジー」…。
悲劇的な展開でもこの作品は感動を呼ぶ事が出来たでしょうけど、監督が固執した「ハッピーエンド」こそが今の世に合致した最も相応しいこの作品の在り方であったと思います。
日本だけでなく、公開される国々では次々と記録的なヒットを打ち立てているというこの映画。国内歴代ランキングでは「ハリー・ポッターと賢者の石」を抜き去って「アナと雪の女王」に肉薄しています。
この日も元旦にも関わらず、夕方の上映回はほぼ満席。興行情報では公開19週目なのに前週対比41パーセントアップ、週間ランキングも7位から3位に復活したとの事でした。

それにしても考えてしまうのは、この映画がなぜ「アニメ」でなければいけないのかという事。
先にも書いた様に、映像はまるで実写と見間違う程の出来で、逆に実写の方が明らかにコストが抑えられたのでは無いだろうかと思えるくらいです。
では実写ならここまでヒットしたかと考えると、やはりそれは有り得ない様な気がします。

以下に昨年度の日本国内映画興行ランキング(トップ10)を書き出します。

【邦画】
1位 君の名は。
2位 シン・ゴジラ
3位 名探偵コナン 純黒の悪夢
4位 映画 妖怪ウォッチ エンマ大王と5つの物語だニャン!
5位 ONE PIECE FILM GOLD
6位 信長協奏曲
7位 映画ドラえもん 新・のび太の日本誕生
8位 暗殺教室~卒業編~
9位 orange-オレンジ-
10位 植物図鑑 運命の恋、ひろいました

御覧の通り、「君の名は。」以外オリジナル企画皆無という惨憺たる有様。
どれもが著名な漫画・小説などの原作付きかシリーズ物という、保険に保険を掛けまくったリスクゼロ・意外性無視の全く面白みの無い企画ばかり。
しかも10本の内5本が純粋なアニメという現実(別にアニメが悪いというのではありません)は、日本邦画界における実写作品の企画貧困さを象徴しているとも言えるのではありませんか?
いやいや、「シン・ゴジラ」はシリーズ物だけど内容的には結構頑張っていたでしょ…と言うアナタ。総監督の出自を考えると、この作品も根本的に根がアニメである事に気付いている筈。
最早、ジブリ作品や山田洋次・三谷幸喜といった一部の映像作家以外に、オリジナル企画が大手映画会社を通らなくなってしまった様な気がするのですが…。
因みに以下は洋画のトップ10です。

【洋画】
1位 スター・ウォーズ フォースの覚醒
2位 ズートピア
3位 ファインディング・ドリー
4位 ペット
5位 オデッセイ
6位 007 スペクター
7位 アリス・イン・ワンダーランド 時間の旅
8位 シビル・ウォー キャプテン・アメリカ
9位 インデペンデンス・デイ:リサージェンス
10位 ジャングル・ブック

…まあ、似たようなもんですな。
逆にこんなものに日本人の10倍以上の額を投資する訳ですから、その馬鹿さ加減にはちょっと恐れ入ってしまいます。
ハリウッドもそろそろ世界から飽きられて来たのでは?

それにしても、公開半年を過ぎても全く画質・音質の劣化を感じさせないデジタル・シネマのメリットを、今回は十分に堪能致しました。
従来のフィルム上映であれば、ここまでのロングランで酷使されたフイルムは傷だらけで、とても快適な鑑賞は望めなかったでしょう。
劇場用映画の撮影・上映にフィルムが使用されなくなって久しいですが、フィルムという媒体に愛着が残る反面、情報のデジタル化の凄まじさを伺い知る事が出来ました。

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【2017/01/01 21:36】 | アニメ
【タグ】 君の名は。  
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開催中の「メカニックデザイナー・大河原邦男展」観覧の為、滋賀・佐川美術館へ。

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往復200キロのドライブへ、トゥーラン出発です。

科学忍者隊ガッチャマン」「機動戦士ガンダム」「装甲騎兵ボトムズ」のメカ・デザイナーとして有名な大河原氏。
なぜこの日に行く事にしたのかというと、大河原氏御本人の来館&サイン会が開催されるからです。
前日のトークショーも魅力的でしたが、仕事の為行けず。
本日は朝6時に出発。コンビニで朝食を買い込んで名神をひたすら東へ。

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途中、トゥーランの走行距離1000キロオーバーの瞬間がありました。
ACCで快調に走り、瀬田西ICで下りてからは湖岸道路をのんびり行きます。
美術館へは7時45分には到着。

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開館は9時半。
しかしながらこの時点で、既に私の前には50人以上の人が正門前に並んでいました。
サイン会参加は先着100名までなので、ちょっと驚き。
実は昨日来館されたブログ仲間の「こたつ猫」さんからトークショーの混雑状況を聞いており、あまりギリギリだとヤバイかも知れないと思い、この時間に到着した訳です。

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8時半には既に行列が定員に達した模様で、美術館のスタッフの方が「図録購入券」の配布を始めました。
サイン会参加にはこの図録の購入が必要で、サイン自体もこの本にされる事になります。
私は48番目。
開館前ですが、既にサイン会向け図録は完売状態。
9時前には第一駐車場も満車になっていました。

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開館時間と同時に、購入券を持った人がまず敷地内へ誘導されます。
本館前の広場の特設グッズ売り場で図録が販売されており、ここに並んで「サイン会整理券」が封入された図録を購入する訳です。
私は36番目。
このまま本館へ向かいます。

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2年前の「ウルトラマン創世紀展」以来の訪問となる佐川美術館
産経新聞の連載記事で今回の企画展を知り、再び訪問が叶いました。
湖畔に建つ、本当に綺麗な美術館です。

「ウルトラマン創世記展」の記事はこちら

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今回の企画展の為に描き下ろされたイラスト・屏風。
制作会社に関係なく、大河原氏がデザインした代表メカ達が一堂に会しています。
「ウルトラマン展」の時はウルトラ兄弟の立像が並んでいた部屋です。

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こちらがサイン会場。
「ウルトラマン展」の時は池谷仙克氏のトークショー会場にもなった通路スペースです。
時間(10時)までまだ間があるので、場所取りだけして先に企画展を観る事にしました。

展示会場は「ウルトラマン展」の時と同じスペース。
大河原氏の作品を時系列的にデザイン画の原画展示で分類・解説、各アニメ作品の映像上映も行われていました。
内容的には3年前に兵庫県立美術館で開催された「超・大河原邦男展」の規模をかなりコンパクトに縮小した状態ですが、今回初めて出展された資料や原画もありました(神戸の展示会は実に大規模で、実物大のスコープドッグの模型やザクの壁画があったりしました)。

「超・大河原邦男展」の記事はこちら

さて、10時からは「サイン会」の開催です。
満場の拍手に迎えられて大河原氏の登場。
座った席順に壇上へ誘導され、図録の好きなページにサインをお願い出来るのですが、その間結構な時間会話を交わす事も出来、最後は握手までして頂きました。
あまり笑わない方ですが、気さくな御人柄でした。

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実は会場内は撮影禁止。
仕方ないので、かなり離れた通路からガラス越しに超望遠で撮影してみました。

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その後、全国から募集された「未来のメカ・デザイナーコンテスト」の表彰式があり、こちらは撮影可。
子供から大人まで、受賞された方達と楽しげに交流されていました。

全部で2時間ほどのイベントが終了。
大河原氏の退場と共に、私も会場を後にしました。
大河原邦男展は6月16日まで。

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佐川美術館には「樂吉左衞門館」という、陶器と茶道具を中心にした展示室と茶室があります。
展示室は地下にあり、そのエントランスが実に個性的で、池の水面を通して地上から差し込んでくる外光で、時間と共に壁の表情が変わるユニークな演出が実に素晴らしく、いつまで居ても飽きません。

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美術館の庭園を巡る周回道を歩きます。
池の中に建てられた美術館が日本的な雰囲気を主張しています。

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同じく池の中に建てられた茶室。
地下からのアプローチのみで、一般客は入れません。
陶芸品の展示だけではなく、茶道そのものの展示を行うコンセプトのようです。

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本日の収穫、大河原氏のサイン!
あのガンダムをデザインされた方の直筆です!
またいつかお会いして、再びお話しが出来ます様に…!


【2016/05/29 23:36】 | アニメ
【タグ】 大河原邦男  機動戦士ガンダム  装甲騎兵ボトムズ  科学忍者隊ガッチャマン  佐川美術館  
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早朝ドライブ
こたつ猫
akiさん

早朝のドライブ、それも琵W湖まで
おつかれさまでした。

8時前に着いてギリギリでしたね。
私のプチ情報が役立ち良かったですね。

今回、都合が合わずお逢いできませんでしたが、
次回の琵W湖訪問ではお逢いしましょう。

こたつ猫


Re: 早朝ドライブ
aki
こんばんは、こたつ猫様。
コメント有難うございます。

今回の企画展は結構コアなお客さんが多かった様で、事前の状況を窺っておいて助かりました。
有難うございます。
実はこの特別展初日にもトークショー&サイン会が開催されたそうなのですが、この時の一番乗りは朝4時半から並んでいたそうです。

佐川美術館は本当に綺麗な美術館ですね。
今回は1人での訪問になりましたが、次は家族で行きたいです。
また再訪の際は宜しくお願いします。

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大平透氏が12日、亡くなられたそうです。

個人的には「マグマ大使」のゴアの声(中の人も同じ)が印象的でしたが、一連のタツノコアニメの司令・悪役、戦隊シリーズ等の東映特撮番組のナレーター、ダースベイダー、ハクション大魔王…、どれも声色は同じなのに様々なキャラクターを見事に演じ分けておられました。
洋画関係の吹替えも非常に多く、特に「スパイ大作戦」の毎回冒頭に登場する司令テープの声は、トム・クルーズ版の劇場作品になっても全く衰えない迫力を楽しませてくれました。
「例によって君、若しくは君のメンバーが捕らえられ、或いは殺されても当局は一切関知しないからそのつもりで。尚、このテープは自動的に消滅する。成功を祈る」
つい数年前まで変わらぬ声質の演技を聞き、その健在振りに感心していただけに非常に残念です。
ご冥福をお祈りします。


【2016/04/14 22:52】 | アニメ
【タグ】 大平透  スパイ大作戦  
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声優のたてかべ和也氏が、18日死去されたそうです。

ゴリライモ、ドテチン、そしてワルサーをはじめとするタイムボカンシリーズの三悪の1人…。
世間的には79年から放送されたテレビ朝日版の「ドラえもん」ジャイアンの声が最も有名でしょう。
思えば10年前まで放送されていたこの「ドラえもん」は、「サザエさん」と共に昭和の名残を残す声優陣が集結した最後のテレビアニメだった様な気がします。
たてかべ氏も40年前の「ゴリライモ」と殆ど同一のキャラを演じ続けていた訳ですから…。

ドラえもん」は私が小学生の時、当時の小学館・学習雑誌で連載が開始され、藤子不二雄の新しい代表作として世間に認知されて行く事になります。
しかし連載開始当時の藤子作品はダントツで「オバケのQ太郎」がトップ人気であり、日本テレビ系で「新オバケのQ太郎」が放送された時期でもありました。

私自身、連載開始当時から「ドラえもん」は最も好きな藤子作品でありました。
それはギャグマンガとしての面白さは勿論、他の藤子作品とは一線を画する洗練されたSFセンスを子供心に感じる事が出来たからです。
ひみつ道具等の小道具類には殆ど興味は無く、作品世界のバックボーンやパラドックス、そのSF的設定や展開に「怖さ」を感じるエピソードが幾つもあり、特に初期の作品には他の藤子・F・不二雄SFと共通する皮肉さ、文明批判を垣間見る事が出来ました。

たてかべ氏がジャイアンを演じたテレビ朝日版1期のシリーズは、どちらかと言うと局の意向もあってか「サザエさん」の様なホームドラマ的な要素を重視した作品だった様に思います。
東京ムービーの製作スタジオ機能を担っていたAプロダクションがシンエイ動画として独立、その際東京ムービーからアニメ化権を譲渡して貰ってのテレビアニメ化。
しかしながら当初は東京地区のみでの平日10分の帯番組としての放送で、関西では数年後の現放送時間帯でのオンエアを待たなければいけませんでした(何度か全国ネットの特番はありましたが)。
私としては最初のテレビシリーズである日本テレビ版のイメージがあまりに強く、関西で本格放送が始まった頃はもう大学生にもなろうかという時期でしたので、正直真剣にこのシリーズを見る事はありませんでした。

しかし当時の朝日放送の金曜のラインナップは凄かった。
夕方5時からはサンライズ系のロボットアニメ「Zガンダム~」、5時半からは東映戦隊シリーズ、6時以降のニュース番組を挟み7時からは「ドラえもん」、7時半からは東映メタルヒーローシリーズ、8時からは「新日本プロレス」、9時からは「ハングマン」シリーズ、そして10時から必殺シリーズ。
全くテレビの前から離れられる隙が無く、食事や風呂に入る時間も無いほど。
テレビ朝日系列で「ニュースステーション」が平日10時から放送が始まった時、金曜だけは11時開始にした処置を見ても判る様に、このラインナップは手の入れ様が無い鉄壁の布陣でした。

このテレビシリーズで「ドラえもん」は藤子不二雄の代表作としてだけではなく、国民的作品として成長していく事となります。
放送局が目指した「サザエさん」越えは、ある意味達成されたと言って良いでしょう。
のび太役の小原乃梨子とはタイムボカンシリーズでも三悪の一角を組み、小原氏は「ドラえもん」とは立場が逆転するこの三悪役で多少はストレス発散出来ると冗談交じりに話していた事があります。
10年前、キャストの高齢化を理由にレギュラー声優が一新されてからも、私にとってメインキャラクターの声は旧シリーズでも新シリーズでもなく、このテレビ朝日第一期のCVでした。
あまりオンエア作を見た記憶が無いのにイメージが固まってしまっているのは、このキャスティングがあまりにも絶妙だからでしょう。
ガキ大将=たてかべ和也
昭和の定番方程式でした。
ご冥福をお祈りします。


【2015/06/19 23:35】 | アニメ
【タグ】 たてかべ和也  ドラえもん  オバケのQ太郎  藤子不二雄  
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90年の黒沢明監督以来、日本人としては史上二度目の受賞になるそうです。

旧東映動画時代からAプロダクション・日本アニメーション時代にかけては、高畑勲作品の一スタッフとしてのイメージが非常に強いですが、「空飛ぶゆうれい船」「パンダコパンダ」では既に現在に至る演出の片鱗を観る事が出来ます。
小学生の時、学校の自由授業の一環として体育館で鑑賞した「空飛ぶゆうれい船」。
初めてあの作品を観た時の衝撃は、今でもはっきりと覚えています。
学校で上映される課題作品である事、またあまりセンスが良いとは言えないタイトル、石森章太郎キャラでも古い部類に入りそうなそのデザイン等、最初はどうせ説教臭い教育映画だろうと全く期待しておらず、おそらく他の児童も同じ心境だったと思います。
巨大なロボットが街で暴れ回り、それに敵対するように出現するボロボロの幽霊船。
ロボットの出現というちょっと教育映画的ではない展開と演出のテンポの良さで引き込まれて観てはいましたが、シチュエーションとしては大して面白くも無さそうな展開。どう見てもロボットの方が強そうです。
ところがロボットの放ったミサイルが、まるでバリアにでも当たるように幽霊船の手前で尽く爆発。
海から空中に上昇した幽霊船の船腹が突然開き、出現したランチャーから発射されるミサイル群。
それらがホーミングミサイルの様に優雅な弧を描いてロボットを直撃。
思わぬ展開に場内は騒然となり、全員がその映像に釘付けになりました。
これを教材に選んだ先生は、恐らくしてやったりと思った事でしょう。
この時の戦闘シーンの動画担当が宮崎氏だったと私が知ったのはそれからずっと後、高校に入学してからでした。

「アルプスの少女ハイジ」「母をたずねて三千里」での美術的な仕事は、その後の宮崎氏の作品に決定的な影響を残す事になりますが、特に直後に手掛けた「未来少年コナン」においてはそれが顕著に表れています。
この初のNHK連続アニメであり、宮崎氏としても初めて作品演出を手掛ける事になるテレビシリーズ「未来少年コナン」は、今でこそ日本アニメ史上の金字塔的作品となっていますが、放送当時は低視聴率に苦しみ、NHKはこれを反省材料として後番組「キャプテン・フューチャー」ではより明快な子供向けSFを目指す事になります。
東京ムービー=テレコムの製作体制で満を持して公開された初監督劇場作品「ルパン三世・カリオストロの城」も、興行的には前作「ルパン対複製人間」の半分という惨敗に終わり、以後宮崎ブランドは一部のマニアには支持されるものの、視聴率・興行的には成功しないという妙なイメージが付きまとう様になりました。

大先輩の高畑勲氏が「じゃりン子チエ」劇場版~テレビシリーズで大活躍を続けている頃、一方の宮崎氏はテレコムに引きこもって雑誌等では後進の育成に奮闘中等と、誰が見ても「干されているな」と感じる時期があり、この時はもう二度と監督作品は観れそうもないと諦めていたものでした。
年齢的には3~40代の最も脂ののった仕事盛りである時期であろうにもかかわらず、その演出作品数の少なさは絶望的でさえありましたが、この時期の宮崎氏を支え続けていたのが旧東京ムービーの故藤岡豊氏と徳間書店「アニメージュ」編集長だった尾形英夫・鈴木敏夫両氏だったのではと思います。
藤岡氏はルパンテレビシリーズの終盤エピソードや日伊合作「名探偵ホームズ」等、事ある毎に宮崎氏を引っ張り出そうとし、「ルパン三世・カリオストロの城」の積極的な海外セールス等、何とかテレコム=宮崎駿のラインを生かそうとしていたと思われます。
一方の尾形・鈴木氏は完全に宮崎駿に惚れ込んでしまった様で、「アニメージュ」誌上での露出度は異常なほど、遂には連載漫画「風の谷のナウシカ」の掲載開始(それも時間が無いから鉛筆書き原稿での入稿)という熱の入れようでした。
以降、大映を傘下に入れて映画製作事業を展開していた当時の徳間書店の方針もあって、この「風の谷のナウシカ」が映画化。
この時、宮崎氏は製作スタジオにテレコムを使いたがったそうですが実現せず、東映動画の流れを汲むトップクラフトでナウシカの映画化を果たします。
この作品のヒットで徳間書店は宮崎ブランドによるアニメ製作継続を決意、トップクラフトはスタジオジブリへ改組され、以降はその質的レベルを飛躍的に向上させて行きます。
一方の東京ムービー=テレコムは、超大作「ニモ」の失敗による藤岡豊氏の退陣の後、セガの傘下に入り、現在では「東京ムービー」の社名すら残っていません。

ジブリ設立後の宮崎氏の活躍は周知の如く、「千と千尋の神隠し」では遂に米国アカデミー長編アニメ賞を受賞しました。
今回の受賞も、宮崎氏の活躍が如何に国際的なものになっているか、はっきりと物語っていると思います。
しかしながら「作りたい作品を作る」為に設立されたジブリでの作品群より、苦労していた70年代に高畑勲氏や大塚康生氏らと作り続けていた作品の方が、私は何となく好きです。
実は劇場で観た宮崎ジブリ作品は「天空の城ラピュタ」「魔女の宅急便」「紅の豚」「もののけ姫」「風立ちぬ」くらいで、他は全てテレビかビデオでの鑑賞です。
巨匠・ヒットメーカーになってしまってからは、漫画的なバカバカしい面白さが感じられなくなってしまったというのが正直な理由なのですが、一定のパターン踏襲が読めるようになって来たのもあります。
大勢の観客には、このワンパターンが心地良いのかも知れませんが…。

とにかく、受賞おめでとうございます。
でも今回の受賞を機にさっさと引退宣言を撤回、生涯現役で意表をついたマンガ映画を創って欲しいものです。



【2014/08/29 23:28】 | アニメ
【タグ】 宮崎駿  アカデミー賞  高畑勲  ジブリ  東京ムービー  
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